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いつか或るところで、国旗と国歌を学校で教えることに反対の先生の理由を聞いた。 日本がもっと立派な、誇れる国になってから、国歌と国旗を認めたいというのである。 私は一瞬困惑した。私のようにあまり途上国に行ったことのない方なのだろうから、仕方ないのかもしれないが、あまりにも実態を掴んでいない認識なのである。 日本は総理に指導力がなかろうが、銀行が堕落していようが、官吏が天下りをしようが、世界的なレベルでは実に立派な、誇るべき国なのだ。 まず飢えている人がいない。病人が道に放り出されていることもない。警官や裁判官の多くがやくざと繋がっているということもない。失業率が四パーセントを超えているとは言っても、たった四パーセントである。大学出も普通の男たちも、ほとんど働く場所がない国なんかいくらでもある。 水は安心して飲める。どの水も飲めるだけでなく、それで風呂に入り、水洗トイレを流す。電気もガスも電話も、今日は故障で使えないなどという日はない。鉄道は時間を守ることで有名であり、郵便は時々年賀郵便を捨てるアルバイトさんがいる程度で、普段は確実に届く。地震があっても被災者はとにかく即日食べるものを配られる。何よりもすばらしいのは、誰もが国民健康保険の制度で守られていることだ。 皇室も堕落していない。亡くなったダイアナ妃のような、夫以外の複数の男と関係を持つような人も皇室のメンバーにはいない。どなたも学問を愛し知的で質素である。世界の王室の中で、優等生中の優等生だと言ってよいだろう。 義務教育は百パーセントに近く、自国の生産品は世界的なレベルを保ち、国民にやる気があり、国内に数億挺の銃があるということもなく、兵器の輸出で儲けてもいない。 総理は凡庸。政治家は大臣か総理になること、役人は天下りの先ばかり考えている、というけれど、役人皆が賄賂を受け取っているわけではない。総理は皆庶民的な暮しをしている。歴代の総理の中では田中角栄氏が一番の金持ちだったと思うが、それでも娘の代になると、もう邸を切り売りして税金を払わねばならない。役人の汚職だって決していいことではないが、たかがほどほどのマンションに大理石の風呂を入れたとか、ゴルフの接待を受けたとか、というていどだ。 何よりすばらしいのは、義務教育の制度が行き届き、現実にそれをほとんどの人が受けられるということだ。こんなことは夢のまた夢という国はいくらでもある。 二代目の政治家は多いが、総理大臣の親戚が、すべての要職を独占するということもない。時々いかがわしい人も事件も起きるが、日本はやはり世界一誇るべき国だろう。こういうことをはっきり言わないと、生徒も先生も、判断が狂ってしまうのである。
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