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??いまの日本の沈滞したムードをどのようにとらえておいでですか 笹川 いま国民は重症のうつ病にかかってるんですよ。私たちが反省し、自覚しなきゃいけないのは、われわれ日本人は、ブレの大きい民族だということです。 ??ブレが大きいといいますと 笹川 これは十分に気をつけなきゃいけないことなんです。歴史的にそうなのです。戦争に負けたとたんすべての良き伝統を捨て完全に骨抜きになってしまいました。 そして、戦後は経済は一流、政治は二流とか、三流とかといって経済至上主義にはしり、一億総金もうけにまい進してバブル崩壊で一億総うつ病です。この間の北朝鮮の発射したテポドンの問題にしても、それまで国家意識皆無の人を含めて、よくその情報分析もせずに、たしか一週間だったかな、共産党を含めて国会では、全会一致で北朝鮮への非難と対抗処置を決めてしまいました。そうして、こぶしは振り上げたけども、(日本以外は)世界はどこもこぶしを振り上げていない。冷静なものです。こういう現実のなかで日本はどうしたらいいのか。 何かことが起こったときに、(日本人は)冷静に物事を分析判断というバランス感覚がない。そういうブレの大きい民族というのは大変恐ろしいことなんです。 ??たしかに 笹川 そういう意味で、私はいわゆるバブル期の平成二年までは躁の時代で、いまは国民全部がうつの極になってると思うんです。国民は何を基準にしていいとか悪いとかいってるのかわからないのです。実は、いまのような世の中でも、まだまだいいという人もたくさんいらっしゃるんですよ。悪いという人ばっかりじゃないんです。 ??そうですか 笹川 いいという人が声を上げられないという雰囲気がよくありますよね。私は戦争を知ってる最後の世代です。私の基準は何かというと、「三食メシが食える」ということですよ。 (日本は)まだ平和で、豊かでしょう。街に失業者があふれてますか。街角に職のない若者がたむろしてますか。犯罪も増えたりとはいえ、世界(の他の国)から見ればまだまだ安全です。そういうことを基準に考えれば、私は(日本は)豊かな国だと思うし、平和な国だと思います。 いまの若い人たち、どう思ってるんでしょうか。日本は不況で困ってると若い人は本気で考えているでしょうか。実感として持っていないのではないでしょうか。確かに困難な状況におかれてる方もたくさんいらっしゃいます。住宅ローンを三十年で組んでたところを会社をリストラになった。そういう方は大変です。 しかし、いつの時代もそういう陰の部分はあるんです。そのような困難な人を通して世の中を見てすべてを判断するというのは、うつ病そのものです。いまや非常に自虐的になって、困った、困ったといわなきゃいけないような雰囲気になってます。 二十一世紀は自己責任を確立する世紀です。日本人は難しいでしょうが、自ら変わらなければなりません。 (特集部長 細野憲昭)
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ささがわ・ようへい 昭和14年1月8日生まれの60歳。東京都出身。37年明治大学政経学部を卒業。平成6年から全国モーターボート競走会連合会会長、同元年から日本財団理事長を務めている。
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