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著者: 曽野 綾子  
記事タイトル: 弔辞?この幼稚さ「国辱の作文」責任とれ  
コラム名: 自分の顔相手の顔 219  
出版物名: 大阪新聞  
出版社名: 大阪新聞社  
発行日: 1999/03/02  
※この記事は、著者と大阪新聞社の許諾を得て転載したものです。
大阪新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど大阪新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   故フセイン国王の葬儀に対する各国首脳の弔辞の抜粋、さわりの部分が、並んで紹介された。まさに作文コンテストである。まずそのまま紹介しよう。
 「よい時代と悪い時代、病気と健康の時代の双方を通じて、国王は強力な意思の力を示しそれが貴重な結果を生んだのです。平和を担う人として、国王は希有な種類の勇気を持っていました。中東にいつの日か平和が訪れる時、彼の名はその上に刻まれることでしょう」(アメリカ合衆国大統領、ビル・クリントン)
 「私は今後もフセイン国王の名を記憶し続けるでしょう。なぜなら、王は国連の最も貴重な、平和の協力者だったからです」(国連事務総長、コフィ・アナン)
 「すべてのイスラエル人、右派も中道も左派も、上も下も。この人を大切に感じていました。彼はヨルダンの愛国者であり、同時にイスラエルとヨルダンとの間の紛れもない平和の擁護者であったからです」(イスラエル首相、ベンジャミン・ナタニエフ)
 「彼は中東における平和の構築と存続の開拓者であり橋わたし役でありました。それ故に彼は自由と平和を愛するすべての兄妹、友人たちから信頼と尊敬をかち得たのです」(パレスチナ大統領、ヤセル・アラファト)
 「彼こそは彼の思想と生活を彼の国民のために捧げたアラブの指導者でありました。そして最大の困難と試練を通して、約半世紀にわたってヨルダンの人々を導いたのでありました」(エジプト大統領、ホスニ・ムバラク)
 「彼は優れたヴィジョン、完璧さと勇気を備えた非凡な人でありました。半世紀に近くその指導者は実に多くのものをヨルダンの国家、その国民、その地方に与えたのであります」(イギリス首相、トニー・ブレア)
 「知恵と未来をよく見抜く眼と、疲れを知らぬ個人的な献身によって、彼は常に中東における平和のプロセスに穏やかで正しい判断を与えるために、新しい刺激、推進力となって来たのであります。この人間的で個人的な偉業によってヨルダン王国は、尊敬と存在の重さを全世界に認識させていたのです」(ドイツ首相、ゲルハルト・シュレーダー)
 「私たちはフセイン国王の死去によって特に深く悲しみました。なぜなら陛下はそのご生涯において四度も日本を訪問され、日本の偉大な友人として知られていたからです」(日本国首相、小渕恵三)
 日本国首相の弔辞だけが飛び抜けて貧しく幼稚なことはよくわかるだろう。大人の文章と子供の作文との違いだ。理由は明白だ。他の首相たちは、「フセイン国王について」語った。日本の総理だけが自分との関係を書いた。相手だけを取り出して書くということは子供にはできないのだ。総理ご自身がこれを書かれたとは思えない。誰が書いたか知らないが、このような空疎な内容で、総理と日本人に国際社会で恥をかかせた役人には、やはり責任をとってもらいたいのである。
 



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