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著者: 笹川 陽平  
記事タイトル: ハペル・チェコ大統領 3)  
コラム名: 地球巷談 45  
出版物名: 産経新聞  
出版社名: 産経新聞社  
発行日: 1997/11/09  
※この記事は、著者と産経新聞社の許諾を得て転載したものです。
産経新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど産経新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
  新世紀へシンポジウム実現
 日本財団がハベル大統領就任後、チェコで種々のプロジェクトを展開していることはすでにお語ししました。
 共産政権崩壊後、旧ワルシャワ条約機構加盟諸国は資本主義経済体制への移行を目指しました。とはいえ、頭の中では“市場経済”なるものを理解できても、いざ実行となると分からないことばかりです。そこで、日本財団では日本の戦後復興をモデルにした市場経済の『いろは』をテレビ番組化し、チェコ放送を通じて放映、その後教材として各高校に配布するプロジェクトを支援しました。このプロジェクトは、さらに展開し、目下個々人が自由に学べるようパソコンソフト化が進められています。
 共産政権崩壊後の日本とチェコの人脈は皆無の状態でした。当然のことですが、これまでの、日本とチェコの人的交流は旧政権一辺倒、非合法の民主勢力とのそれは無論ありませんでした。これは、単にチェコに限ったことではなく、中、東欧諸国と呼ばれるスロバキア、ポーランド、ハンガリーなど、すべてについていえることでした。私たちは新生した中、東欧諸国との人的交流の必要性を考え、種々のプログラムを立案、これら地域へのアプローチを試みてきたのです。ハベルさんと知己を得たのもこうしたアプローチを通じてのものでした。
 ハベル大統領の弟、イワンさんは日本に留学したことのある知日派です。私はイワンさんに、チェコの人々の日本への認識はどの程度のものかを尋ねたことがあります。「チェコ人にとって東方の国とはロシアであり、極東とは中国を意味する。極東のはるかかなたにあるのが日本だ」と答えたイワンさんの表情はちょっと寂しげでした。中欧、東欧での日本という国の存在は残念ながら極めて希薄なのです。私は改めて中欧、東欧との交流の必要性と重要性を思い知らされたものです。
 去る九月、プラハを訪問し、『フォーラム2000…新たな千年紀への希望』と銘打った国際シンポジウムに出席しました。このシンポジウムは昨年ハベル大統領と会談した際、腹蔵のない会話の中から生まれたものです。西暦二〇〇〇年を目前にして来るべき千年紀を人類はいかに生きるべきかを英知を集めて考え、欧州の中心に位置するプラハから全世界にその成果を発信しようというものです。そして、ハベル大統領と日本財団が協力し、今後五年間続くこの気宇壮大なシンポジウムを実現することになったのです。もちろん、中欧での日本のプレゼンスを示したいとの意図もありました。四日間にわたったシンポジウムは、チェコ大統領府や国会のあるプラハ城で開催されました。
 



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