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平成18年函審第13号
件名

漁船第五十一大勝丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成18年5月25日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(西山烝一)

副理事官
福島正人

受審人
A 職名:第五十一大勝丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
左舷側船底外板に亀裂を生じて転覆

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は,船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年11月14日05時20分
 北海道厚内漁港
 (北緯42度47.8分 東経143度49.5分)

2 船舶の要目
船種船名 漁船第五十一大勝丸
総トン数 4.9トン
登録長 11.78メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 90

3 事実の経過
 第五十一大勝丸(以下「大勝丸」という。)は,ほぼ船体中央部に操舵室を備えたFRP製漁船で,A受審人(平成元年9月一級小型船舶操縦士免許取得)ほか3人が乗り組み,ししゃも桁網漁の目的で,船首0.7メートル船尾1.5メートルの喫水をもって,平成17年11月14日05時00分北海道厚内漁港を発し,同漁港近辺の漁場に向かった。
 ところで,厚内漁港は,船溜まり東護岸に接続する東防波堤が南東方向に延び,それの西方に長さ936メートルの西防波堤があり,東防波堤南東端沖合には,厚内漁港原点(北緯42度48.45分東経143度49.07分)(以下「原点」という。)から141度(真方位,以下同じ。)1,120メートルの地点を基点とし,201度方向に外防波堤が建設中で,長さ300メートルまで築造されていた。そして,外防波堤の北端及び南端付近には,工事中のため,緑灯及び紅灯の灯浮標が設置されていたが,電源が消耗していつしか消灯していた。
 A受審人は,厚内漁港周辺で数限りなく操業していたので,外防波堤の位置及び形状,そのほか前示灯浮標が消灯していることについても知っていた。
 A受審人は,レーダー1台を0.5海里レンジで作動させ,東防波堤南東端と外防波堤北端との間を通過したあと,北西進後,右回りに東,南,西方へと進路を変えながら魚群探索を行い,05時18分原点から160度1,470メートルの地点に至ったとき,同探索を終了し,外防波堤北東方沖合の操業予定地点に向かうこととしたが,近くまで接近すれば外防波堤を視認できるので,そのとき同地点に針路を向ければよいと思い,同防波堤に著しく接近しないよう,レーダーにより同防波堤との距離を測定するなど,船位の確認を十分に行うことなく,針路を022度に定め,機関を回転数毎分800にかけ,4.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
 こうして,A受審人は,日出前で周囲が暗かったことから,外防波堤に著しく接近していることに気付かないまま続航し,大勝丸は,05時20分原点から152度1,300メートルの同防波堤南端の消波ブロックに,原針路,原速力のまま乗り揚げた。
 当時,天候は晴で風はほとんどなく,潮候は下げ潮の中央期で,日出時刻は06時14分であった。
 乗揚の結果,大勝丸は,左舷側船底外板に亀裂を生じて転覆し,その後厚内漁港に曳航され,乗組員全員は外防波堤に無事避難した。

(海難の原因)
 本件乗揚は,夜間,北海道厚内漁港南東方沖合において,操業予定地点に向かう際,船位の確認が不十分で,外防波堤に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,北海道厚内漁港南東方沖合において,魚群探索を終えて操業予定地点に向かう場合,日出前で周囲が暗かったのであるから,外防波堤に著しく接近しないよう,レーダーにより同防波堤との距離を測定するなど,船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかし,同受審人は,近くまで接近すれば外防波堤を視認できるので,そのとき操業予定地点に針路を向ければよいと思い,船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,同防波堤に著しく接近していることに気付かないまま進行して同防波堤南端に乗り揚げる事態を招き,左舷側船底外板に損傷を生じて転覆させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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