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平成18年横審第46号
件名

モーターボート浜富丸防波堤衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成18年8月3日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(今泉豊光)

理事官
河野 守

受審人
A 職名:浜富丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船首部に破口を伴う凹損
船長が頭部裂傷等,同乗者3人が大腿部打撲等

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件防波堤衝突は,水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年11月13日23時35分
 愛知県篠島港
 (北緯34度40.9分 東経136度59.9分)

2 船舶の要目
船種船名 モーターボート浜富丸
全長 12.55メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 169キロワット

3 事実の経過
 浜富丸は,昭和55年1月に進水した操舵室を有する,船内機付きFRP製モーターボートで,平成元年4月に一級小型船舶操縦士免許(同15年7月一級及び特殊小型船舶操縦士免許に更新)を取得したA受審人が1人で乗り組み,友人3人を乗せ,船首0.2メートル船尾1.5メートルの喫水をもって,航行中の動力船が掲げる灯火を表示し,平成16年11月13日23時33分愛知県篠島港西部にあるB組合荷捌施設西側の浮桟橋を発し,同県日間賀漁港西浜地区に向け帰途に就いた。
 ところで,篠島港は,三河湾の湾口に位置し,同港への入り口は3箇所あり,そのうちの西側の入り口は,木島北東側にある屈曲した篠島港沖防波堤(長さ636.6メートル,幅4.6メートル,基本水準面上高さ約4.5メートル)と,同島北側にある長さ80メートルの一文字沖防波堤(以下「外沖防波堤」という。)との間(以下「西側入り口」という。)にあたり,篠島港沖防波堤の北東端には篠島港沖防波堤北灯台が,同防波堤の南西端には緑色標識灯(4秒に1閃の緑色光,光達距離4.0キロメートル)が,外沖防波堤の北端には赤色標識灯(4秒に1閃の赤色光,光達距離4.0キロメートル)がそれぞれ設置されていた。
 また,A受審人は,平成元年4月以降1週間に3,4回日間賀漁港と師崎港との間を浜富丸に乗って鮮魚を運搬する業務に当たっており,篠島港の北側の入り口を過去に5回入出航した経験があったが,これまで西側入り口を入出航したことがなかった。
 A受審人は,13日18時15分ころ,友人宅を訪問する用務で篠島港へ向かうため,日間賀漁港西浜地区を発航するに当たり,帰航する際も含めて篠島港の西側入り口を初めて通航するつもりであったが,大体の様子は知っているので同入り口をなんとか通航できるものと思い,プレジャーボート・小型船用港湾案内に当たり西側入り口付近の防波堤の位置を確認するなどの水路調査を十分に行うことなく,18時20分同地区を発して南下し,18時28分篠島港沖防波堤との距離と,その南西端の緑色標識灯の灯火を目標にして西側入り口を通過したのち,浮桟橋に入航していた。
 浮桟橋を発航後,A受審人は,操舵室で立って操縦に当たり,23時34分わずか過ぎ篠島港沖防波堤北灯台から218度(真方位,以下同じ。)530メートルの地点で,機関を微速力前進にかけ,7.5ノットの対地速力とし,西側入り口に向けるつもりで,手動操舵によって小舵角で右転を開始し,23時34分半わずか過ぎ同灯台から222.5度620メートルの地点で,舵を中央として船首が299度を向いて直進を始めたとき,船首方に存在する外沖防波堤に向首する状況となったが,水路調査が不十分で,同防波堤の存在を知らず,このことに気付かなかった。
 A受審人は,外沖防波堤に向首していることにも,右舷船首方の赤色標識灯の灯火にも気付かないまま,浜富丸は,299度の針路及び原速力で進行中,23時35分篠島港沖防波堤北灯台から230度650メートルの地点において,その船首が外沖防波堤東側壁面に60度の角度で衝突した。
  当時,天候は晴で風力2の北西風が吹き,潮候は大潮期の低潮時に当たり,また,月齢は0.4で,月没時刻は17時06分であった。
 衝突の結果,船首部に破口を伴う凹損を生じたが,のち修理され,A受審人が頭部裂傷等を,同乗者3人が大腿部打撲等を負った。

(海難の原因)
 本件防波堤衝突は,夜間,愛知県篠島港において,西側入り口を出航する際,水路調査が不十分で,外沖防波堤に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,愛知県篠島港西側入り口を初めて通航する場合,日間賀漁港を発航前にプレジャーボート・小型船用港湾案内に当たり同入り口付近の防波堤の位置を確認するなどの水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかし,同人は,大体の様子は知っているので同入り口をなんとか通航できるものと思い,水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により,同入り口を出航中,外沖防波堤の存在を知らないまま,同防波堤に向首進行して同防波堤への衝突を招き,船首部に破口を伴う凹損を生じさせ,自身が頭部裂傷等を負い,同乗者3人に大腿部打撲等を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


参考図





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