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元好敵手に厳しい評価 “冷戦体制崩壊三人組”との言葉があります。米国のレーガン元大統領、英国のサッチャー元首相、旧ソ連のゴルバチョフ元大統領です。今回はサッチャーさんから見たゴルバチョフさんについて人物評を紹介します。 ゴルバチョフさんの新思考外交、つまりは冷戦体制終焉への意向を最初に察知したのがサッチャーさんだったことは有名な話です。それだけに、共産主義体制脱却後のロシアに対するサッチャーさんの期待度は思いのほか高いのです。 しかし、ゴルバチョフさんへの評価は、かなり手厳しいものでした。「勇気のある方でした。しかし、あの方は政治家としての晩年を自らの手で汚してしまいました。一年前、なぜ大統領選挙に出馬したのでしょう。残念でなりません」。ゴルバチョフさんの人物評に話が移ると開口一番出てきた言葉です。 「彼は物事を詳細にわたり把握する人でした。一方、エリツィンさんは常に大局を把握し小事にはこだわらない人物。彼は西欧的、エリツィンさんは極めてロシア的です。二人の違いは、単に性格の相違によるものだけでなく、選挙の洗礼を受けているかどうか、その政治的キャリアの違いにもあります。彼は共産党の組織を単に順繰りに上り詰めた人ですから」 それにしても、新しいロシアにかけるサッチャーさんの期待は相当なものです。「今なおロシアの経済は混乱状態から抜け出してはいません。マフィアも横行しています。しかし、民主主義とはなにか、自由な企業精神とはなにかを十分に理解した人々が育ち始めています。特にネムツォフ第一副首相は若いながら一級の人物です。彼はテレビなどメディアの効用を熟知しています」 サッチャーさんの新生ロシア、特にネムツォフ礼賛には熱がこもっていました。 私は今一度話題をゴルバチョフさんに戻そうと「先にモスクワでお会いしましたが元気そうでしたよ」と水を向けると「最近は米国でしかお会いできなくなりました」。この一言には皮肉以上の棘がありました。 かたや、大物政治家として今なお活躍する英国政界の大御所的存在、一方はロシア初の直接国民投票による大統領選挙に出馬、無惨としかいいようがない惨敗をきっした人物、双方が会う機会もせいぜい、冷戦体制関連のセミナー程度との意味合いがこもっていたからです。 サッチャーさんにとってかつての好敵手の落はくぶりが、つらく悲しく、そして時には怒りをも覚えるということでしょうか。
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