共通ヘッダを読みとばす

日本財団 図書館

日本財団

Topアーカイブざいだん模様著者別記事数 > ざいだん模様情報
著者: 笹川 陽平  
記事タイトル: カーター元米大統領 4)  
コラム名: 地球巷談 16  
出版物名: 産経新聞  
出版社名: 産経新聞社  
発行日: 1997/04/20  
※この記事は、著者と産経新聞社の許諾を得て転載したものです。
産経新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど産経新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
  首相経験者は積極的に外国へ
 カーターさんの大統領時代の評価はといえば、残念ながらあまり高くないようです。碓かに人権外交をふりかざし、理念を追い求めすぎたきらいがあります。
 その結果、旧ソ連のアフガニスタン侵攻を許し、イランの米大使館占拠事件を招き、さらには人質奪回に見事失敗、夢のみを追う大統領の典型のような言い方をされたこともありました。在職中、唯一評価されたのが、その後の中東和平交渉の枠組みを作ったイスラエルとエジプトとの和平実現(キャンプデービッド合意)を演出したことでしょう。
 彼がその真価を発揮しだしたのは、むしろ大統領職を離れてからでした。ホワイトハウスを離れた直後は、キプロス和平に力を注ぎ、また最近ではハイチでの混乱を収拾、北朝鮮の故金日成主席と会談、米朝対話のきっかけを引き出しています。さらにはニカラグア、パナマ、ボスニアなどと、紛争のあるところ、カーターさんありで、止め男、調停者としての仕事ぶりには目を見張るものがあります。
 カーターさんには大統領時代に著した『グローバル2000』と題する著書があります。そのなかで、西暦二千年を念頭に置いた途上国での公衆衛生、教育、さらには人口問題などの課題が提起されています。今日、カーターさんは大統領の職にあるなしにかかわらず、自らに課した仕事を全力投入で続けているのです。カーターさんにとってはわずか四年間では自己の持てるものを燃焼できなかったということでしょう。
 米国の歴代大統領のなかでも、その職を離れた後もなお、活発に対外的活動を続けている人物は彼以外にいません。かつて、大統領経験者に多くのシークレット・サービスをつけるのは税金の無駄遣いとの声が一部であがりました。その時、断固反撃したのがカーターさんでした。「私はゴルフにうつつを抜かしてはいない。今日ただ今、仕事をしているのだ」と。
 ところで、国際社会での日本の役割への期待は大きく重いものがあります。わが国には現職を含め、なんと十人もの“首相”経験者がいます。私は常々、これは他の先進国にはない、隠れた日本の財産だと考えています。
 たとえ在任三カ月で終わった人でも元首相の肩書は職業外交官数百人分に値するはずです。首相経験者は永田町にこもらず、カーターさんのように積極的に外国へ出るべきです。例えば、担当地域を決めておのおのが担当地域の国々を定期的に訪問するだけでも、日本への理解度を高め、イメージ・アップにも貢献すると思います。
 



日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION
Copyright(C)The Nippon Foundation