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著者: 曽野 綾子  
記事タイトル: 外務省?どうした弱腰外交と「伏魔殿」と  
コラム名: 自分の顔相手の顔 433  
出版物名: 大阪新聞  
出版社名: 大阪新聞社  
発行日: 2001/05/16  
※この記事は、著者と大阪新聞社の許諾を得て転載したものです。
大阪新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど大阪新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   スペインの田舎を旅していると、日本の新聞どころか、英字新聞も買えない。CNNもBBCも入らないテレビもあるし、ニュースの時間に部屋にいられない日も多い。
 小泉内閣ができたのは知っていたが、北朝鮮の金正日総書記の長男だという金正男なる人物が偽旅券を使って日本に入国しようとした事件はいったいいつ起きたのか、よくわからなかった。北朝鮮側は、その人物との関係を否定している、とどこかで読んだのだが、いずれにせよ、日本は簡単にこの人物を国外退去させた、ということに私はかなり驚いた。身柄が証明されないのなら、なおさらゆっくり調査して、余罪やその他の事件との関連を調べるべきであろう。

 帰国後知ったのだが、森内閣と小泉内閣の交代の日時は、四月二十六日午後十時三分と見なされている。一方、偽旅券を持った「金正男」と思われる人物が日本に入国したのは五月一日午後三時四十分着のJAL、そして日本政府が同人物に国外退去を決めた日時は三日夕刻と推定され、実際の退去は、四日午前十時四十五分である。

 小泉内閣は約一週間、決定までに時間があったのだ。これは明らかに小泉内閣が全責任を負うぺき事件であり、田中真紀子外相は着任早々、大きな失策をしたと私は思う。このような投げやり・弱腰外交なら、政権交代は必要なかったのである。

 このごろの新聞も、ファンクラブと同じ心理らしい。森前総理の
 現在の外務省は、だらけて思い上がり、哲学のない役所である。金の管理のずさんさ一つを見てもよくわかる。民間の金融機関で不正が見つかれば、過去に湖って徹底して調査され、事件に関係のなことならすべて悪く書き、田中外相のことなら、すべてよく書く、そんな幼稚な姿勢の報道は、いい加減にやめてもらいたい。

 新聞は個々のケースのデータを与え、国民がそれを自分で判断する。もちろん私のような素人の理解の助けになる解説はほしいし、一部のマスコミは今回の事件について総理と外相の責任を問うているが、田中外相がこの程度の弱腰だったのはむしろ意外だ。
い現在の上司までが責任を問われるが、外務省は言いわけ程度の処分しかしていない。

 田中外相が伏魔殿の魔物たちと闘うのは、さぞかし大変だろう、と思うが、閣僚のポストにいるのは、なりたくてなった人たちだ。いささかも同情することはないだろう。
 



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