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平成17年広審第149号
件名

漁船長福丸モーターボート雄二衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成18年6月29日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(橋本 學)

理事官
竹内伸二

受審人
A 職名:長福丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士
B 職名:雄二船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
長福丸・・・船首部喫水線付近に亀裂,船長が頭部を打撲により負傷
雄二・・・右舷船尾部を圧壊,船長及び同乗者3人が,それぞれ腕,肩,膝などを打撲により負傷

原因
長福丸・・・見張り不十分,船員の常務(避航動作)不遵守

裁決主文

 本件衝突は,長福丸が,見張り不十分で,正船首方で漂泊している雄二を避けなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年5月29日09時00分
 岡山県六口島南西方
 (北緯34度25.1分 東経133度45.9分)

2 船舶の要目
船種船名 漁船長福丸 モーターボート雄二
総トン数 1.4トン  
全長   7.41メートル
登録長 7.95メートル  
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力   54キロワット
漁船法馬力数 45  

3 事実の経過
 長福丸は,平成元年3月に進水した,舵柄で舵をとる和船型のFRP製漁船で,平成16年2月に交付された一級小型船舶操縦士免許を有するA受審人が1人で乗り組み,一本釣り漁業に従事する目的で,船首0.1メートル船尾0.4メートルの喫水をもって,同17年5月29日05時10分岡山県下津井漁港を発し,香川県長島と向島の間にある漁場へ向かった。
 05時25分A受審人は,漁場に到着して,たいの一本釣り漁を始め,高月岩付近及び高月ノ瀬へと場所を変えながら操業したが,全く漁獲がなかったことから,長島の北西隣りにある岡山県六口島南方で,たこ漁をすることに決め,08時00分同島南西方沖合100メートル付近に移動したのち,5ないし6隻の遊漁船やモーターボートなどに混じって漂泊を行い,たこ一本釣り漁を開始した。
 08時59分半A受審人は,1時間ばかり操業したものの,やはり漁獲が思わしくなかったことから,帰途に就くこととし,09時00分わずか前六口島灯標から167.5度(真方位,以下同じ。)1,500メートルの地点を発進するとともに,針路を090度に定め,機関を微速力前進にかけ,3.5ノットの対地速力で,舵柄による手動操舵によって進行した。
 発進する際,A受審人は,正船首方15メートルのところに,雄二を視認できる状況であったが,折悪しく,自船の左右で釣りをしていた遊漁船やモーターボートなどが動き出したことから,それらの動向に気を取られ,前方の見張りを十分に行わなかったので,雄二の存在に気付かなかった。
 こうして,A受審人は,漂泊している雄二に気付かないまま発進し,同船を避けることなく続航中,09時00分六口島灯標から167度1,500メートルの地点において,長福丸は,原針路,原速力で,その船首が,雄二の船尾に後方から平行に衝突した。
 当時,天候は晴で風力1の東風が吹き,視界は良好であった。
 また,雄二は,平成10年1月に新造された,エアーホーンなどの音響信号装置を装備していないFRP製モーターボートで,同16年7月に交付された二級小型船舶操縦士免許を有するB受審人が1人で乗り組み,親族2人及び知人1人の計3人を乗せ,釣りの目的で,船首0.4メートル船尾0.8メートルの喫水をもって,同日07時10分岡山県琴浦港を発し,六口島南西方沖合の釣り場へ向かった。
 07時40分B受審人は,釣り場に到着して直ちに釣りを始め,時折,潮のぼりをして船位を修正しながら,機関を中立運転として漂泊していたところ,09時00分わずか前前示衝突地点で船首が東方を向いていたとき,正船尾方15メートルのところで一本釣り漁業に従事していた長福丸が,突然,機関を前進にかけ,自船に向首して動き出したのを認めたが,どうすることもできず,前示のとおり衝突した。
 衝突の結果,長福丸は船首部喫水線付近に亀裂を生じ,雄二は右舷船尾部を圧壊するとともに,A受審人が頭部を,B受審人及び同乗者の3人が,それぞれ腕,肩及び膝などを打撲により負傷した。

(海難の原因)
 本件衝突は,岡山県六口島南西方沖合において,長福丸が,漁場を発進する際,見張り不十分で,正船首方で漂泊している雄二を避けなかったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,岡山県六口島南西方沖合において,操業を終えて漁場を発進する場合,周囲には複数の遊漁船やモーターボートなどが釣りを行っていたのであるから,それらの船舶と衝突しないよう,見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら,同人は,自船の左右で釣りをしていた遊漁船やモーターボートの動向に気を取られ,前方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により,正船首方で漂泊中の雄二を見落とし,同船に気付くことなく進行して衝突を招き,自船の船首部喫水線付近に亀裂を生じさせ,雄二の右舷船尾部を圧壊させるとともに,自らの頭部,B受審人及び雄二の同乗者3人それぞれに,腕,肩及び膝などを打撲により負傷させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人の所為は,本件発生の原因とならない。


参考図
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