日本財団 図書館




 海難審判庁採決録 >  2006年度(平成18年度) >  乗揚事件一覧 >  事件





平成18年那審第3号
件名

作業船ザマミ21世紀乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成18年5月31日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(平野研一)

副理事官
入船のぞみ

受審人
A 職名:ザマミ21世紀船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
舵板が脱落,プロペラ軸及びプロペラ翼に曲損

原因
見張り不十分

裁決主文

 本件乗揚は,見張りが十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年11月27日18時00分
 沖縄県瀬長島北西方沖合
 (北緯26度11.3分 東経127度37.2分)

2 船舶の要目
船種船名 作業船ザマミ21世紀
全長 11.96メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 264キロワット

3 事実の経過
 ザマミ21世紀(以下「ザ号」という。)は,船体中央の船尾寄りに操舵室を設けたFRP製作業船で,昭和51年7月に四級小型船舶操縦士免許(平成16年7月二級小型船舶操縦士・特殊小型船舶操縦士免許に更新)を取得したA受審人が,1人で乗り組み,作業員5人を同乗させ,工事用資材運搬の目的で,船首0.4メートル船尾1.2メートルの喫水をもって,平成17年11月27日07時30分沖縄県那覇港浦添ふ頭小船溜を発して同県阿嘉漁港に向かい,同漁港で資材を揚げ終えたのち,16時45分阿嘉漁港を発し,帰航の途に就いた。A受審人は,平素阿嘉漁港から那覇港に向かう際は,渡嘉敷島西岸を北上したのち,黒島北方沖合及び慶伊瀬島南方沖合を経由して那覇港に向かうこととしており,渡嘉敷島西岸を南下し,同島の阿波連埼南方沖合を経て帰航したことはなかった。一方,同人は,これまでに慶伊瀬島周辺や那覇国際空港及び瀬長島西方沖合を海図を所持しないで幾度となく往来した経験を有し,同島北西方沖合に裾礁域が大きく拡延していることを知っていた。
 ところで,ザ号は,操舵室にGPSプロッター及び磁気コンパスを備えていたが,同プロッターは作動が不良で,表示がときどき消えることから,航海計器による船位の確認が困難な状態であった。
 A受審人は,阿嘉漁港を発したのち,前部及び後部甲板それぞれに作業員2人を,船員室に同員1人を座らせ,北東風がやや強かったので,渡嘉敷島西岸を南下して阿波連埼南方沖合を経由することとし,同埼に至ったとき,波が高かったことから,那覇港外に向けて北上することを断念して減速し,GPSプロッターの電源を入れ,瀬長島西方沖合に向けて東行した。
 17時31分A受審人は,琉球大瀬灯標(以下「大瀬灯標」という。)から252度(真方位,以下同じ。)7.7海里の地点で,針路を083度に定め,機関を半速力前進として16.3ノットの速力(対地速力,以下同じ。)で,右舷船尾方から西日を受けながら,手動操舵により進行した。
 日没後の17時47分A受審人は,大瀬灯標から239度3.5海里の地点に至り,左舷船首方に那覇国際空港を,正船首方に瀬長島をそれぞれ認め,17時56分わずか前同灯標から200度1.6海里の地点に達したとき,那覇港西方沖合に向けるため,針路を左に転じて同空港の西方沖合に向く038度とし,波がやや収まったので,機関を全速力前進の19.0ノットの速力に上げて続航した。
 17時58分半わずか前A受審人は,大瀬灯標から183度1,610メートルの地点に達し,瀬長島北西方沖合に拡延する裾礁域外縁まで1,000メートルとなって同外縁で生じる砕け波を視認できる状況となったものの,右舷方に望む空港施設及び離着陸する航空機に気をとられ,前路の見張りを十分に行わなかったので,これを見落とし,同外縁に向首していることに気付かなかった。
 こうして,17時59分半わずか過ぎA受審人は,裾礁域外縁まで200メートルとなったが,依然として前路の見張りを十分に行わなかったので,このことに気付かないまま進行中,18時00分ザ号は,大瀬灯標から147度980メートルの地点において,原針路,原速力のまま,裾礁域外縁に乗り揚げた。
 当時,天候は晴で風力4の北北東風が吹き,潮侯は下げ潮の初期で,日没時刻は17時37分であった。
 乗揚の結果,舵板が脱落し,プロペラ軸及び同翼に曲損を生じたが,のち修理された。また,A受審人は,携帯電話で海上保安庁に救助を要請し,来援した巡視艇に同乗者とともに救助された。

(海難の原因)
 本件乗揚は,日没後の薄明時,沖縄県瀬長島西方沖合において,那覇港に帰航するため北上する際,見張りが不十分で,同島北西方沖合の裾礁域外縁に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,日没後の薄明時,沖縄県瀬長島西方沖合において,那覇港に帰航するため北上する場合,同島北西方沖合には裾礁域が大きく拡延していることを知っていたのであるから,裾礁域外縁で生じる砕け波を見落とさないよう,前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。ところが,同人は,右舷方に望む空港施設及び離着陸する航空機に気をとられ,前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により,裾礁域外縁に向首進行して乗揚を招き,ザ号の舵板を脱落させ,プロペラ軸及び同翼に曲損をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION