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著者: 曽野 綾子  
記事タイトル: 入学式?国旗・国歌を世界的な常識に  
コラム名: 自分の顔相手の顔 414  
出版物名: 大阪新聞  
出版社名: 大阪新聞社  
発行日: 2001/03/06  
※この記事は、著者と大阪新聞社の許諾を得て転載したものです。
大阪新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど大阪新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   三月一日付けの朝日新聞の投書欄(東京本社発行分)に、公立学校教員平井慶造(神奈川県、57歳=仮名)という方の投書が載っていた。
 この方の勤める学校の職員会議では、先日四月の入学式の式次第についての話し合いをしたが、出席していた五十人くらいの教職員は全く黙ったままだった。校長は国旗を掲揚し国歌を歌うことにすると言い、それを皆が無言で承認した。理由は、式次第は「職務命令」で、それを「妨害する者は処分する」と言われたからだったという。
 「学校は、子供たちを次の主権者として育てる場であり、民主主義を学ぶ場だ。『命令』と『処分』による学校運営からは、民主主義が育つはずがない。
 職員にとっても、職員会議に出ることがむなしく、苦痛さえ感じられるようになることが心配だ。学校では今、教職員はここまで追い詰められている」
 とこの人は書いている。
 私はすべての地球上の国を見たわけではなく、百九カ国に過ぎないが、何か行事がある度に、逆に、国旗がはためき、国歌が吹奏されない国を見たことがないのである。おもしろいことにアメリカやフランスも国旗と国歌が始終登場するが、ロシアや中国ではもしかするともっとしばしば登場するのである。北朝鮮に至っては、行ったことはないが、写真だけみても必ず金正日総書記のお姿の後には国旗があると記憶する。
 世界の国の中にはいまだに王室あり、専制的な色合いの強い大統領あり、党員が特権階級を造っている国あり、閣僚や官僚の根強い体質的汚職あり、内戦の殺し合いあり、武器を売って恥じない国あり、女性にベールをつけ続けさせている国あり、国家経済が全く破綻(はたん)している国ありだが、それでも国旗と国歌を否定しているところは一国もない。私たちが外国へ行くと、言葉も習慣も全く違う風土の中で、その国の人に対する友情の証を見せるとすれば、国歌・国旗に対する尊崇を示す以外に方法がないのである。
 ありがたいことに、日本は国家として国民に教育、保安、衛生、交通など様々な組織が機能した社会形態を与え、日本の皇室は世界に誇るべき、禁欲的で堕落していないご家族である。
 国歌・国旗に関するこんな常識を長い間生徒に教えることを教職員組合が妨害して来たが、やっと世界的な常識に戻せたのだ。私なら職員会議で「よかったです」と言うだろう。
 



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