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援助の成果上げた柔軟性 米国のノーベル平和賞受賞者ボーローグ博士は、即断即決、ただ実践あるのみで、お役所的な仕事は嫌いのようです。かつて、大学卒業後、米政府の森林関連の機関に勤めたことがありますが、わずか数カ月で辞職、大学院に戻っています。 ノーベル平和賞受賞の対象になった博士の「緑の革命」も、米政府の音頭とりで始めたものではありません。米国の非営利団体、ロックフェラー財団の資金、つまりは民間の援助によってなされたものです。 アフリカ十二カ国で展開している「笹川グローバル2000」農業増産計画も、資金は全額日本財団が提供しています。もちろん、政府の対アフリカODA十三億ドルに比べれば、その援助額は七百万ドルと細々としたものです。しかし、昨年、これまで冷淡だった世界銀行が私たちの成果評価し今後共同で事業を展開してゆくことになりました。 蟷螂(とうろう)の斧のような援助がどうして目覚ましい成果を生んだのでしょうか。政治的側面でのカーター米大統領の支援もさることながら、ボーローグ博士の経験に裏打ちされた広く深い学識と人間味あふれる指導力に負うところが大きいのです。常日頃、博士が口が酸っぱくなるほど主張される言葉に「必要なのは柔軟で自由な計画の実施体制」があります。枠にとらわれ、ギスギスした行動は失敗のもとなのです。 前回触れました「笹川グローバル2000」の中核をなすカントリー・ディレクターは広く人材を全世界に求めた多旧籍の組織です。最近、ODAの実施に際し、民間の非営利団体組織を活用する国が出始めていますが自国や相手国の非営利組織に限るケースがほとんどです。これからは、最適の人材を世界に求める柔軟性と度量の深さが不可欠です。 アフリカ諸国では、タイミングよく種まき時期に肥料を大量入手することは至難のことです。ある国の市場で肥料が手に入るなら、その場で即購入する必要があります。こうした行動の柔軟性は予算に縛られた「お役所仕事」では不可能です。 ボーローグ博士は、規則に縛られた考え方を最も忌み嫌います。会議の席上、「しかじかの理由でできません」と発言すると、博士に「こうすればできますとなぜいえないのか」との雷を何度も落とされます。私は、民間の非営利組織の長所である機動性と効率を本当に生かすことの大切さを博士から学ぶことができました。 日本財団の「お金は失敗を恐れず、タイミングよく生かして使う」とのモットーは博士の考え方と合致しているのです。
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