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平成18年横審第59号
件名

ヨット エバーグリーン乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成18年9月25日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(清水正男)

理事官
西田克史

受審人
A 職名:エバーグリーン船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
左舷前部船底に亀裂

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は,船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年7月30日11時45分
 神奈川県三浦半島長者ケ埼北方
 (北緯35度15.4分 東経139度34.6分)

2 船舶の要目
船種船名 ヨット エバーグリーン
総トン数 10トン
全長 10.29メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 52キロワット

3 事実の経過
 エバーグリーンは,ディープキールを有するFRP製双胴プレジャーヨットで,A受審人が船長としてほか3人と乗り組み,友人9人を乗せ,クルージングの目的で,最大喫水1.4メートルをもって,平成17年7月30日10時20分神奈川県湘南港を発し,同県三浦郡葉山町の葉山御用邸沖合に向かった。
 ところで,A受審人は,葉山御用邸沖合の海域を,2回ないし3回航海した経験があり,長者ケ埼の北方約250メートルのところにヨット仲間で「二本くい」と称する暗岩(以下「暗岩」という。)が存在すること及び暗岩付近に私設のブイが設置されていることを知っており,同月中の前航海において付近を航行した際には,同ブイを確認して暗岩を避航していた。A受審人は,湘南港を出て機走で南下したのち,10時40分同港の南南東方2.3海里の地点で帆走を開始して東行した。
 A受審人は,葉山町小磯ノ鼻の西方930メートルの地点に至ったところで,目的地に近づいたことから再び機走に移り,11時33分葉山灯台から176度(真方位,以下同じ。)1,250メートルの地点で,針路を113度に定め,機関を前進にかけて,3.0ノットの対地速力で,右舷中央よりやや船尾寄りに設置された舵輪の後方に立ち,手動操舵によって進行した。
 定針したときA受審人は,正船首1,110メートルのところに暗岩が存在したが,前航海で確認することができた,暗岩付近に設置されていた私設のブイを認めてから避航すれば大丈夫と思い,同ブイが移動したりしていることも考慮して,使用中のGPSプロッターを活用したり,周囲の陸岸などの地形や顕著な物標を用いるなどして,船位の確認を十分に行うことなく,暗岩に向かって進行していることに気付かなかった。
 エバーグリーンは,A受審人が私設のブイを認めたものの,原針路,原速力で続航し,11時45分葉山灯台から147度1.1海里の地点において,暗岩に乗り揚げ,擦過した。
 当時,天候は曇で風力2の南風が吹き,潮候は上げ潮の末期にあたり,視程は2海里ないし3海里であった。
 乗揚の結果,左舷前部船底に亀裂を生じて浸水し,葉山町長者ケ埼の砂浜に任意座礁し,来援の巡視船及び救助艇によって同町のマリーナに曳航され,のち修理された。

(海難の原因)
 本件乗揚は,神奈川県三浦半島西部長者ケ埼北方において,東行する際,船位の確認が不十分で,同埼北方の暗岩に向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,神奈川県三浦半島西部長者ケ埼北方において,東行する場合,同海域に暗岩があることを知っていたのであるから,暗岩に著しく接近することのないよう,使用中のGPSプロッターを活用したり,周囲の陸岸などの地形や顕著な物標を用いるなどして,船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら,同人は,前航海で確認することができた,暗岩付近に設置されていた私設のブイを認めてから避航すれば大丈夫と思い,船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,暗岩に向かって進行して乗揚を招き,左舷前部船底に亀裂を生じさせ,浸水させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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