日本財団 図書館


中国の大学からの声2006
 図書をご提供いただきました方々はじめ多くの皆さまの温かいご協力に支えられ、1999年のスタートからこれまでに約147万冊の図書を中国の大学に贈ることができました。学生たちは、皆さまから頂いた“図書の海原を自由に泳ぎまわり”ながら、知性と人間性を豊かにし、若い可能性を伸ばしています。今年も各大学の学生はじめ図書館担当者から嬉しい便りが届きました。寄贈図書を実際に活用している方々の“生の声”とともに、心からの感謝の気持ちを皆さまにお伝えできれば幸いです。
 なお、“声”には、日本語の形で届いたものと中国語の形で届いたものがあり、前者は原文を尊重して編集し、後者は原文に忠実に翻訳して編集しました。
 
≪原文が日本語の声≫
※原文を尊重して編集しました。
 
国境を越えて活用される日本の知識
斉斉哈爾(チチハル)大学 外国語学院 日本語科 3年 
 
 日本からの図書をはじめて知ったのは一年前です。日本からいろいろな書籍をいただき誠にありがとうございます。
 私は3年生ですが、それまで日本語の本を原書で読んだことがありませんでした。本棚に並んだ沢山の日本の本に接した時には大変うれしく感じました。日本の皆さん、ありがとうございます。皆さんのお陰でさまざまな本に出会うことができます。
 日本の食文化について私はとても興味があります。贈ってくださった書籍の中から「日本の食風土記」「食べるクスリ」という2冊の本を読みました。とても面白かったです。味噌汁は日本の人にとってなくてはならないものだということがわかりました。本を読んだ後、味噌汁のことがもっと知りたいと思いました。そして、その本の説明どおり、自分で作ったり、飲んだりしてみたいと思いました。また、たくさん料理に関する言葉も覚えました。勉強しながら楽しむことができます。そのほか、日本では地方によって食文化にも違いがあることも知りました。
 今度、寄贈いただいた本は扱っている題材の範囲がとても広く内容も充実しています。いろいろな種類があります。機械学さえあります。それぞれの需要に応じて本を読むことができます。私たちは本当にたくさんの知識をもらっています。日本語の勉強に大変役立つだけでなく、別の分野の勉強の助けにもなります。私は、国際貿易の仕事をするつもりですので、日本の経済を知りたいと思っています。贈っていただいた「基本現代経済学入門」という本を読みました。経済学に対する自信がつきました。
 感謝を込めて心して読みたいと思います。日本からの知識を取り入れて、自分のものにできるのですから、知識は国境を分けることがありません。日本の皆さまに改めてお礼申し上げます。
 
稀少な日本語版図書を通じて「日本」を多角的に理解
斉斉哈爾(チチハル)大学 外国語学院 3年 王文彬
 
 チチハル大学に図書を寄贈していただいて、誠にありがとうございます。私達は日本語版の図書を読む機会が非常に少ないです。それで、日本から寄贈いただいた図書は私達にとても役立ちます。
 寄贈いただいた約7000冊の図書にはいろいろな分野があり、日本の経済、政治、文化、地理、医療、科学、法律などに関する図書が含まれています。お蔭様で、寄贈いただいた図書を通じて、日本社会の状況を理解し、また、日本の社会、文化、経済の発展を研究することができます。心からありがとうございます。
 私の専門は日本語言語文学ですが、日本の経済にも興味を持っています。大学を卒業した後、日本の会社で働くために、日本の経済をできるだけ勉強したいと思います。いろいろな分野の図書を読むことは、就職するにしても大学院に進むにしても、役に立つことであり、このことは他の人にとっても同じです。
 日本は世界二位の経済大国で、第二次世界大戦後に有効な措置を取ったり、欧米の新技術を導入したりしたため、急速に発展しました。こうした経験は学ぶべきです。
 1984年に改革開放して以来、中国は積極的に外国の資金を利用して経済を発展させ、大変な変化が起きています。外国の進んだ経験や教訓を取り入れてからも、独自の道を歩んできました。そのため、中国の経済は近年めざましい発展を遂げたにもかかわらず、まだ発展途上国です。ですから、経済を発展させることは最も大切な任務であります。
 私達は、中国と日本が共に発展することを目指して、一生懸命勉強しなければなりません。
 日本の皆さまのご恩に報いるよう、微力ですが、精一杯努力し、中国と日本の友好のためにできるかぎりのことをするつもりです。
 
現代日本人の日常生活に密着した情報が欲しい
斉斉哈爾(チチハル)大学 外国語学院 日本語科 3年 丁巍巍
 
 我が校は日本からたくさんの本をいただきました。これらの本は、私たちにとっては日本の文化や風俗などを調べるのにとても便利で、我が日本語科の教師と学生は言うに及ばず、学外の利用者からもとても高い評価を得ております。私たちは心からお礼を申し上げます。
 日本語を習う時、日本の風俗とか、日本人の習慣とか、日本についてたくさんのことを知る必要があります。それらを知ってこそ、さらに深く日本の言葉を習得することができます。
 私は、「日本人の着る風俗」という本を読んでから、日本の風俗について深く認識するようになりました。現代の日本人は、日常、ほとんど洋服を着て生活しています。私は、日本人は和服がいやになったと思っていました。でも、「日本人の着る風俗」を読んだ後には、そんなことはないと知っただけでなく、日本人の着物についてもたくさんのことを習いました。日本人は、正装として或いは室内着として現在も和服を愛好しています。なかでも一番豪華なものは、花嫁が着る打掛です。これには、絹の布地に金銀の箔を織り込んだ金糸、銀糸で刺繍を施し、多くの花鳥の図案模様を描いたものが用いられます。男性が着物を着るのは、現代では主としてくつろぎのための室内着に限られますが、正月などに自宅において客をもてなすときなどには、和服を着ることも珍しくないです。
 以上が、この本から習ったことです。この本は、日本語の勉強に有益であり、実用的な価値も高いと思います。
 これらの良質な本を寄贈してくださる日本の皆さまに重ねてお礼を申しあげます。現代の日本人の生活に関する本がもっと多くあればいいと思います。たとえば、日本人の生活の中で頻繁に使われる言葉や現代の日常生活の中の流行語に関する本などです。また、通訳と翻訳についての本や何かの話題についての論文の本や優秀な作文についての本など、よっかたら、私たちもとてもありがたいと思います。これから続いて我が校を支持していただき、私たちはかならず大変嬉しいです。
 
寄贈図書閲覧室は自由に泳げる図書の海原
大連外国語学院 日本語学部 3年 雍佳
 
 大連外国語学院日本語学部の雍佳と申します。友達から図書館の3階には閲覧室があって、中には日本科学協会から寄贈された日本語版の図書が並んでいると教えられたので、すぐそこへ見に行きました。入るや否や、自分が日本の本屋にいるような感じがしました。閲覧室はあまり大きくありませんが、寄贈図書は政治、経済、社会、文化、言語、歴史、科学技術などと広範な分野に亘っています。なぜ、以前、こんなにすばらしい自由に泳ぐことのできる図書の海原のことを知らなかったのだろうと、なんだか遺憾な気持ちがしました。
 本棚から「新国語要覧」という本を取って読んでみたところ、日本語の音声と音韻や文字や語彙や文法などの知識について詳しく説明してくれただけでなく、最新の研究結果も発表してありました。特に、日本国内の各言語学派やそれらを代表する言語学者、そして、代表的な学説なども図表の形にしてあるので、手軽に比較することができます。この閲覧室を通して日本のあらゆる分野の状況、しかも一番新しい情報を手に入れることができ、知識が豊かになりました。日本語専攻の学生は皆これらの本の恩恵を受けていて、論文を書くときも、日本、日本語についての知識クイズ大会に参加する前も、この閲覧室に足を運びます。本当に大変役に立ちました。
 私たち日本語を専攻している学生は、こんなに多くのすばらしい本を提供してくださった日本の皆様に心から感謝いたします。そして、これらの本を利用して、知識をもっともっと吸収して、中日両国の友好関係をより良く深く進めるよう、努力したいと思っております。これからも、より多くより新しい日本語版図書が閲覧できるよりに期待しております。
 
知識の海原を賜わり、ありがとう
南京大学 大学院修士課程 日本言語文化専攻 1年 趙群
 
 魚が水を離れると生きられないと同じように、学生や教師のような学問に携わる人は書籍を奪われると一歩も歩めずという窮地に陥ることがある。書籍は人間が愚かな状態から脱出するための有効な媒体のひとつとして人類の文明向上と歴史発展の面で大きな役割を果たしてきた。
 ところで、今日のような情報化社会に入ると、音声や映像などいろんなマスメディアが次から次へと登場して人々の日常生活を彩り、現代人の生活に未曾有の多彩さをもたらしている。そうすると、知識を伝承するメディアとしての書籍の作用はさぞ弱まってしまうのではないかと疑う人がいるかもしれないが、そうではないとはっきり答えることができる。なぜかというと、知恵のシンボルとしての書籍はただ知識を伝えるのみならず、浮世にとらわれず悠然たる心を以って読書を楽しむ雰囲気をも与えてくれるからである。このことから結果よりも過程の方がより重んじられるべきであるということが分る。
 このように書籍は実生活には欠かせないものなので、知識人だけでなく誰もが本を読むべきであることは言うまでもないだろう。残念なことに、いろいろな原因により自分の読みたい本がなかなか手に入らないことも往々にしてある。私個人の経験からするとそれは遺憾なことであり、実に辛い思いである。私は4年間の大学生活をこの大学で過ごしたが、そのうちの3年間は外のキャンパスで勉強していた。そのキャンパスは静かで自然に恵まれた所だが、語学の勉強にいい環境とはとても言えない所だった。なぜかというと、図書館は大きくて書籍も沢山入っているのに日本語に関する書類がごく少なかったからである。先生に文句を言ったら、「鼓楼のキャンパスには中日文化交流センターが最近設立された。行って見たらどうだ。」と言われて、嬉しくなって先生の意見に従って、次の日にわざわざバスで「中日文化交流センター」に向かった。
 そうした初めての出会いをきっかけに、私たちはそれから頻繁にそこに出入りするようになった。経済、法律、文学、文化、言語、哲学、宗教、歴史、社会学などいろいろな面にわたる日本社会の縮図とも言えるようなその小さい図書室は、われわれ日本語科の学生の知識の源になり始めた。いや、日本語科の学生どころか、歴史学部や社会学部など他の学部の先生や学生もよくそこを利用している。隣の大学の先生までこのセンターに来てよく本を借りるのである。実はこうしたことをこの目で何回も見たことがあり、その人達に会釈した覚えもある。日本へ行って実地調査することができないことであっても、そうしたことについてレポートを書く時や論文を書く時には、そこは皆にとって本当に見逃すことのできない存在となる。このセンターがなければ、これから私たちはどのように勉強を続ければよいか、先生たちはどのように研究を続けるのか全く想像できない。もちろん、学業上での助けだけでなく、私たちの知識構造の形成や視野の広がりなどにも大きく影響を与えた。
 「書籍は知恵への梯子なり」という格言のとおり、書籍がなければ、人類のこれまでの文明史は空白になり、人間の精神状態も空しくなり、人間は人間たる資格すら失うだろう。こうして、人間がどんなに財産に富んでいても精神上では貧しくて可哀相な人間になりかねない。幸い、私たちは貧しい人間ではない。金銭上のお金持ちとは言えないが、私たちは確かに裕福である。私たちはこの中日文化研究センターの書籍の世界では王様なのだから。


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