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著者: 笹川 陽平  
記事タイトル: 予防外交こそが世界貢献への道 5)  
コラム名: 元気覇気勇気 29  
出版物名: 産経新聞  
出版社名: 産経新聞社  
発行日: 1999/02/05  
※この記事は、著者と産経新聞社の許諾を得て転載したものです。
産経新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど産経新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   ??これまで日本と日本人が元気になるには、自らが変わらなければいけない。自己責任の確立が必要だとのお話でしたが、そういう動きが感じられますか
 
 笹川 私どもは明治以来、役人や政治家の仕事だけが公の利益のためであるとして、われわれ国民の働きは無視されてきました。
 国民も公益活動に参加すべきだということで頑張ってきたわけですが、ありがたいことに世の中が、だんだんそういう雰囲気になってきました。老人問題一つとっても国民の公益活動なくしては成り立たないことが国民自身分かってきました。官尊民卑崩壊の前兆ですよ。
 阪神大震災でも、私たちはファクス一つ、電話一本で大勢のボランティアの要請にこたえて支援しましたが、あれだけの若い人たちが一朝ことあれば何か手伝おう、協力しようとはせ参じてくれました。
 日本の未来を感じました。それを大事にして掘り起こしていかなきゃいけません。
 
 ??国民が公益を追求して、社会に貢献してこそ日本の将来がある。理事長が民間外交に力を尽くすのも…
 
 笹川 これだけ多様化してきている国際社会で、権力者は時間がたてば次々と代わっていきます。でも、民間人は変わることなく継続して付き合っています。私自身、十五年、二十年というお付き合いをしています。
 
 ??なんといってもそれが強みですね
 
 笹川 それと、政府となるとテーブルをはさんでお行儀よく議論しなくちゃいけません。
 これでは相手の心をつかむことは困難です。本音というのはそういうところでは出ないんです。たとえば、北朝鮮の問題にしても、日本人妻の里帰り交渉で、私は朝の十時から夜中の十時半まで断続的に会談したあげく、けんか別れしました。けんか別れしたって私が立場を失うわけじゃない。「あなた方がいやならもうよしましょう」というだけですから。剛速球をド真ん中に投げ込むと、相手が逆に信頼することもあるんです。
 
 ??政府外交も考えなければ
 
 笹川 日本の歴史を勉強して自分の意見をはっきり相手にいうべきだと思います。これからは予防外交こそが日本が世界に貢献できる最良の方法ですよ。
 予防外交というのは霞が関だけでやるのではありません。民間も巻き込んで、あらゆる情報を外務省は吸収していかなくちゃいけない。
 外交の基本は情報です。外務省は情報収集に民間人も活用すべきです。国益につながるものはみんな使ったらいいんです。それを素人に何が分かるんだという態度でいるのは、もうほんとに十九世紀外交の残滓(ざんし)です。
 
 ??もっと理事長はじめ、民間人の個人的なパイプを利用すべきですね
 
 笹川 そう。たとえば、北朝鮮での話(日本人妻の里帰り問題)にしたって、外務事務次官に話したんですが、「あ、そうですか」でしまいですからね。交渉してきた話の内容、どういう交渉の経過でどうなったということを、あのとき外務省は一切聞きに来なかったんですよ。
(特集部長 細野憲昭)
 



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