日本財団 図書館




 海難審判庁採決録 >  2006年度(平成18年度) >  衝突事件一覧 >  事件





平成18年神審第66号
件名

漁船第八双幸丸消波堤衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成18年9月21日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(雲林院信行)

理事官
阿部能正

受審人
A 職名:第八双幸丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士
指定海難関係人
B 職名:第八双幸丸甲板員

損害
船首下部外板,左舷船底に破口を伴う凹傷

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件消波堤衝突は,船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年9月24日19時00分
 富山県入善漁港
 (北緯36度55.6分 東経137度25.8分)

2 船舶の要目
船種船名 漁船第八双幸丸
総トン数 19.17トン
登録長 16.68メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 150

3 事実の経過
 第八双幸丸(以下「双幸丸」という。)は,昭和57年8月に進水した,かごなわ漁業に従事する中央操舵室型FRP製漁船で,平成16年8月交付の小型船舶操縦免許証(一級・特殊)を受有するA受審人及びB指定海難関係人ほか4人が乗り組み,操業の目的で,船首1.1メートル船尾2.0メートルの喫水をもって,平成16年9月22日22時00分富山県魚津港を発し,能登半島北方50海里の白山瀬付近の漁場に向かった。
 翌23日07時ごろA受審人は,目的の漁場に至ってかにかご漁を行い,かに600キログラムを得て,24日03時ごろ同漁場を発し,同日09時30分石川県小木港の東方18海里ばかりの漁場に着いてばいかご漁を行い,ばい貝200キログラムを得た。
 16時30分A受審人は,越中宮崎港西防波堤灯台(以下「西防波堤灯台」という。)から005度(真方位,以下同じ。)17.8海里の地点で,針路を205度に定め,機関を全速力前進にかけ9.0ノットの対地速力とし,自動操舵により帰航の途に着いた。
 A受審人は,船橋当直を甲板員5人で単独2時間と決め,自らもときどき入直することがあった。
 17時10分A受審人は,西防波堤灯台から355度12.5海里の地点に達したとき,食事を終えたB指定海難関係人が昇橋したので交替することとしたが,同指定海難関係人の乗船歴が長いので,船橋当直中の任務を1人で果たせるものと思い,視界が悪くなって船位の確認ができなくなったとき,自ら操船の指揮を執るために,速やかにその旨を報告するよう指示することなく,降橋した。
 18時20分B指定海難関係人は,入善港東防波堤灯台(以下「東防波堤灯台」という。)から019度6.2海里の地点に達したころ,それまで小雨混じりの天候であったものの視界は良く,左舷前方の街明かりが見える状態であったが,突然大雨が降り出し,視界が急速に悪化して,船首マストの灯火がぼんやりと霞んで見える状態となり,
 12マイルレンジのレーダーを見たところ同画面が真っ白になっており,6マイルレンジに切り替えてみたが同じ状態であった。
 B指定海難関係人は,雨による反射を軽減して目標を探知し易くする反射制御(FTC)の調整方法を知らず,ただレンジを切り替えるだけで,また,GPSが設備されていたがその操作方法も分からず,そのうち雨がやむだろうと思い,操舵室の後部で眠っているA受審人に,視界が悪くなって船位の確認ができなくなったことを速やかに知らせることなく,船位の確認が不十分のまま続航した。
 こうして,A受審人は,船位の確認ができない状態であることを知らされないで,自ら船位の確認ができないまま,強い西風により東方に圧流されて進行し,19時00分双幸丸の左舷船首が,原針路原速力のまま,東防波堤灯台から046度330メートルの地点にある入善漁港の消波堤に,前方から30度の角度で衝突した。
 当時,天候は雨で風力4の西風が吹き,視程は20メートル程度で,潮候は上げ潮の初期であった。
 衝突の結果,船首下部外板及び左舷船底に破口を伴う凹傷を生じたが,のち修理された。

(海難の原因)
 本件消波堤衝突は,夜間,大雨のもと富山湾魚津港に向けて南下中,雨による反射のためレーダー画面が真っ白となり,これを調整できず,船位の確認が不十分となり,強い西風に圧流されて入善漁港の消波堤に向け進行したことによって発生したものである。
 運航が適切でなかったのは,船長が,無資格の船橋当直者に対して,視界が悪くなって船位の確認ができなくなったとき,速やかにその旨を知らせるよう指示しなかったことと,船橋当直者が,視界が悪くなって船位の確認ができなくなったことを,速やかに船長に知らせなかったこととによるものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,富山湾魚津港に向けて南下中,無資格の甲板員に船橋当直を任せる場合,視界が悪くなって船位の確認ができなくなったとき,速やかにその旨を知らせるよう指示すべき注意義務があった。しかるに,同人は,B指定海難関係人の乗船歴が長いので,船橋当直中の任務を1人で果たせるものと思い,視界が悪くなって船位の確認ができなくなったとき,速やかにその旨を知らせるよう指示しなかった職務上の過失により,自ら操船の指揮が執れず,船位の確認が不十分となって入善漁港の消波堤に向け進行して衝突し,船首下部外板及び左舷船底に破口を伴う凹傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B指定海難関係人は,夜間,船橋当直に就いて富山湾魚津港に向けて南下中,大雨により視界が悪化し,雨による反射のためレーダー画面が真っ白となり,これを調整できないで,船位の確認が不十分となった場合,速やかにその旨を船長に知らせなかったことは,本件発生の原因となる。
 B指定海難関係人に対しては,勧告しないが,視界が悪くなって船位の確認ができなくなったときには,速やかに船長にその旨を知らせなければならない。


参考図





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION