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 海難審判庁採決録 >  2006年度(平成18年度) >  乗揚事件一覧 >  事件





平成17年横審第123号(第1)
平成17年横審第124号(第2)
件名

(第1)漁船第八全功丸乗揚事件
(第2)漁船第八全功丸沈没事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成18年5月31日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(清水正男,古川隆一,今泉豊光)

理事官
熊谷孝徳

(第1)
受審人

A 職名:第八全功丸船長 海技免許:四級海技士(航海)
(第2)
受審人

A 職名:第八全功丸船長 海技免許:四級海技士(航海)
B 職名:第八全功丸機関長 海技免許:四級海技士(機関)(機関限定)

(第1)
損害

船底に破口,機関室浸水

原因
船位確認不十分

(第2)
損害

全損

原因
機関室損傷状況の調査不十分

主文

(第1)
 本件乗揚は,船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aの四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。

(第2)

 本件沈没は,機関室の損傷状況の調査が不十分で,同室船底に生じた破口から多量の海水が浸入し,浮力を喪失したことによって発生したものである。
 受審人Aの四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
 受審人Bの四級海技士(機関)の業務を1箇月停止する。
 
理由

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
(第1)
 平成17年5月5日00時20分(マーシャル諸島共和国標準時)
 マーシャル諸島共和国マジュロ環礁北西端
 (北緯7度12.0分 東経171度02.9分)
(第2)
 平成17年5月5日12時30分(マーシャル諸島共和国標準時)
 マーシャル諸島共和国マジュロ環礁北西方沖合
 (北緯7度17.0分 東経170度57.0分)

2 船舶の要目等
(1)要目
船種船名 漁船第八全功丸
総トン数 147トン
全長 34.90メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 400
(2)設備及び性能等
 第八全功丸(以下「全功丸」という。)は,昭和59年6月に那智勝浦町で進水した船首楼及び長船尾楼付二層甲板型の鋼製まぐろ延縄漁船で,長船尾楼の同楼甲板上には前部から順に操舵室,無線室,船長室及び船員室があり,同楼の上甲板には前部から順に冷凍室,船員室,調理室及び食堂が配置され,上甲板の下方には前部から順にフォアピークタンク,第1魚倉,第2魚倉,第3魚倉,機関室,第4燃料油タンク及び第5同タンクがあり,第1及び第2両魚倉の下に二重底の第1及び第2燃料油タンクが配置されていた。
 機関室は,単底構造で上下段からなり,上段左舷側に監視室を設け,同右舷側に空調機,下段船尾側船底部に主機を据え,主機の左右側面部が第3燃料油タンクとなり,船底部からの高さが約1.2メートルのタンクトッププレート上に発電機などを据え,主機の船尾側から船尾管前に至る船底部がビルジだまりとなっており,同ビルジだまりにはタンクトッププレートからわずか下方の位置に取り外し可能な床プレートが設置されていた。また,毎時21立方メートルの排水能力を有するビルジポンプ,雑用水ポンプ及び主機電動冷却清水ポンプが備えられていた。

3 事実の経過
(第1)
 全功丸は,A受審人及び機関長ほか2人の日本人船員が乗り組み,操業に備えての補給等の目的で,平成17年1月15日09時00分静岡県清水港を出港し,同月28日09時00分(マーシャル諸島共和国標準時,以下同じ。)マーシャル諸島共和国マジュロ港に寄港し,フィリピン人船員10人を乗り組ませ,燃料油を補給したのち,翌29日08時00分同港を出港し,越えて2月1日04時00分北緯5度30分東経178度30分付近の漁場に至り,操業を開始した。
 A受審人は,再びマジュロ港で補油することとなり,めばちまぐろなど79トンを獲て75回目の操業を終え,船首2.2メートル船尾3.0メートルの喫水をもって,5月2日05時00分同港の西北西方約500海里の北緯8度50分東経163度00分の漁場を発進し,マジュロ港に向かった。
 ところで,マジュロ港は,東西に扁平なマジュロ環礁の礁湖の東部に位置し,同礁湖への主入り口となるカラリン水路が同環礁の北側礁脈のほぼ中央部に位置し,同水路入り口の西北西方約7海里に同環礁北西端となるジャロクラブ島があり,同島から南南西方に延びた約5海里の礁脈上に島があって同環礁の南西端を形成しており,また,ジャロクラブ島の南西方0.3海里にアジョクウォラ島があって,A受審人は,島々の存在を知っていた。
 A受審人は,旧版の日本版海図のみを使用しており,マジュロ港に何度も寄港していて,その際には日本測地系のGPSプロッターに入力したカラリン水路北方の定点を目標としてマジュロ環礁の北西方向から同水路に接近しており,同定点の緯度がマジュロ環礁の北西端の緯度よりも南であることを知らずに,漁場からマジュロ港に向けて同環礁の西方から初めて接近することにしたものであった。
 A受審人は,日本人1人フィリピン人6人の計7人の甲板員を単独2時間ずつの船橋当直に当たらせ,転針や船位測定などを自らが行っており,当直者に対して船を見かけたとき及び機関室の警報が鳴ったときのみ報告するよう指示を与えていたものの,航海計器や操舵装置に触れることも,レーダーを併用した見張りも行わせていなかった。
 翌々4日01時33分A受審人は,北緯7度11分東経168度50分の地点において,針路をGPSプロッターに入力したカラリン水路北方の定点に向く090度(真方位,以下同じ。)に定めて自動操舵とし,機関を全速力前進にかけ8.5ノットの速力(対地速力,以下同じ。)で,風及び海潮流の影響を受けてわずかに左方に圧流されながら,甲板員を船橋当直に当たらせて進行した。
 07時00分A受審人は,北緯7度11.0分東経169度30.6分の地点で昇橋し,船橋当直中の甲板員を船体洗浄作業に加わらせて船橋当直に当たり,マジュロ港の到着予定時刻を調節するため速力を5.0ノットに減じ,12時00分再び甲板員に同当直に当たらせることとしたが,マジュロ環礁の島の明かりを認めたときは,直ちに報告するよう指示しないまま,船長室に退いた。
 23時20分A受審人は,マジュロ環礁西岸まで5.0海里となった北緯7度12分東経170度58分の地点で,小用のために起きて周囲を見たところ,右舷前方にマジュロ環礁南西端の島の明かりを初めて認め,同環礁に近づいたことを知ったが,同明かりを同環礁北西端のジャロクラブ島の明かりと誤認し,同環礁の北方を安全に航過できるものと思い,操舵室に赴きレーダーを起動して環礁の島々の映像を注意深く観察し,GPS表示船位を海図に記入するなど船位の確認を十分に行うことなく,マジュロ環礁北西端に向首進行していることに気付かないまま続航し,船長室に戻って就寝した。
 こうして,翌5日00時18分A受審人は,マジュロ環礁の島影を目視した船橋当直中のフィリピン人甲板員から同環礁に接近している旨の報告を受け,直ちに操舵室に赴いたが,島影を認めることができず危険を感じて機関を停止しようとしたとき,00時20分マジュロ環礁エロジ島灯台から288度7.5海里の地点において,全功丸は,原針路,原速力のまま,同環礁の北西端に乗り揚げた。
 当時,天候は曇で風はほとんどなく,視界は良好で,潮候は上げ潮の初期であった。
 乗揚の結果,船底に破口を生じ,機関室が浸水した。

(第2)
 A受審人は,衝撃で乗り揚げたことに気付き,直ちに機関を停止し,探照灯と懐中電灯で周囲を照らしたところ,前方にマジュロ環礁の島と船尾後方の水面下に環礁の外縁を認め,同外縁にほぼ直角に乗り揚げていることを知り,海面に油が浮いているように見えなかったことから,船底タンク等の測深を行わず,B受審人に機関室の点検を命じた。
 一方,B受審人は,4人のフィリピン人機関員を2時間ないし3時間ずつ単独の機関当直に当たらせ,毎日,空調機に生じるおびただしい量の結露がビルジだまりにたまっていたため,自らが機関室に入る機会に,ビルジだまり床プレート間の縦約30センチメートル横約20センチメートルの大きさの隙間を通してビルジだまりを点検し,ほぼ1日に1回の割合でドラム缶1本ないし2本分のビルジを排出しており,5月4日夕方にビルジを排出したのち,機関員を夜間の機関室当直に当たらせて自室で就寝していたところ,翌5日00時20分衝撃で目覚め,乗り揚げたことを知った。
 B受審人は,A受審人から機関室の点検を命ぜられ,機関室当直者が甲板に出ていたことから,00時27分ごろ1人で同室に行き,いつものようにビルジだまりを懐中電灯で照らし,前日の夕方に比べてビルジの量が増えているのを認めたが,空調機の結露で機関室船底には損傷がないものと思い,船底にたまったビルジを排出し,床プレートを外して損傷及び浸水の有無を確認し,同室に当直員を配置するなど機関室損傷状況の調査を十分に行うことなく,同室船底に生じた破口から海水が浸入していることに気付かず,同室を無人としたまま操舵室に赴き,A受審人に機関室に異常がないと思われる旨を報告した。
 A受審人は,B受審人から機関室の状況について報告を受けたものの,同室に異常がないものと思われる旨の報告であったこと及び付近の海面に油が浮いているように見えなかったことから,同室船底には損傷がないものと思い,同室のビルジ量,損傷状況の調査方法等について確認し,ビルジを排出させて再度入念な点検をさせるなど機関室損傷状況の調査をするよう指示を十分に行わず,同室船底に生じた破口から海水が浸入していることに気付かないまま,B受審人を操舵室における機関の遠隔操縦に就かせ,00時30分機関を全速力後進にかけて離礁を試みた。
 01時30分A受審人は,離礁して一旦漂泊し,再び周囲を懐中電灯で照らして海面に油が浮いているように見えないことのみを確認したのち発進して北上を始め,一方,B受審人は,機関室のビルジ量を確認するなど同室損傷状況の調査を十分に行わなかった。
 02時30分A受審人は,マジュロ環礁の北西方8.0海里付近に至り,マジュロ港入港時刻の時間調整のために主機を停止して漂泊を開始し,機関室に浸入した海水の水位がビルジだまりの床プレートを越え,補機が冠水するほどであったものの,このことにも気付かないまま漂泊を続け,02時40分補機が海水に浸かって止まり,ようやく機関室が浸水していることを知ったが,排水の手段がなかった。
 03時20分A受審人は,遭難信号を発して救命筏を降下し,09時00分船尾の沈下が激しくなったため乗組員と一緒に離船して救命筏に乗り移り,12時20分通りがかった中国籍船に全員救助され,12時30分北緯7度17.0分東経170度57.0分の地点において,全功丸は,多量の海水が浸入し,浮力を喪失して船尾側から沈没した。
 当時,天候は曇で風はほとんどなく,海上は穏やかであった。
 沈没の結果,全損となった。

(本件発生に至る事由)
(第1)
1 マジュロ環礁について旧版の日本版海図のみを使用していたこと
2 GPSプロッターに入力したカラリン水路北方の定点の緯度がマジュロ環礁北西端の緯度よりも南であることを知らずに,同定点を目標としたこと
3 甲板員に船橋当直を行わせるに当たり,マジュロ環礁の島の明かりを認めたときは,直ちに報告するよう指示しなかったこと
4 夜間,レーダーを併用した見張を行わせていなかったこと
5 マジュロ環礁南西端の島の明かりを初めて認めた際,同明かりを同環礁北西端のジャロクラブ島の明かりと誤認し,同環礁の北方を安全に航過できるものと思い,船位の確認を十分に行わなかったこと

(第2)
1 A受審人が,乗り揚げたことを知った際,船底タンク等の測深を行わなかったこと
2 B受審人が,機関室のビルジの量が増えていることを認めた際,空調機の結露で機関室船底には損傷がないものと思い,船底にたまったビルジを排出し,床プレートを外して損傷及び浸水の有無を確認しなかったこと
3 B受審人が,機関室に当直員を配置しなかったこと
4 A受審人が,機関室の状況について報告を受けた際,同室に異常がないものと思われる旨の報告であったこと及び付近の海面に油が浮いているように見えなかったことから,同室船底には損傷がないものと思い,同室のビルジ量,損傷状況の調査方法等について確認し,ビルジを排出させて再度入念な点検をさせるなど機関室損傷状況の調査をするよう指示を十分に行わなかったこと
5 B受審人が離礁後,機関室のビルジ量を確認するなど同室損傷状況の調査を十分に行わなかったこと

(原因の考察)
(第1)
 本件は,船位の確認が十分に行われていれば,発生を回避できたものと認められる。
 したがって,夜間,A受審人がマジュロ環礁南西端の島の明かりを初めて認めた際,同明かりを同環礁北西端のジャロクラブ島の明かりと誤認し,同環礁の北方を安全に航過できるものと思い,船位の確認を十分に行わなかったことは,本件発生の原因となる。
 マジュロ環礁について旧版の日本版海図のみを使用していたことは,本件発生に至る過程で関与した事実であるが,本件と相当な因果関係があるとは認められない。しかしながら,これは,海難防止の観点から是正されるべき事項である。
 夜間,レーダーを併用した見張りを行わせていなかったことは,本件発生に至る過程で関与した事実であるが,本件と相当な因果関係があるとは認められない。しかしながら,これは,海難防止の観点から是正されるべき事項である。
 甲板員に船橋当直を行わせるに当たり,マジュロ環礁の島の明かりを認めときは,直ちに報告するよう指示しなかったことは,本件発生に至る過程で関与した事実であるが,A受審人自らが同明かりを認めていたことから,本件と相当な因果関係があるとは認められない。しかしながら,これは,海難防止の観点から是正されるべき事項である。
 GPSプロッターに入力したカラリン水路北方の定点の緯度がマジュロ環礁北西端の緯度よりも南であることを知らずに,同定点を目標としたことは,本件発生に至る過程で関与した事実であるが,船位の確認が十分に行われていれば,発生を回避できたと認められることから,本件と相当な因果関係があるとは認められない。

(第2)
 本件は,環礁に乗り揚げた際,機関室損傷状況の調査が十分に行われていれば,同室船底に生じた破口から海水が浸水していることに気付いて,発生を回避できたものと認められる。
 したがって,B受審人が,機関室のビルジが増えているのを認めた際,空調機の結露で同室船底には損傷がないものと思い,機関室損傷状況の調査を十分に行わなかったことは,本件発生の原因となる。
 A受審人が,B受審人から機関室の状況について報告を受けた際,同室に異常がないものと思われる旨の報告であったこと及び付近の海面に油が浮いているように見えなかったことから,同室船底には損傷がないものと思い,機関室損傷状況の調査をするよう指示を十分に行わなかったことは,本件発生の原因となる。
 A受審人が,乗り揚げたことを知った際,船底タンク等の測深を行わなかったことは,本件発生に至る過程で関与した事実であるが,本件と相当な因果関係があるとは認められない。しかしながら,これは,海難防止の観点から是正されるべき事項である。
 B受審人が,離礁後,機関室のビルジ量を確認するなど同室損傷状況の調査を十分に行わなかったことは,本件発生に至る過程で関与した事実であるが,乗揚を認めた際,機関室損傷状況の調査が十分に行われていれば,発生を回避できたものと認められることから,本件と相当な因果関係があるとは認められない。しかしながら,これは,海難防止の観点から是正されるべき事項である。

(海難の原因)
(第1)
 本件乗揚は,マーシャル諸島共和国マジュロ環礁西方沖合において,漁場からマジュロ港に向けて東行中,同環礁の島の明かりを初めて認めた際,船位の確認が不十分で,同環礁北西端に向首進行したことによって発生したものである。

(第2)
 本件沈没は,マーシャル諸島共和国マジュロ環礁において,同環礁北西端に乗り揚げた際,機関室損傷状況の調査が不十分で,離礁したのち入港時刻の時間調整のために同環礁北西方沖合で漂泊中,同室船底に生じた破口から海水が浸入して補機が海水に浸かって止まり,多量の海水が浸入し,浮力を喪失したことによって発生したものである。
 運航が適切でなかったのは,船長が,機関長から機関室の状況について報告を受けた際,機関長に対して同室損傷状況の調査をするよう指示を十分に行わなかったことと,機関長が,同室損傷状況の調査を十分に行わなかったこととによるものである。

(受審人の所為)
(第1)
 A受審人は,夜間,マーシャル諸島共和国マジュロ環礁西方沖合において,漁場からマジュロ港に向けて東行中,同環礁の島の明かりを初めて認めた場合,操舵室に赴きレーダーを起動して環礁の島々の映像を注意深く観察し,GPS表示船位を海図に記入するなど船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,認めた明かりを同環礁北西端のジャロクラブ島の明かりと誤認し,同環礁の北方を安全に航過できるものと思い,船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,マジュロ環礁北西端に向首進行して乗揚を招き,船底に破口を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第2号を適用して同人の四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。

(第2)
 A受審人は,マーシャル諸島共和国マジュロ環礁において,乗り揚げ後の機関室の状況について報告を受けた場合,機関室のビルジ量,損傷状況の調査方法等について確認し,ビルジを排出させて再度入念な点検をさせるなど機関室損傷状況の調査をするよう指示を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,機関室に異常がないものと思われる旨の報告であったこと及び付近の海面に油が浮いているように見えなかったことから,同室船底には損傷がないものと思い,機関室損傷状況の調査をするよう指示を十分に行わなかった職務上の過失により,同室船底に生じた破口から海水が浸入していることに気付かず,離礁したのち入港時刻の時間調整のために漂泊中,補機が海水に浸かって止まり,多量の海水が浸入し,浮力を喪失して沈没を招き,全損となるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第2号を適用して同人の四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
 B受審人は,マーシャル諸島共和国マジュロ環礁において,乗揚後,機関室のビルジの量が増えているのを認めた場合,同室船底に損傷を生じているおそれがあったから,船底にたまったビルジを排出し,床プレートを外して損傷及び浸水の有無を確認し,同室に当直員を配置するなど機関室損傷状況の調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,空調機の結露で機関室船底には損傷がないものと思い,同室損傷状況の調査を十分に行わなかった職務上の過失により,同室船底に生じた破口から海水が浸入していることに気付かず,離礁したのち入港時刻の時間調整のために漂泊中,補機が海水に浸かって止まり,多量の海水が浸入し,浮力を喪失して沈没を招き,全損となるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第2号を適用して同人の四級海技士(機関)の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。





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