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平成18年神審第39号
件名

モーターボート ライラックII乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成18年7月24日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(横須賀勇一)

副理事官
山本哲也

受審人
A 職名:ライラックII船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船底外板に亀裂,右舷機のプロペラ,シャフト曲損,のち沈没

原因
船位確認不十分

主文

 本件乗揚は,船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成18年1月29日13時20分
 高知県宿毛市姫島北西方の浅礁
 (北緯32度44.6分 東経132度29.2分)

2 船舶の要目
船種船名 モーターボートライラックII
総トン数 4.9トン
全長 10.08メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 410キロワット

3 事実の経過
 ライラックIIは,平成3年7月に進水し,同7年10月に機関を1機増設して2機2軸の船内外機を装備した,最大とう載人員12人のFRP製モーターボートで,同2年4月に一級小型船舶操縦士免許を取得したA受審人が1人で乗り組み,友人1人を乗せ,釣りの目的で,船首0.3メートル船尾0.5メートルの喫水をもって,同18年1月29日09時40分高知県片島港を発し,10時30分ごろ宿毛市沖ノ島南方付近に至って釣りを行ったところ,釣果がなかったので12時00分同市姫島西方沖合に向かった。
 12時20分A受審人は,土佐沖ノ島灯台から301度(真方位,以下同じ。)3.68海里の,姫島南西端から西方沖200メートルの地点に錨泊して釣りを始め,13時00分南東方沖合の空に雨雲を認めたので,海上が荒れる前に帰港することとし,13時10分同地点において,針路をシオ碆に向く036度に定め,機関を微速力前進にかけ機関回転数毎分1,900の3.0ノットの対地速力として発進した。
 ところで,A受審人は,ライラックIIを平成11年に購入して月に約10回姫島周辺で釣りを行い,スキューバダイビングの経験もあったことから,姫島の北端から西方100メートルのところにシオ碆という水上岩及び,同島北端から北西方300メートルのところにはツブラ碆という水上岩が存在し,それらの周囲約50メートルが浅くなっているため同船で接近すると危険であることを知っていた。
 A受審人は,レーダー及びGPSプロッタを操舵室に設備していたが,視界が良かったので操縦席に腰を掛けて,右舷方の姫島やシオ碆までの距離を目測することで位置を確認しながら進行中,13時17分土佐沖ノ島灯台から307度3.67海里の地点に達し,船首方300メートルばかりのところにシオ碆を認めたとき,シオ碆との接近距離を十分に確認しないまま接近すると,シオ碆の周囲に拡延する浅礁に乗り揚げるおそれのある状況であったが,いつものように,シオ碆までの距離を目測すれば大丈夫と思い,レーダーを使用して接近距離を測り,船位の確認を十分に行うことなく,この状況に気付かず続航した。
 A受審人は,シオ碆は認めていたものの,シオ碆の周囲に拡延する浅礁に間近に接近していることに気付かず進行中,13時20分土佐沖ノ島灯台から309度3.67海里の地点において,ライラックIIは,原針路,原速力で,同浅礁に乗り揚げた。
 当時,天候は晴で風はほとんどなく,潮候は上げ潮の初期であった。
 乗揚の結果,ライラックIIは,船底外板に亀裂を生じ,右舷機のプロペラ及びシャフトを曲損し,その後,損傷模様確認のため左舷機だけで沖ノ島の母島漁港に向かう途上,沈没し,A受審人及び同乗者が海に投げ出されたが,近くにいた遊漁船に救助され,のち廃船とされた。

(海難の原因)
 本件乗揚は,高知県姫島北西方のシオ碆に向けて北東進中,船位の確認が不十分で,シオ碆の周囲に拡延する浅礁へ向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,高知県姫島北西方のシオ碆に向けて北東進する場合,シオ碆の周囲に拡延する浅礁に乗り揚げることのないよう,レーダーを使用して接近距離を測り,船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,いつものように,シオ碆までの距離を目測すれば大丈夫と思い,船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,シオ碆の周囲に拡延する浅礁に向首進行して乗揚を招き,船底外板に亀裂を生じ,右舷機のプロペラ及びシャフトを曲損させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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