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著者: 笹川 陽平  
記事タイトル: 国民に苦しいことも言うのが指導者 3)  
コラム名: 元気覇気勇気 27  
出版物名: 産経新聞  
出版社名: 産経新聞社  
発行日: 1999/02/03  
※この記事は、著者と産経新聞社の許諾を得て転載したものです。
産経新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど産経新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   ??日本が活力を取り戻すには、いい意味で開き直りとともに、政治家など指導者は、歴史から学ばなければいけないと
 
 笹川 そう。(指導者は)歴史の教訓を学ぶべきです。しかし、日本の場合はどうでしょうか。国家の本質的問題を論議せず、たとえば、憲法問題や教育問題の基本はさわらない。そうして枝葉のところで対症療法の繰り返しをしてきたんですね。まさに歴史の教訓の欠如です。
 戦後、国家というものを意識して、国家とは何なのか、日本国というのは何なのか、という観点からの議論をもっと国民に分かりやすく率直にやってこなければいけなかったのです。それを指導者たちは国民が喜んでくれる、あるいは国民によく思われたい、そして人気のあることが立派な人なんだという、実に残念な、ポピュリズム的で迎合的な価値観に基づいて今日までやってきたんですね。
 
 ??おっしゃる通りです
 
 笹川 国家の意志、あるいは国民の安寧を考えれば、時として苦い薬も国民に飲まさなきゃいけないし、つらい仕事も押しつけなきゃいけない。それを国民がどう理解するか、どう評価するかは、国民自身が判断することです。指導者は言うべきことはきっちり言わなきゃいけない。それを戦後のあらゆる指導者が怠ってきた結果が、いまの日本です。一種の民主主義の弊害かも分かりませんが、言うべきことを言わない、国民が喜んでくれることしかやらない。そんなことでは国家は維持できません。
 とくにこれからのグローバリゼーション、国境がなくなってきた時代では、単一の国家だけで繁栄という考え自体が、崩壊してきましたから。たとえば、通貨問題だって環境問題だって、日本だけの努力ではどうにもならない時代です。
 
 ??環境には国境がありませんからね
 
 笹川 海の問題もそうでしょうし、人口の移動もそうでしょう。グローバリゼーションのなかで日本の指導者が、日本の国益がどうあるべきかを、真剣に考え行動すべきです。指導者はまず第一に自国の歴史というものを正しく理解し学ぶことが大事です。
 それと二つ目に、教養としての哲学を勉強し身に着けなければいけません。
 三つ目には、芸術文化について、オペラについて多少詳しいぞとか、邦楽についてはちょっと知識があるとかいうものをきちっと持っている必要があります。
 そういう三つの高い教養に支えられて、それを外国語で説得できる語学力を持ちあわせなくては、グローバリゼーションのなかで日本の指導者は通用しません。
 
 ??難しいですね
 
 笹川 難しいけどやらなきゃいけません。明治の先達はみなやってきたのです。これは全部できるんです。外国の指導者はみなそうです。韓国人もできます。中国人もできます。できないのは日本だけです。指導者というのはそういうものだし、そういう指導者をつくるようにしなければいけないんです。日本の人は、外国に行って交渉はしますよ。でも、晩メシになったときの話題はゴルフしかない。日本人は仕事の話が終わったらもう続かない。あと話題は一切ないではだめなのです。交渉のカナメは相手がどう人物評価するかですよ。
 私の自戒を含めて申し上げてるんです。私自身英語は分かりませんし、哲学は分かりませんから、その反省に立っていっているのです。
 (特集部長 細野憲昭)

 



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