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著者: 曽野 綾子  
記事タイトル: 幅広い視点の提供を望む  
コラム名: 識者から   
出版物名: 日本経済新聞  
出版社名: 日経新聞社  
発行日: 2000/10/09  
※この記事は、著者と日本経済新聞社の許諾を得て転載したものです。
日本経済新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど日本経済新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   早寝なので朝五時ごろ起きて新聞を楽しんでいます。多い時は六紙読んでいました。自分の好きなテンポで、好きなところを集中して読めるのがいいですね。スポーツ欄や文芸欄は飛ばして。テレビではターゲットを絞って見ることができないでしょう。それに古い人間かもしれないけど、紙で読みたいですし。
 多メディア時代といっても、テレビのチャンネルが多いとかえって見なくなるものですね。インターネットは情報を調べるには便利ですが、知識があるだけではっきりした目的に使えなければ何にもならない。
 私が会長を務めている日本財団では、失敗したものも含めて事業内容のすべてをインターネットのホームページに載せています。大変な利用があって、例えば助成事業のホスピスからの報告書を読んで参考になったと言って下さる方もいて、知的財産の共有に役立っていると思います。でも、インターネットに毒されている人はおいてけぼりをくうのではないですか。目的をしっかり持って使わないと時間の無駄ですね。
 新聞は紙面の制約があるわけですが、だからこそ情報を厳選し、新聞杜によって多様な編集をするのがいいと思います。何が正しいとかリーダーぶらないで、読者の判断材料となるような事実を伝えてほしいですね。
 自宅では外国の新聞も読んでいます。日本の新聞にない海外の面白い話が出ているからです。窓ふきをしていたメードさんが落ちたとか、日常的な記事ですが。日本のような知的水準や人権感覚の国は世界にはありませんからね。途上国では今夜食べるためには麻薬の売人や窃盗をしなくてはならないこともあるのに、人権が大切などといっても解決策にならない。だから一つの考え方に染まらないように外国紙も読んでいるわけです。新聞には幅広い視点が求められると思いますね。
 悪いものをやっつけるだけでなく、もっとユーモアのある話を載せてほしい。先日訪問したブラジルでは、日系人自身が「日系人は働きすぎて金をもうける暇もない」なんていう小話を言って自分を笑い飛ばしています。バブル崩壊で世相が暗くなっても「ケチ列伝」をやるとか工夫次第でしょう。人を責めるだけでなく、ちょっとやりすごして怒りを上質な笑いにする記事が読みたいですね。
 



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