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 海難審判庁採決録 >  2006年度(平成18年度) >  乗揚事件一覧 >  事件





平成18年広審第4号
件名

モーターボートふじ丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成18年8月17日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(野村昌志)

副理事官
鎌倉保男

受審人
A 職名:ふじ丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船首船底外板に擦過傷等

原因
針路選定不適切

裁決主文

 本件乗揚は,針路の選定が適切でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年7月17日03時00分
 岡山港外(岡山水道)
 (北緯34度36.1分 東経133度59.5分)

2 船舶の要目
船種船名 モーターボートふじ丸
全長 7.27メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 54キロワット

3 事実の経過
 ふじ丸は,昭和61年11月に進水した,レーダー及びGPSを装備しないFRP製プレジャーモーターボートで,平成13年3月に二級小型船舶操縦士免許を取得したA受審人が1人で乗り組み,同乗者2人を乗せ,釣りの目的で,船首0.45メートル船尾0.90メートルの喫水をもって,同17年7月16日15時30分岡山港の定係地を発し,岡山水道を経由して香川県小豆島地蔵埼東方の釣り場に向かった。
 ところで,岡山水道は,児島半島の北東側から入り込んで岡山港に至る長さ約5海里幅約1海里の海域で,同水道の東部に岡山県小串港が,同港の北側の吉井川河口に同県西大寺港があり,岡山港に入港するには,岡山水道入口にあたる米埼南東方沖合から北西進したのち,小串港内で左転して児島半島の鼻面埼とその北東方のツブシ礁灯標との間を西行し,次いで岡山第3号灯浮標及び同第4号灯浮標などで示された水路を西南西進して岡山港口に至るもので,同水路幅は狭いところで150メートルほどしかなく,両側は水深5メートル以下の浅所で,急激に浅くなっているところもあった。また,岡山港の港口付近の岡山水道北側には高島が存在し,同島周辺には浅所が拡延していた。
 A受審人は,過去数年間,月平均3回の割合で岡山水道を専ら昼間に航行した経験を有し,これらの水路事情を知っていた。
 発航したのちA受審人は,岡山第3号灯浮標と同第4号灯浮標との間の水路を通って岡山水道を通航し,17時10分ごろ小豆島谷尻沖の釣り場に到着して釣りを行い,翌17日00時30分釣りを終えて同釣り場を発し,帰途に就いた。
 02時15分A受審人は,米埼東方1,000メートルばかりの地点の岡山水道入口に至って同水道を北西進し,02時38分半西大寺港九蟠東1号防波堤灯台から189度(真方位,以下同じ。)400メートルの地点で,針路をツブシ礁灯標の灯光を正船首わずかに右舷方に見る273度に定め,機関を回転数毎分1,000にかけ,5.4ノットの対地速力(以下「速力」という。)で,操舵室右舷側の舵輪後方に置かれたいすに腰掛けて手動操舵により進行した。
 02時47分半A受審人は,ツブシ礁灯標から180度30メートルの地点に達したとき,針路を転じることとしたが,少し左転すれば水路に沿うものと思い,水路を示す岡山第4号灯浮標の灯光を操舵目標とするなどして,針路の選定を適切に行わず,左に4度転じて269度の針路としたところ,岡山第4号灯浮標北側の高島南岸至近の浅所に向首したものの,このことに気付かずに続航した。
 こうしてA受審人は,正船首方の海面ばかりに注視し,水路を外れて高島南岸至近の浅所に向首したまま進行中,03時00分わずか前船首方に高島の島影を認めたもののどうすることもできず,03時00分ふじ丸は,ツブシ礁灯標から268度2,080メートルの地点において,高島南岸至近の浅所に乗り揚げた。
 当時,天候は曇で風力2の北東風が吹き,潮候は上げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果,船首船底外板に擦過傷などを生じ,同日引き下ろされ,岡山市内のマリーナに回航されたのち修理された。

(海難の原因)
 本件乗揚は,夜間,岡山水道において,定係地に向けて航行中,針路の選定が不適切で,高島南岸至近の浅所に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,岡山水道において,定係地に向けて航行中,針路を転じる場合,水路を外れると浅所が多く存在していたのであるから,水路を示す灯浮標の灯光を操舵目標とするなどして,針路の選定を適切に行うべき注意義務があった。しかるに同人は,少し左転すれば水路に沿うものと思い,針路の選定を適切に行わなかった職務上の過失により,水路を外れ,高島南岸至近の浅所に向首していることに気付かないまま進行し,同浅所への乗揚を招き,船首船底外板に擦過傷などを生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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