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著者: 笹川 陽平  
記事タイトル: 開き直れば、活路は見つかる 2)  
コラム名: 元気覇気勇気 26  
出版物名: 産経新聞  
出版社名: 産経新聞社  
発行日: 1999/02/02  
※この記事は、著者と産経新聞社の許諾を得て転載したものです。
産経新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど産経新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   ??日本人はブレの大きい民族だから、そこを自覚し反省しなければ、ということですが、日本人の本質がそうだとお考えですか
 
 笹川 私はそう思ってます。というのは、一つの声が大きくなったときに、それに反対する勢力、少数勢力に対する評価をしないし、尊重しない国民です。大勢順応です。たとえば、政治改革。政治改革をやらない政治家は悪だというときもありましたね。ついこの間のことです。それがいまはどうですか。
 ある一定の空気が醸成され出すと、それに反対する意見をまずメディアは採用しません。メディアは即世論ですから、国民は反対意見に聞く耳を持たない。ということは、バランス感覚がないということなんですよ。これは恐るべきことです。直さなきゃいけない。これから成熟した民主主義の国に変わっていくためにはね。
 
 ??それが本質的なものだと、変わりますかね
 
 笹川 変えていかなきゃいけない。そのように意識しなきゃ、われわれ一人ひとりが。
 
 ??そうなんですが、いざとなるといろいろ…
 
 笹川 そこにいくつかの問題点がある。国民レベルの問題、それから政治家レベルの話もあるでしょうし、いろんな切り口があると思います。いま私がいってるのは国民レベルですね。
 宇宙飛行士の向井千秋さんが「宙返り何度もできる無重力」という上の句を作りまして、下の句を募集しました。向井さんが、あの上の句を宇宙船内で詠んだときに、すぐにどこかの放送局が、下の句を何人かの学生に即興で詠ませたらしい。それを妻が聞いていて教えてくれたんですが、ある女子大生がブスッとして、「それがどうしたなんぼのもんじゃ」という下の句をつけたそうなんです。
 
 ??すごい下の句ですね
 
 笹川 これなんですよ。いま国民に必要なのは、この開き直りです。一体自分たちの人生なんぼのもんじゃと。なんにもなくて裸でこの世に生まれてきて裸で死んでいかなきゃいけないでしょう、一人で。そこを思えば悲しむこともなきゃ、悲観することもない。いま、うつの極ですから、その開き直りの精神がもっとも重要だと思うんです。
 それを政治が悪いんだ、役人が悪いんだと、いつも悪者をどっかに作って、それらが悪いから国がよくならないといって国民一人ひとりは逃げている。そうじゃなくて、それがどうした、人生なんてそんなものじゃないかという開き直りがあれば、活路は見いだせますよ。見方を変えなきゃ。うつ病対策はそれしかないと思う。いい意味の開き直りがないといけないですね。
 
 ??開き直りですか
 
 笹川 それから政治家も含めて、いわゆる指導者といわれる人たち。これは私の自戒を含めて申し上げるんですが、一つは私たちは歴史を粗末にしすぎた。過去に幾度も困難な状況を迎えたことがありました。江戸時代にもいくつかの大改革があり、幕末には厳しい外圧もありました。明治維新の引き金になった生麦事件での薩摩藩に対する英国艦隊の攻撃、あるいは長州藩に対する英国、フランス、オランダ、アメリカの四カ国艦隊の攻撃…。
 そういう危機的な状況を乗り越えてきたわれわれの先輩方の歴史を正しく知るなかに解答のヒントというのは常にあるんです。歴史は繰り返されるといいますけども。そろそろ歴史の学習効果を発揮しなければいけませんね。
 (特集部長 細野憲昭)

 



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