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著者: 山田 吉彦  
記事タイトル: 海賊対策の国際会議を開催  
コラム名: 日本の生命線を守る 7  
出版物名: 海上の友  
出版社名: (財)日本海事広報協会  
発行日: 2000/03/21  
※この記事は、著者と日本海事広報協会の許諾を得て転載したものです。
日本海事広報協会に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど日本海事広報協会の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   国際商業会議所国際海事局(IMB)の海賊レポートセンター(クアラルンプール)は、国際的に海賊情報を取りまとめている唯一の機関である。
 海賊レポートセンターによると、一九九九年の一年間に発生した海賊被害は二百八十五件。同センターが開設されて以来、最も多い被害件数である。
 今年に入っても海賊の被害は衰えていない。一月、二月の二カ月間に報告された海賊被箸の件数は四十件を超えている。
 また、現在シージャックの可能性が強い船舶の行方不明事件が二件起こっている。その一件は、日本の船会社の所有する「グローバル・マース号」で、すでに報道されているが、二月二十三日の無線連絡を最後に、十七人のクルーを乗せたまま積み荷ごといなくなってしまった。「グローバル・マース号」の船員は、三月十日、タイのプーケット島近くで無事保護されたが、やはり海賊に襲われ、船と積み荷を奪われていた。
 三月七日、シンガポールにおいてアジア十三カ国と一地域の沿岸警備担当機関による海賊対策会議が開催された。昨年十月に日本人二名が乗り組んでいた「アロンドラ・レインボー号」が、海賊に襲われる事件が発生した。
 この事件の救難活動を行った海上保安庁は、海賊対策における国際協力の必要性を痛感し、海賊対策国際会議を検討していたものであるが、昨年十一月のアセアンプラス一の会議の場において小渕総理大臣が、海賊対策の開催を提案したことから、速やかに実現されたものである。
 海賊たちは、多くの国の領海と公海にまたがり活動しており、一国の警備機関の活動には限度がある。そこで、日本財団では早期の国際協力体制の確立を提案してきた。また、海上交通の安全の確保は、日本国民の生活の安全に直結することから、官民一体となった対策が必要であると考え、海上保安庁と協議し、海賊対策国際会議開催の支援を行った。
 シンガポールにおいて開催されたこの会議は、日本の海上保安庁が議長となり、新しい沿岸警備機関による相互連携と協力関係の構築が話し合われた。四月には、東京において各国の沿岸警備機関の長官クラスによる国際会議の開催が予定されており、今後の国際的な海賊対策の展開が期待される。
 海上保安庁は、本格的に海賊対策に取り組み始めた。国際的警備協力の始動は、海賊への抑止効果となっていくだろう。
 一方、海賊対策として、それぞれの船の自衛策が重要なポイントであることは言うまでもない。しかも被害を拡大させないためには、非武装による自衛が大前提である。自衛策の基本は、海賊を本船に乗り込ませないことである。
 今まで、各船会社、各船ごとにさまざまな対応策を取ってきた。危険水域での放水や船尾のライトアップなどが一例である。また、最近IMBで推薦しているシージャックに備えての船舶追跡システム(シップロック)を搭載する船も増えている。
 日本財団では、昨年の夏から多くの海事関係者の意見をもとに海賊警報装置の開発に着手してきた。「安くて・誰でも取り扱え・手入れも簡単な警報装置」をテーマに機関士経験者を中心に製作を行ってきた。
 そして、二月二十九日、東京・船の科学館にて二百人の海事関係者の前で公開実験を行った。この新型海賊警報装置の名前は「とらのもん」と名づけられた。虎ノ門は、江戸城の外堀を守る門の一つであり、航海の安全を守る神様「金比羅さま」の門前町である。日本財団では現在この新型警報装置のモニターシップを募集中である。
 



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