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会長 2002/06/05 「東京シティロードレース2002」

曽野会長の合図で6000人がスタート

曽野会長の合図で6000人がスタート

神宮の森から公道に、それも6000人のランナーが出るのは初めてですね。
第1回をさせていただいて、しみじみ思いました。日曜日にお手数かけて、お巡りさんなんか大変ですよね。いろいろ懸念もおありだったようですが、気持ち良く仕事をふやしてやってくださった。
私が一番理解がないんですけど、あのコースは、皆なが一番走りたいところなんですね。スタートが日比谷公園でゴールの国立競技場までの10キロ。東京国際マラソン(男・女)の最後のコースですから。帰りの地下鉄に乗った人が、「ニューヨークだけでなく、やっと東京でもできたよなぁ。やっぱりいいよ、あのコースを走れるのは」と言っていたそうです。

私には出ないセリフね。そういう思いらしいですね。その意味では、車椅子の方、目の不自由な方、いろんな方々に華のある道を走らせてさしあげられて、ほんとうによかった。

車いすが一斉にスタートしました

車いすが一斉にスタートしました

裏方さんはいろいろご苦労が。
大変だったのは、日比谷公園で着ているものを脱いで、ごみ袋に入れて、それをゴールの国立競技場にトラックで運ばなければならなかったこと。トイレも日比谷公園に相当用意したんですね。できたら、来年からはスタートとゴールを一緒にさせていただけたら、と願っています。国立競技場には5万人に耐えられるトイレもあるんです。

それから、ドクターやナースが随分いらした。赤十字のゼッケンを付けて走り、途中にカバンを用意しておき、何かあれば本職に早変わり、何にもなければ一ランナー。こういうのって素敵ですね。今年は臓器移植された方が参加されましたから、障害のある方たちも安心できてよかったでしょうね。

ボランティアが活躍してました。
予想外の収穫の一つは、今年は時間的にあまり余裕がなかったのに、ボランティアの組織がちゃんとできたことです。夫の教え子のおじさまでボランティアの中隊長か、小隊長役になって若い子やおじさん、おばさんを束ねて、みんなでやろうと組織を作ってくださった方もありました。これはシティマラソンだけではなく−東京に何かが起きたとき−そんなことがあっては困るのですが、あの組織は動きますね。

有森裕子さんもボランティアで参加

有森裕子さんもボランティアで参加

10キロ先のゴールを目指して頑張ります!

10キロ先のゴールを目指して頑張ります!

表彰式の最中に最後の車椅子がおつきを従えてゴールしたのは、たくまざる演出。
いい光景でしたね。演出ではないのよ。室内用の車椅子が一台遅れて、途中でいなくなったというので、笹川スポーツ財団の人たちが心配して探しにいったんです。それでおつき付きゴールになった。一番大きな拍手でしたね。あの方、完走できてうれしかったでしょうね。

目の不自由な方と伴奏者が揃ってゴール

目の不自由な方と伴奏者が揃ってゴール

いいシーンが随所に見られました。
私、ピストルを撃ってスターターをやって、車で急いで国立競技場に行ったんです。そして、ちょっと手を洗いにいったら、もう、車椅子がゴールしちゃったんですよ。23分、あきれるぐらいの早さですねえ。

私、ずっとゴールの近くにいたんです。そうしたら、皆ゴリラみたいな顔をしてゴールするではありませんか。それで、ゴールが混むので追い立てられるんですが、カメラを出して記念撮影する人がいっぱいいました。こんなに手応えがあるとは思っていませんでした。

いろんな方が来てくださって、一人一人のドラマを聞いたら大変なものでしょうね。ニューヨークマラソンもそうですが、私はシティロードレースというのは、二つの目的があると思うのです。一つは真剣にタイムを競う、これもかなえてさしあげる。それには、プロでなければ盲人の伴走はできないわけですから、有森裕子さんのような方にも走っていただいて思い出をつくる。もう一つ、記録なんかどうでもよく、楽しく遊びながら走る、この両方をかなえてさしあげたいですね。

曽野会長からメダルが授与された

曽野会長からメダルが授与された

東京の名物行事になりそうですね。
新しい試みというのは、最初必ず問題が起きます。それが決定的マイナスではなく、次に生かせれば意義があると思うんです。今年もゴールした人がたまって、さばききれなくなったり、いろいろ問題がありました。このレースの前身の1年目には、車椅子を表彰台に人の手を借りて上げたんですよ。ご自分で何でもやる方なのにおかしいでしょう。それで、次から表彰台にスロープを付けてもらったんです。これと同じで、だんだん良くしていきたいですね。神宮外苑というのは日本一のコースでしょう。都民の行事として、ボランティアも参加者ももっとふやして、いい行事にしていただきたいと思っているんです。

南アフリカにいらしたそうですね。
ええ、私が個人的にやっているNGOがエイズの末期患者用に2300万円寄付して、修道院の中に10室の病棟を建てたんです。2人部屋でシャワーとトイレ付で、感じのいい病室なんですが、そこの神父さまの話を聞いて胸が痛みました。家族から見捨てられた人を受け入れるのですが、平均2〜3日で亡くなる、退院した人は1人もいない、というんです。

死にゆく人のために最後に安らかな場を提供するのがいいことなのか、無駄なことなのか、何ともいえませんけど。私はこの世で結論が出ていることばかりではない、出ていないことも多いと思っていますので、個人的な小さな組織がお金を出すのはいいかな、と思いました。日本財団はもう少し積極的なことに出したいという気もします。

いろいろ考えるんですが、財団の職員と言うのは深く深く悩み、迷うべきなんですね。迷いつつ行動していくことが、私は誠実なのではないかと、このごろ思いますね。ですから、深く悩み、迷うことが、この財団の生命であり、活力になるという気がします。

今度のマラソンにしても、ゴリラみたいな顔をしてゴールする、何もお金(参加料4000円)を払って苦しい思いをしなくてもとみえますが、苦しみをこえるものがあるからですね。今の世の中の嫌らしい市民の態度は、自分が何もやらないで、安全とか平和とか保障を得ようとしている。そうじゃなくて、すべてのことには対価を払わなくてはいけないことがわかった時に、はじめて人間になる。それを体験する人がふえてくれることを望んでいます。

南アフリカのエイズに罹った子どもたち

南アフリカのエイズに罹った子どもたち

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