日本財団 図書館




 海難審判庁採決録 >  2006年度(平成18年度) >  衝突事件一覧 >  事件





平成18年広審第11号
件名

遊漁船島義丸漁船第二進隆丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成18年7月26日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(野村昌志)

理事官
前久保勝己

受審人
A 職名:島義丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士
B 職名:第二進隆丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
島義丸・・・損傷ない
第二進隆丸・・・操舵室が損壊,船長が頭部外傷

原因
島義丸・・・動静監視不十分,横切り船の航法(避航動作)不遵守(主因)
第二進隆丸・・・動静監視不十分,警告信号不履行,横切り船の航法(協力動作)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は,島義丸が,動静監視不十分で,前路を左方に横切る第二進隆丸の進路を避けなかったことによって発生したが,第二進隆丸が,動静監視不十分で,警告信号を行わず,衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年7月29日04時40分
 島根県魚待ノ鼻西方
 (北緯34度45.8分 東経131度51.3分)

2 船舶の要目
船種船名 遊漁船島義丸 漁船第二進隆丸
総トン数 17トン 4.4トン
全長 19.20メートル  
登録長   11.47メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 660キロワット 180キロワット

3 事実の経過
 島義丸は,平成11年10月に進水したFRP製小型兼用船で,昭和52年5月に一級小型船舶操縦士免許を取得したA受審人が1人で乗り組み,釣り客5人を乗せ,船首0.5メートル船尾1.5メートルの喫水をもって,平成17年7月29日04時30分島根県大浜漁港を発し,同港北方沖合約6海里の高島周辺の釣り場に向かった。
 A受審人は,航行中の動力船の掲げる灯火を表示し,操舵室中央に立って操船に当たり,04時37分半魚待鼻灯台から236度(真方位,以下同じ。)650メートルの地点で,針路を高島西端に向く344度に定め,機関を回転数毎分1,800にかけ,16.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で手動操舵により進行した。
 04時39分少し前A受審人は,魚待鼻灯台から287度730メートルの地点に達したとき,右舷船首7度930メートルのところに第二進隆丸(以下「進隆丸」という。)の掲げる白,紅2灯及び同船のレーダー映像を初認したが,一瞥して替わるものと思い,以後視線を船首至近海面に移して漂流物の有無に注意し,進隆丸の動静監視を十分に行わなかったので,その後同船の灯火模様及び方位に変化がなく,進隆丸が前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かず,同船の進路を避けずに続航した。
 こうして島義丸は,進隆丸の進路を避けることなく進行中,04時40分魚待鼻灯台から313度1,200メートルの地点において,原針路原速力で,その船首が進隆丸の左舷中央部に前方から19度の角度で衝突した。
 当時,天候は晴で風力2の南風が吹き,潮候は上げ潮の中央期にあたり,視界は良好で日出時刻は05時20分であった。
 また,進隆丸は,昭和61年7月に進水した,一本つり漁業に従事するFRP製漁船で,昭和63年6月に一級小型船舶操縦士免許を取得したB受審人が1人で乗り組み,いか漁の目的で,船首0.3メートル船尾1.5メートルの喫水をもって,平成17年7月28日16時00分大浜漁港を発し,16時15分魚待ノ鼻北方沖合約1海里の漁場に至り,操業を開始した。
 翌29日03時ごろB受審人は,いか約40キログラムを漁獲したところで漁を終え,船首を南南東へ向けて手仕舞いなどをしたのち,帰途に就くこととし,航行中の動力船の掲げる灯火を表示のうえ,04時35分魚待鼻灯台から338度2,280メートルの地点を発進し,操舵室後方右舷寄りに立って操船に当たり,針路を160度に定め,機関を回転数毎分1,400にかけ,8.5ノットの速力で遠隔操舵により進行した。
 発進するとき,B受審人は,船首方1.6海里のところに大浜漁港から出港した島義丸の掲げる白,緑2灯及びうっすらと同船の船影を初認し,このころ同漁港を出港する船は高島に向かう遊漁船と考え,04時35分半魚待鼻灯台から338度2,150メートルの地点に至り,同船を替わすつもりで,針路を右に転じて183度として続航した。
 04時39分少し前B受審人は,魚待鼻灯台から323度1,420メートルの地点に達したとき,島義丸が左舷船首12度930メートルに接近したが,同船を替わしたものと思い込み,島義丸の動静監視を十分に行わなかったので,その後同船の灯火模様及び方位に変化がなく,島義丸が前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かずに進行した。
 こうしてB受審人は,右舷方の他船の有無に注意して同方ばかり注視し,依然として島義丸と衝突のおそれがある態勢のまま接近していることに気付かず,警告信号を行うことも,衝突を避けるための協力動作をとることもなく続航中,進隆丸は,原針路原速力で,前示のとおり衝突した。
 衝突の結果,島義丸に損傷はなく,進隆丸は,操舵室などに損壊を生じたが,のち修理された。また,B受審人が海中転落して救助されたものの,頭部外傷などを負った。

(海難の原因)
 本件衝突は,夜間,島根県魚待ノ鼻西方沖合において,両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近中,島義丸が,動静監視不十分で,前路を左方に横切る進隆丸の進路を避けなかったことによって発生したが,進隆丸が,動静監視不十分で,警告信号を行わず,衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,島根県魚待ノ鼻西方沖合を北上中,右舷船首方に進隆丸の掲げる白,紅2灯及び同船のレーダー映像を認めた場合,衝突のおそれの有無を判断できるよう,進隆丸の動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,一瞥して替わるものと思い,同船の動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により,進隆丸が衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かず,同船の進路を避けずに進行して衝突を招き,島義丸に損傷はなかったものの,進隆丸の操舵室などを損壊させるとともに,B受審人に頭部外傷などを負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人は,夜間,島根県魚待ノ鼻西方沖合を南下中,船首方に島義丸の掲げる白,緑2灯及び同船の船影を認め,島義丸を替わすつもりで針路を右に転じた場合,その後の衝突のおそれの有無を確認できるよう,同船の動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,島義丸を替わしたものと思い,同船の動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により,島義丸が衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かず,警告信号を行うことも,衝突を避けるための協力動作をとることもなく進行して衝突を招き,進隆丸に前示の損傷を生じさせるとともに,自らも負傷するに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


参考図





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION