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著者: 山田 吉彦  
記事タイトル: ポートケラン港にて  
コラム名: マラッカ海峡の町から 第6回  
出版物名: 海上の友  
出版社名: (財)日本海事広報協会  
発行日: 2001/07/21  
※この記事は、著者と日本海事広報協会の許諾を得て転載したものです。
日本海事広報協会に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど日本海事広報協会の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   ポートケランの港は、マラッカ海峡から細く切り込んだ入リ江にある。マレー半島の恵みを運び込んだ茶色の水面は、マングローブ林の緑を色濃く映し、青天の下、不思議な色彩のコントラストを見せていた。

 六月二十八日、ポートケラン港を望む岸壁に大きなテントが張られ特設の観覧席が設けられた。テントの周囲には、濃紺の制服に身を包んだマレーシア海上警察の猛者たちが立ち並び、観客の到着を直立不動で待っていた。

 海上には、数え切れないほどの海軍の小型艇、海上警察のパトロールボートなどが静かに浮かんでいた。

 彼らが待つ観客は、IMB(国際商業会議所・国際海事局)の主催する海賊および幽霊船対策セミナーに集まった三十五カ国、百八十人の海事関係者たちで、大型バス五台に分乗し、会議場のあるクアラルンプールのホテルを出発しポートケラン港に向かっていた。参加者のほとんどが各国の海賊専門家たちであった。


≪ マレーシア海上警備公開訓練 ≫

 午前十時三十分、白バイの先導で観客が到着すると号砲が轟き、海上警察、海軍、税関の合同による海上警備公開訓練が開始された。

 エンジンの爆音が響き、岸壁に迫る勢いで海上警察のスピードボ.ートによるスラロームが見せられ、不審船の追跡訓練、停船行動などが、眼前の海面で行われた。

 続いて、全身黒いユニフォームの海上警察の特殊部隊による、ヘリコプターからの降下による海上犯罪鎮圧訓練、海賊船対応訓練が行われた。

 一連の行動は、物々しい雰囲気の中、スピーディーに進められ、わずか一時間の中で、一糸乱れず、滞ることなく展開された。

 この大デモンストレーションを総指揮したのは、モハメド=ムダ・マレーシア海上警察司令官である。

 ムダ司令官は、二〇〇〇年四月東京で開催されたアジア地域海上警備機関長官級会合に参加するために来日した際、東京湾上で実施された海上保安庁の観閲式を視察した。

 海上保安庁の誇る世界一級の巡視船「やしま」のトップデッキでこの観閲式を眺めていたムダ司令官にとっては、見るものすべてが驚きだった。統率され一直線上を進む水平線まで続く巡視船の行進。うらやましいかぎリの優れた装備、そして信じられないほどの観客の数。

 「いつかは、こんな観閲式をマレーシアでしてみたい」そんな気持ちが、ムダ司令官の中に芽生えていた。

 「日本のように大きな船や立派な装備はないが、我々は、十分な訓練を行い、マレーシアの沿岸を守っている」ムダ司令官は、総指揮をした公開訓練に満足した様子で、誇らしげに語った。


≪ 誇り高いマレーシアの海上警備 ≫

 マレーシアは、海賊対策に積極的に取り組んでいる。海上警察内に海賊対策特別チームを設置し、マラッカ海峡の海賊の取り締まりに日夜励んでいる。その活動は、着実に成果を上げ、昨年は、実際に二組の海賊グループを逮捕している。

 「マラッカ海峡でアンカーをするなら場所をよく確認しろ。マレーシア領海なら、私たちが必ず守る」ムダ司令官は、はちきれそうな笑顔を見せた。

 灼熱の太陽の下、心地よい海風が吹き、マラッカ海峡を守る人々が、ここに集まっていた。
 

IMB(国際商業会議所国際海事局)のホームページへ  
海上保安庁のホームページへ  


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