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平成18年神審第20号
件名

瀬渡船よし丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成18年6月16日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(清重隆彦)

副理事官
山本哲也

受審人
A 職名:よし丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船首部に擦過傷,推進器軸曲損
釣客3人が負傷

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は,船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成18年1月4日04時40分
 和歌山県樫野埼東側沿岸部
 (北緯33度28.1分 東経135度51.7分)

2 船舶の要目
船種船名 瀬渡船よし丸
総トン数 8.17トン
登録長 11.69メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 308キロワット

3 事実の経過
 よし丸は,限定近海区域を航行区域とする最大搭載人員27人の,GPSプロッター及び魚群探知機を備えたFRP製小型兼用船で,昭和54年3月に一級小型船舶操縦士免許を取得したA受審人が単独で乗り組み,釣客12人を乗せて瀬渡しの目的で,船首0.5メートル船尾1.0メートルの喫水をもって,平成18年1月4日04時30分和歌山県樫野漁港を発し,樫野埼南西方2,000メートルばかりのところの臼島に向かった。
 ところで,A受審人は,地元の定置網漁業に従事する漁船に,17年間ばかり甲板員として乗船したのち,平成17年6月によし丸を購入して瀬渡し業を行っていたので,付近の水路状況は十分に承知していて,樫野埼南方400メートルばかりの舟ゴラ礁付近に洗岩や暗岩が散在していることを知っていた。
 発航後,A受審人は,舵と機関とを適宜使用して東方に向かい,いつもより少し早めの転針となるものの,小角度で速力を落として右転すれば鷹巣鼻の航過距離を十分にとれるものと思い,右舵5度をとって右転し,04時37分半樫野埼灯台から070度(真方位,以下同じ。)370メートルの地点で,針路を209度に定め,7.0ノットの対地速力で進行したが,灯台の明かりに照らし出された同鼻の航過距離を目測するなどして船位の確認を十分に行うことなく,舵輪の後方に立って手動操舵で進行した。
 A受審人は,定めた針路が舟ゴラ礁北東方の洗岩に向首したことに気付かないまま,同じ針路及び速力で続航中,よし丸は,04時40分樫野埼灯台から170度360メートルの地点に乗り揚げた。
 当時,天候は晴で風はほとんどなく,潮候は上げ潮の初期であった。
 乗揚の結果,船首部に擦過傷及び推進器軸曲損などを生じたが,のちいずれも修理された。また,釣客3人が鼻骨骨折,左前腕打撲傷及び両膝打撲傷等をそれぞれ負った。

(海難の原因)
 本件乗揚は,夜間,樫野埼東側沿岸部を航行する際,船位の確認が不十分で,同沿岸部の洗岩に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,樫野埼東側沿岸部を航行する場合,付近には洗岩などが散在することを知っていたのであるから,それらの洗岩に向首進行することのないよう,灯台の明かりに照らし出された鷹巣鼻の航過距離を目測するなどして船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,航過距離を十分にとれているものと思い,定針後,船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,洗岩に向首していることに気付かず進行して乗揚を招き,船首部に擦過傷を,推進器軸に曲損などをそれぞれ生じさせ,釣客3人に鼻骨骨折,左前腕打撲傷及び両膝打撲傷等をそれぞれ負わせるに至らしめた。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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