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著者: 笹川 陽平  
記事タイトル: ジュガーノフ・ロシア共産党党首  
コラム名: 地球巷談 40  
出版物名: 産経新聞  
出版社名: 産経新聞社  
発行日: 1997/10/05  
※この記事は、著者と産経新聞社の許諾を得て転載したものです。
産経新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど産経新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
  「汚職追放」掲げ政権批判
 ロシア共産党というと、過去の遺物といったイメージがありますが、ロシアを七十年以上も支配してきた政党ですから、いまなお強大な力を失っていません。
 ソ連崩壊後、雨後の竹の子のように二百以上もの政党が誕生しましたが、全国的な組織を持つ唯一、最大の政党は共産党です。ほかの政党は組織票は皆無、すべて浮動票が頼りです。とはいえ、今の共産党には議会で過半数を制する力はなく、ロシア政治を見る場合、『合従運衡』がキ一ワードです。それだけに、エリツィン以後を狙う政治家たちにとって共産党は無視できません。
 さて、ジュガーノフ氏は、一九四四年生まれの五十二歳。ガッシリした体格ではありますが、顔付きは温和そのもの、いわゆるソ連時代の指導者とは全く異なりカリスマ性はゼロ。全くの実務派です。現在の政治状況は「十年から十五年かけるべき改革を急ぎ過ぎた。その結果、国民の財産の半分がなくなり、三千二百万以上の人々が生活苦に、あえいでいる」と批判、加えて「ロシア人は辛抱強いといわれているが、辛抱の時間が長ければ長いほど、発火点に達したときの爆発はすごい」、と年金生活者に基盤を置く共産党ならではの不満を漏らしていました。
 エリツィン大統領は「四度、政治的服装を変えた男。彼のなすべき改革はまず自らの酒をやめること」と痛烈です。現在、ロシアの政財界を牛耳っている人物のほとんどが元共産党幹部。資本主義への移行過程で国有財産を都合よく分配したわけです。つまり、現共産党幹部は移行パスに乗り遅れた人々ともいえます。それだけに、カメレオンのようにその時々の政治状況に合わせ、立場を変えるエリツィンの節操のなさは我慢できないというわけです。
 どの政党と連立を組むかはともかく、共産党が政権を奪取した場合、真っ先に「汚職の追放」を徹底的にやるとのこと。ロシアの汚職の底深さはつとに知られるところ。贈賄業者からの「賄賂が高額過ぎる。助けてくれ」との苦情がジュガーノフ氏のところに絶えないそうです。
 「共産党は組織犯罪や汚職の一掃には絶対の自信がある」と胸を張っていましたが、『粛清』には歴史を持つ党ですから自信の程は分かりますが、過去の収容、所列島的な手法での「汚職追放」は御免被りたいものです。九五年に来日しており、日本事情はよく知っています。
 ゴルバチョフ時代、彼が事務方を務めていたとき以来の顔見知りです。党組織を一段ずつ上ってきたわけではなく、ある日突然党首に担ぎ上げられたジュガーノフ氏です。それだけに、指導者としてはいまひとつ物足りなさを感じました。
 



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