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何を成したかが政治家の評価 今回は“冷戦体制崩壊三人組”のうちレーガン元米大統領についてのサッチャーさんの人物評です。 ご存じのようにレーガン元米大統領はアルツハイマー病におかされ、カリフォルニアの自宅で療養中です。サッチャーさんは、アルツハイマー病が不治の病であること、現代医学のこの分野での遅れを嘆いておられました。二年前、レーガンさんを自宅に見舞った折、レーガンさんはサッチャーさんをまったく識別できなかったとのこと。レーガンさんの記憶喪失もさることながらナンシー夫人の辛さを思うと、いまなお深い悲しみに陥るそうです。 さて、レーガンさんが米大統領として登場した当時、サッチャーさんはさほどの人物とは思っていなかったとのことです。「年々、人物が大きくなられました。あの方は人物の目利きについては特別の眼力を持った人でした。賢明かつ冷厳な眼力の持ち主でした。ことの真がんを瞬時に見分ける人物でした」。些事かかわらずのおうような構えを見せながら、肝心かなめの事柄は明確に把握していたというわけです。 サッチャーさんが特に印象づけられたのはレーガンさんの卓抜した一般大衆とのコミュニケーション能力だったようで、「国民大衆に話しかけ説得する能力は天賦の才だったかもしれません。しかし、能力は磨かなければ物になりません。努力家でもありました」と政治家にとっての演説能力の重要性を熟知しているサッチャーさんならではの人物評です。「最近は世界規模での政治家がいなくなったのでは」との質問に首を横に振り、肩をすくめながら「マスコミが政治家の家庭や交遊関係に興味を持つことも原因でしょう」。さすがは淑女、女性スキャンダルとはいわず交遊関係とおっしゃいました。政治家の評価はなにを成したかで決まるというわけです。 ちなみに、香港返還に関連し、最近の米国の対中政策に話題が及んだときのことです。クリントン米大統領への評価はにべもないものでした。「残り三年の任期ですよ」。その一言で終わりでした。 彼女の尊敬する政治家はウインストン・チャーチル。ケンブリッジ大学にあるチャーチル関連資料ライブラリーの充実に努めるかたわら、自らの十三年間の種々の資料をこのライブラリーに寄贈すべく作業中とのこと。「ファシズムや共産主義が台頭する可能性は少ないと思います。だからこそ、いかにこうしたイデオロギーと戦い、勝利したかを、政治家として若人に伝えていく責務があります」。背筋を伸ばしたこのときのサッチャーさんはアイアンレディーそのものでした。
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