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平成18年広審第14号
件名

水上オートバイビッグマン水上オートバイ弘航丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成18年5月25日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(島 友二郎)

副理事官
前田昭広

受審人
A 職名:ビッグマン船長 操縦免許:小型船舶操縦士
B 職名:弘航丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
ビッグマン・・・底部に擦過傷
弘航丸・・・フロント部に損傷,船長が肺挫傷,右上顎骨骨折及び右頬骨骨折等の負傷

原因
弘航丸・・・船員の常務(旋回方向の安全確認不十分)不遵守(主因)
ビッグマン・・・船員の常務(安全な艇間距離をとらなかったこと)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は,先航する弘航丸が,旋回方向の安全確認が十分でなかったことによって発生したが,後続するビッグマンが,安全な艇間距離をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Bの小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年7月18日15時40分
 山口県大島郡周防大島町片添ヶ浜沖合
 (北緯33度53.95分 東経132度21.95分)

2 船舶の要目
船種船名 水上オートバイ ビッグマン 水上オートバイ弘航丸
全長 3.12メートル 3.12メートル
機関の種類 電気点火機関 電気点火機関
出力 112キロワット 88キロワット

3 事実の経過
 A及びB両受審人は,同じ水上オートバイ専門店を利用する知人同士で,平成17年7月18日に同店が主催した水上オートバイ遊走会に参加して,同日10時ごろ山口県大島郡周防大島町片添ヶ浜に到着し,ときどき海岸で休憩しながら,同浜北側の防波堤を発着地点として,付近海域で遊走を繰り返した。
 ビッグマンは,C社が製造した最大搭載人員3人のウォータージェット推進式FRP製水上オートバイで,A受審人(平成16年11月特殊小型船舶操縦士免許取得)が,救命胴衣を着用して1人で乗り組み,同日15時37分前示発着地点を発進し,片添ヶ浜の沖合約350メートルを,これに沿って南下した。
 15時38分ごろA受審人は,片添ヶ浜西方にある94メートル山頂(以下「基点」という。)から120度(真方位,以下同じ。)780メートルの地点に差し掛かったとき,燃料切れ警報が鳴ったことから,漂泊して燃料計の点検を行った結果,燃料が少なくなっていることを認め,発着地点に戻ることとした。
 このときA受審人は,自艇の左方5メートルばかりのところに,B受審人が操縦する弘航丸が停止し,同人と話をしようとしたが声がよく聞こえなかったので会話することができず,一緒に遊走しながら発着地点に戻るつもりで,同人に向け右手を何度か前方に振って合図をしたところ,同艇が北方に向け発進したので,B受審人が,自艇が追走することを了解したものと判断し,15時39分半前示漂泊地点を発進し,針路をほぼ海岸線に沿った北北東に向け,時速45キロメートルの対水速力で進行した。
 A受審人は,B受審人が,自艇が追走していることを了解しているので,自艇の進行方向に向け急旋回することはないものと思い,先航する同艇に不測の動きがあっても衝突を避けられるよう,安全な艇間距離をとることなく,弘航丸を艇首右側前方15メートルばかりに見ながら追走した。
 15時40分わずか前A受審人は,弘航丸が自艇の進行方向に向け急旋回してくることに気付いたが,安全な艇間距離をとっていなかったのでどうすることもできず,15時40分基点から095度820メートルの地点において,ビッグマンは,原針路,原速力のまま,その艇首に弘航丸の艇首がほぼ正面から衝突した。
 当時,天候は晴で風力2の南南西風が吹き,潮候は上げ潮の中央期であった。
 また,弘航丸は,C社が製造した最大搭載人員3人のウォータージェット推進式FRP製水上オートバイで,B受審人(小型船舶操縦士免許を取得していたところ,平成17年6月二級及び特殊小型船舶操縦士免許に更新した。)が,救命胴衣を着用して1人で乗り組み,同日15時38分前示発着地点を発進し,片添ヶ浜の沖合約400メートルを,これに沿って南下した。
 B受審人は,1分間ほど航走して反転し,北上を開始したところ,前方にビッグマンを認めたので,同艇の左方5メートルばかりのところに接近して停止し,A受審人と話をしようとしたが声がよく聞こえなかったので会話することができず,遊走を再開することとし,15時39分半わずか前前示停止地点を発進し,針路をほぼ海岸線に沿った北北東に向け,時速45キロメートルの対水速力で進行した。
 B受審人は,発進前A受審人が右手を何度か前方に振って合図をしたことを認めていなかったので,ビッグマンが自艇の左後方15メートルを追走していることに気付かないで続航し,15時40分わずか前急旋回することとしたが,自艇の周囲に他艇などいないものと思い,旋回方向である左後方の安全確認を行うことなく,対水速力を時速20キロメートルに減じてステアリングハンドルを左一杯に切り,急旋回したところ,目前にビッグマンを認めたがどうすることもできず,弘航丸は,艇首が南南西を向いたとき,前示のとおり衝突した。
 衝突の結果,ビッグマンは,底部に擦過傷を,弘航丸は,フロント部に損傷をそれぞれ生じ,B受審人が,3箇月間の入院,加療を要する肺挫傷,右上顎骨骨折及び右頬骨骨折等を負った。

(海難の原因)
 本件衝突は,山口県大島郡周防大島町片添ヶ浜沖合において,ビッグマンと弘航丸の両艇が相前後して遊走中,先航する弘航丸が,旋回方向の安全確認が不十分で,ビッグマンの進行方向に向け急旋回したことによって発生したが,後続するビッグマンが,安全な艇間距離をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 B受審人は,山口県大島郡周防大島町片添ヶ浜沖合において,遊走中,急旋回する場合,旋回方向の他艇と衝突することにならないよう,同方向の安全確認をすべき注意義務があった。
 しかるに,同人は,自艇の周囲に他艇などいないものと思い,旋回方向の安全確認を行わなかった職務上の過失により,自艇を追走するビッグマンに気付かず,同艇の進行方向に向け急旋回して衝突を招き,ビッグマンの底部に擦過傷を,弘航丸のフロント部に損傷をそれぞれ生じさせ,自らが,3箇月間の入院,加療を要する肺挫傷,右上顎骨骨折及び右頬骨骨折等を負うに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第2号を適用して同人の小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 A受審人は,山口県大島郡周防大島町片添ヶ浜沖合において,遊走中,弘航丸を追走する場合,先航する弘航丸に不測の動きがあっても衝突を避けられるよう,安全な艇間距離をとるべき注意義務があった。しかるに,同人は,弘航丸が,自艇が追走していることを了解しているので,自艇の進行方向に向け急旋回することはないものと思い,同艇と安全な艇間距離をとらなかった職務上の過失により,弘航丸が自艇の進行方向に急旋回したときに,衝突を避けることができずに同艇との衝突を招き,前示の損傷などを生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


参考図
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