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著者: 曽野 綾子  
記事タイトル: 性格?正直は大統領の美徳ではない  
コラム名: 自分の顔相手の顔 361  
出版物名: 大阪新聞  
出版社名: 大阪新聞社  
発行日: 2000/08/15  
※この記事は、著者と大阪新聞社の許諾を得て転載したものです。
大阪新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど大阪新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   外国で手にした英字新聞に出ていた記事なのだが、アメリカの歴代大統領の性格分析が三人の心理学者のチームによってなされたのだという。今は大統領選の最中なので、こういう「研究」に興味が持たれるのだろう。以下は分析の概略である。
 歴代のアメリカ大統領の中でも大物と言われた人たちには、責任を引き受けるという男らしさがあったという。「彼らはスマートでエネルギッシュで判断がはっきりしていた。しかし感じがいいというわけでもなく、単純に正直というのでもなかった」
 感じがいい、ということは、隣人や配偶者には強く求められる要素なのだが、国民を統率する大統領の場合は、しばしば感じのよくない人の方が大きな仕事をする。
 心理学者たちによると、正直、率直ということは、大統領の器量を示す場合には必ずしもプラスには働かない。正直とは言えない大統領は、人を説得したり、目的を達成する方策を知っている。正直と率直は一般人の美徳らしい。
 そのいい例がリンドン・ジョンソンとフランクリン・ルーズベルトであった。彼らはトリックも使えば甘言も弄した。必要なら嘘をつくこともあった。彼らは大衆を扱うすべを知っていたほんとうの政治家だった。
 自らの体験に対して率直であることは、歴史家的見地からみて、政治家の偉大さともっとも深い相関性を持つという。アブラハム・リンカーンとトーマス・ジェファーソンがこの範疇に入る。その反対がウィリアム・タフツとユリスス・S・グラントである。外交的な明るい性格も、判断の明快さと同じくらい、大統領の偉大さを決める要素だ。この点においてはセオドール・ルーズベルトとアンドリュー・ジャクソンが秀でていたが、一方カルヴイン・クーリッジとワーレン・ハーディングはその才能を欠いていた。
 成功に向かって絶えず努力することも、偉大な人物になる一つの条件だ。「成功する大統領は、自分で野心的な目標を定め、そうしておいて天と地が出会うように運命を動かすものなんです。セオドール・ルーズベルトという人物がそうでした」
 分析は次のような結果を出している。
 「支配者」としてはリンドン・ジョンソン、アンドリュー・ジョンソン、ニクソン、セオドール・ルーズベルト。「内政的な性格」としてはニクソン、フーバー、クーリッジ、ブキャナン、ウィルソン、「善良な人物」はアイゼンハウワー、クリーヴランド、フォード、ワシントン。「無垢な人」はタフツ、ハーディング。「俳優」はレーガン、クリントン。「現状維持派」はマッキンレー、ブッシュ、トルーマン。「知識人」はリンカーン、ガーフィールド、ジェファーソン、カーター、ヘイエス。「明るい活動家」はケネディ、ルーズベルト、クリントン、レーガンである。多分に表面的な分類だろうが、おもしろいことにモンローとヴァン・ブーレンはどの範疇にも入らなかった。
 



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