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著者: 曽野 綾子  
記事タイトル: 総選挙?もっと出てほしい女性政治家  
コラム名: 自分の顔相手の顔 326  
出版物名: 大阪新聞  
出版社名: 大阪新聞社  
発行日: 2000/04/12  
※この記事は、著者と大阪新聞社の許諾を得て転載したものです。
大阪新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど大阪新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   新しい内閣ができた、と言っても、閣僚のメンバーもそのままの継承内閣らしいが、私はいつも総選挙の度に、今度こそもっとたくさんの女性議員が出てほしい。出ないのはなぜだろう、と考える。
 先日も政治通の何人かの人に質問したら、実に様々な答えが返って来る。
 「女性は金を集められませんからねえ」
 という人がいる。選挙にどれだけ費用がかかるのか私には想像もつかないが、世間は女性には金を出さないのだ、という。
 「政治家になると、裏で儲かるという話がありますけれど、ほんとうですか?」
 と私は、小学生のような質問をする。知らないのだから、仕方がないのである。
 「儲かりませんよ、今は」
 と一人の通は教えてくれた。
 「悪いことをして、捕まることを覚悟するようなことをすれば別だけれど、そんなに儲かるわけはない」
 じゃ原稿を書いていた方が儲かるのかなあ、と私は想像する。
 「女性は利口だから、そういうことをちゃんと知っていて、儲けにもならないことに手を出さないんじゃありませんか」
 それなら、権力欲に振り回される男性よりも、女性の方がはるかに賢いということなのか、と私はまた少しいい気分になった。
 とにかく、女性に政界に出てもらいたい、と皆が思っており、それの妨げになる理由はどんどん減って来ているはずだ。太田大阪府知事も女性だし、今度できた新党『保守党』の党首、扇千景さんも、ご主人は歌舞伎の俳優さんで、奥さんは裏で支えなければならないご職業だと私は思っていた。しかしそういう方でさえ、今は政界で活躍されるのを、社会は承認しているのである。
 社会全体に女性政治家を待望する機運が濃厚にできているのだから、多くの女性政治家が出てほしい。
 もっとも私のように、昔から、人との共同作業が下手という性格もあるだろう。私はテレビで国会中継を見ていて、あの椅子に長時間坐り続けることを考えただけで苦業だと思ってしまうのだ。こういう性格は元から政治家に向かないのである。
 こういう傾向といささか関係がありそうなのは、日本の職場における男性の「横暴」だという。自分のポストを守るために、男性たちはどんなに女性が優秀でも、足を引っ張って責任ある地位を与えないのが実情らしい。
 私の知人の学者は、「今に女性の、男性への積年の恨みを晴らす大反撃が始まる」と言っている。ほんとうなら、実に胸がすくような社会改革になるだろう。
 しかしことを解決するのに、闘いという形を取るのは愚かしいやり方だ。そんなことになる前に優秀な人材なら男女を問わず重用するのが、得なのである。経営者・管理職は男女の別なく学歴主義ではなしに実力主義で人を使ってほしい。
 



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