第2節 変革の10年
(1)組織体制の改善
本財団の組織体制は、1994年の「組織・業務改善計画」により抜本的に見直され、大幅に改善された。
その第一は、理事会の機能の強化である。事業内容の多様化に則し、さらに、将来における環境の変化に適切に対応するため、常務理事制の採用、執行理事会の新設など、トップマネジメントの強化が図られた。
また、常務理事制の導入に伴い、その定数が3名から5名に拡大され、常勤監事の定数も1名から2名となった。
さらに、円滑な業務の遂行を確保するため、会長、理事長および常務理事による執行理事会が毎週開催され、理事会の委任の範囲内における業務執行上の審議が行われるようになった。
第二は、第三者的チェック機能の充実を図るために評議員会が設置されるとともに、監事が増員され、新たに監事会が新設されたことである。
評議員会には、理事および監事の選任を行う権能のほか、事業計画および収支予算、寄附行為の変更、基本財産の処分、法第19条の規定による交付金の運用など、財団の業務運営に関わる重要事項について審議し、必要と認める事項について会長に助言する機能が付与された。
また、監事会は、業務および財務会計の監査の専門的事項を審議する権能を持ち、年間数回にわたり業務運営状況をチェックしている。
旧寄附行為では、会長および理事長は理事会において選任し、理事および監事は会長が選任することとされていた。
しかし、組織・業務改善計画施行後の寄附行為では、理事および監事は評議員会で選任され、他方、評議員は理事会で選任される。また、会長、理事長、常務理事は理事会での互選後、常勤監事は監事会での互選後、それぞれ評議員会の審議を経ることとなった。こうした組織体制の改善により、理事会による公正で適切な業務の執行、評議員会による第三者的立場からの業務執行のチェック、そして、監事会による業務および財務会計の監査と、それぞれの機関が独立した。こうして、相互チェックと相互補完の組織体制が出来上がったことで、公益法人の組織運営の原則に立脚した「公正で分かりやすい業務運営」が確立された。
なお、競艇交付金運用の諮問機関である専門委員会は廃止され、その機能は評議員会に継承されることとなった。
「組織業務改善計画」実施後の新旧機構図
「組織・業務改善計画」の施行に伴い、
1)事業管理体制の確立
2)自立的なチェック機能の強化
3)効率的で発想の豊かな事務局の構築
4)公正で計画的な業務運営の確保
5)社会的な自覚に立脚した広報活動の展開
という観点から、寄附行為をはじめ、組織、経理、文書および業務関係の約20におよぶ規程類が制定または改正された。
旧寄附行為での事務局体制は、事務局長・部長・課長・係長・係から構成されており、事務局長が全体の事務調整を図る職位であった。
しかし、常務理事制が導入されたことに伴い、事務局長職の廃止を含む組織の再編が図られ、担当常務理事・部長・課長による業務執行ラインが確立し、事業・管理の両部門にわたる均衡のとれた組織体制が整備されたのである。
この組織の再編により、企画調査・広報・監査・経理の各部門が充実強化された。
その第一は、総合調整機能の強化である。総務部に企画課を新設し、各部の企画調査担当課または係と連携して事務の総合調整を図ることにより、業務の計画的かつ積極的な展開を目指した。
第二は、広報室の広報部への拡充強化である。広報は財団の重要な業務であることから、清新で節度ある広報活動を展開し、公益法人としての新しいイメージを創出するため、従来の広報課に加えてメディア企画課が新設された。
第三は、監査業務における事業評価制度の導入である。会計監査中心の助成事業の監査を事業の評価まで踏み込むため、事業評価主幹職を新設した。
第四は、契約規程の制定である。従来は経理規程の中で処理されてきた契約業務に関し、契約方法の基準等を明確化するとともに、入札方法や契約手続きの細則を定めた契約関係部分を独立させ、契約規程を制定。同時に、経理部に財務課が新設された。
その後、新生「日本財団」は組織・業務改善計画に則り、一層柔軟で迅速な業務展開を図るようになる。
その背景には「効率的で創造的な業務を育むオフィス環境の構築」と「業務実施方法の改革」があった。
1995年度から約3年間、オフィスのOA化が推進された。
その第一弾として、レコードマネジメント(※1)を導入した。これにより、事務所内の文書量がスリム化され、体系的な文書管理が可能となった。
第二弾は、事務所のリニューアルである。各部門の業務が有機的に連携し、効率的な事務処理が展開できるように事務所を改装し、インフラとして社内LANを構築した。
そして、第三弾として、社内LANを基盤とした「事務の合理化」を推進。総務部企画課に情報統括プロジェクトチームを設置し、データベースの構築、ホームページの運用およびレコードマネジメントの安定的実施を推進した。
こうした一連のオフィスOA化により、事務環境が大幅に改善された。
さらに、1998年度より「業務実施方法の改革」がスタートした。業務改革プロジェクトチームが新たに発足し、財団全体の業務実施方法を棚卸しして、改善できる項目をでき得る限り抽出。その後、助成事業者の利便性の向上とさらなる業務の効率化に向けた改革作業が進められた。その結果、19本の規程類が改廃されるとともに、業務支援システム「システムNIPPON」が構築され、2000年4月から稼動を開始した。
そして、2001年7月、国際的な情報発信機能を備えた公益法人ビルが完成し、事務所を虎ノ門から赤坂に移転。最先端で、かつ快適な事務環境が整い、21世紀に向けた財団活動が緒についた。
※1 レコードマネジメント:オフィス内文書を生産から廃棄までトータルに管理するシステム
事務の合理化を図り、効率的に業務を進める環境を整えた
赤坂に移転した日本財団ビル
日本財団ビルのロビー セミナーやコンサートなど多目的スペースとしても活用
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