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著者: 笹川 陽平  
記事タイトル: 中国 故とう小平氏 3)  
コラム名: 地球巷談 11  
出版物名: 産経新聞  
出版社名: 産経新聞社  
発行日: 1997/03/16  
※この記事は、著者と産経新聞社の許諾を得て転載したものです。
産経新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど産経新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
  「義」をもとに堂々議論を
 とう小平さんの葬儀の模様をテレビで見ました。遺族にまじって江沢民さん以下、中国共産党政治局常務委員の皆さんの悲しみの表情が映し出されました。江沢民さん、李鵬さん、喬石さん、李瑞環さん、朱鎔基さん、劉華清さん、胡錦涛さんの七人の方々です。皆さんにはそれぞれお会いしており、いろいろな思い出があります。
 亡くなった胡耀邦さんにも保養地の北戴河でお会いしました。とう小平さんと齟齬(そご)が生じて晩年は不幸でしたが、人柄の良い方でした。「笹川良一先生の九十歳の誕生祝いはわが家でやりましょう」と父とも意気投合していました。
 さて、今年は日中国交回復二十五周年、両国関係も一つの節目を迎えることになります。とう小平さんも逝き、中国の要人も第二世代に入れ替わりました。そして、このところ、どうも日中両国の関係は良好とはいえないようです。戦後、国交のなかった日中両国関係を支えてきたのは高碕達之助さん、岡崎嘉平太さんといった民間の方々でした。正常化以後は新日鉄の稲山嘉寛さんも両国関係の促進役を果たしてこられました。今日、周りを見渡してもこうした大物パイプ役がいないように思えるのです。
 前回も触れましたが、中国の人物評価は思想信条を超えた義侠心(ぎきょうしん)の有無が重要なポイントなのです。思想信条が違っても人間としての義があれば、中国の人々の信頼を得ることができ、腹蔵ない話し合いができるはずです。国の利害損失をめぐっての修羅場で「お初にお目にかかります」と名刺を出していてはまとまる話も壊れます。
 昨年あたりから尖閣諸島(中国名・釣魚島)や教科書問題で雲行きが怪しくなってきています。本来なら大所高所からものを言える人物が中国側に日本の立場、あるいは歴史解釈を正確に伝えるべきなのです。ここはしばらくふたをしようかとか、この点はもっと突っ込んで議論しようとか、大人の知恵が働かない状況では困ります。
 孔子の言葉に「君子は義に喩(さと)り、小人は利に喩る」とあります。かつて、「日中友好万歳」と繰り返していた友好商社などはどこにいったのでしょう。中国にとっては、所詮こうした人々は、おためごかしに愛きょうよく尻尾(しっぽ)を振るかわいい存在でしかなかったのです。
 お互い、文化も歴史も異なるのですから、意見が異なるのは当然です。こちらの言い分を堂々と開陳しない限り、議論も信頼関係も生まれません。
 先の鳩山由紀夫氏(民主党代表)のように訪中、そして陳謝では、おそらく中国側は三流政治家の評価を下していると思います。
 



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