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台湾の地震の後、東京新聞で奇妙な記事を読んだ。九月二十三日付の同紙(編集部注=朝刊)は、政府が台湾への救援に取り組んでいることを報じた。国際緊急援助隊百二十五人の派遣、緊急無償援助約五千万円などがその内容である。 「政府がこれだけ迅速に、百人台の国際緊急援助隊を外国に派遣したのは初めてのこと」らしい。一九七二年の日中国交正常化以後、日本が台湾に緊急無償援助をするのは一九九六年の洪水被箸発生時の約五百万円と、今度の二回であるという。 「外務省筋は『台湾には進出企業も多く、登録しているだけで約一万二千人の日本人の長期滞在者、永住者がいる。台湾重視は当然』と強調」「こうした政府の姿勢には『日本の救援は中国の意向にも沿ったものだ』(外務省筋)との判断がある。政府は台湾救援の処置を打ち出すことに、中国政府に通報しているが、中国側は江沢民・中国国家主席が『できる限りの援助』を表明していることもあり、日本の処置を歓迎しているという」 この記事の見出しが「政府、台湾救援に人、カネ次々」「中国『歓迎』で積極的」とあるのだから、私の日本語の解釈の尺度で読むと、日本は中国のご意向を伺いつつ、先方がいいとおっしゃったから、いっそう積極的に台湾に金を出している、という感じに取れる。 この記事を書いた記者もそのように思っているのか、それともこの見出しは記者の意図に反して整理部がつけたものか、ご当人に聞かないとわからないが、新聞でよく使われる「外務省筋」というのは一体、誰のどういう人の発言なのだろう。この記事の中の「外務省筋」は「外務省」にかなり批判的な分子なのだろうと私などは取るのだが、皮肉に考えれば全く反対で、「日本は中国のご意向には全く背いていません」ということを改めて書いたいだけのようにも受け取れる。そして東京新聞もそういう態度に、敢えて異は唱えない、というわけである。 いつから日本は中国の属国になったのだろう。日本の金を出して、災難に遇った人たちを助けようというのに、何でいちいち中国の、ご意向を伺う必要があるのだ。災害援助は、被災者に対して行うもので、それはどこの国であろうと関係ない。 もっとも最近では、感謝する必要はない、という国へどうして出す必要がある、という意見も出て来たが、まことに自然である。 九月二十五日の産経新聞(編集部注=朝刊)の「私にも言わせてほしい」の欄で自由党議員の小池百合子さんは「三千九百億円の対中支援を示された中国の江沢民国家主席は、感謝の言葉ではなく、『評価する』の一言」であった。また日本に向けて「テポドン」の発射を匂わせる北朝鮮に対して千二百億円もの軽水炉建設の費用を出すというのが日本だと書いておられる。別に相手に感謝を要求するのではないが、人間的でない相手と付き合うのは危険だということは、一般的な常識なのである。
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