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平成17年広審第151号
件名

貨物船日章丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成18年3月3日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(川本 豊)

理事官
阿部房雄

受審人
A 職名:日章丸一等航海士 海技免許:五級海技士(航海)

損害
船首部船底外板に亀裂及び凹損

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は,居眠り運航の防止措置が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年11月27日20時20分
 香川県粟島北岸
 (北緯34度17.0分 東経133度37.2分)

2 船舶の要目
船種船名 貨物船日章丸
総トン数 419トン
全長 72.55メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット

3 事実の経過
 日章丸は,主として岡山県日比港から愛知県豊橋港,関門港及び愛媛県今治港に向けて石膏を運搬する船尾船橋型貨物船で,船長B及びA受審人ほか1人が乗り組み,空船のまま,船首1.2メートル船尾2.8メートルの喫水をもって,平成16年11月27日17時20分今治港を発し,日比港に向かった。
 B船長は,発航操船を終えて17時35分今治港沖合5海里ばかりの地点でA受審人と当直を交替して降橋した。
 A受審人は,当直交替後,単独で船橋当直に就いて高井神島と豊島の間に向けて備後灘を進行し,18時40分高井神島灯台から008度(真方位,以下同じ。)1.1海里の地点で,針路を077度に定め11.0ノットの対地速力で自動操舵により進行した。
 これに先立ち,A受審人は,前日の26日17時40分に今治港に着岸したのち夕食を摂ったところ腹痛を覚え,その後就寝してからも熟睡できず,翌27日08時00分ごろ病院に行って診察を受け,胃薬などを処方してもらって13時00分ごろ帰船し,その後船内で荷役の終了まで待機したのち出港し,その後も引き続き船橋当直に就いたことから,睡眠不足の状態であった。
 A受審人は,定針後,船橋中央部に備えた操舵輪後方の背もたれや肘掛けの付いた座高の高い椅子に腰掛けて当直にあたっていたところ,前述の睡眠不足に加えて広い海域で単調な当直もあって眠気を催したが,備讃瀬戸南航路西口に達したら船長と当直を交替するつもりでいたことから,それまで何とか我慢できると思い,直ちに船長と当直交替するなど居眠り運航の防止措置をとることなく,続航した。
 A受審人は,19時20分高井神島灯台から069度7.5海里の地点に達したころから居眠りに陥り,その後20時00分讃岐三埼灯台に右舷正横0.6海里で並航したが,備讃瀬戸南航路西口に向け転針が行われず,そのまま香川県粟島北岸に向首進行した。
 こうして日章丸は,A受審人が居眠りしたまま続航するうち,20時20分原針路,原速力のまま讃岐三埼灯台から069度3.3海里の地点で,粟島北岸に乗り揚げた。
 当時,天候は晴で風力2の北西風が吹き,潮候は上げ潮の中央期であった。
 A受審人は,乗揚の衝撃で居眠りから覚めて本件発生を知り,昇橋してきた船長や機関長とともに事後の措置にあたった。
 乗揚の結果,船首部船底外板に亀裂及び凹損を生じたが,のち修理された。

(海難の原因)
 本件乗揚は,夜間,備後灘を東行中,居眠り運航の防止措置が不十分で,香川県粟島北岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,備後灘において単独で船橋当直に就いて東行中,眠気を催した場合,船長と当直交替するなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに,同人は,当直交替予定地点まで何とか我慢できると思い,居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により,居眠りに陥って粟島北岸への乗揚を招き,船首部船底外板に亀裂及び凹損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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