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平成17年神審第125号
件名

ヨットテディV乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成18年3月23日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(横須賀勇一)

副理事官
小俣幸伸

受審人
A 職名:テディV船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
センターボード折損脱落及び船底部を擦過

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は,船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年8月6日23時30分
 和歌山県田倉埼沖
 (北緯34度16.0分 東経135度03.6分)

2 船舶の要目
船種船名 ヨットテディV
全長 7.38メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 5キロワット

3 事実の経過
 テディVは,最大とう載人員8人の船体中央やや後方にコックピットを有する一本マストの船外機付きFRP製ヨットで,平成14年2月交付の一級小型船舶操縦士免状を受有するA受審人ほか2人が乗り組み,回航の目的で,海面からセンターボード下端まで1.45メートルの状態で,同17年8月6日21時10分大阪府淡輪港を発し,友ケ島水道加太瀬戸経由で和歌山県太地漁港に向かった。
 発航に当たり,A受審人は,夜航海に備えて縮帆するとともに,海図W150Aに記載された友ケ島水道の部分海図を用意し,コックピットに設置したハンディGPSに表示された緯度経度を転記して船位を確認する手段を講じていた。
 A受審人は,コックピット左舷側で内側を向いて腰掛け,船首方を見る態勢で操船に当たり,帆と機関を併用して加太瀬戸に向けて南下し,22時54分地ノ島灯台から090度(真方位,以下同じ。)300メートルの地点に達したとき,折からの南南東風に対して左舷開きとし,右に傾斜した状態で,舵柄を固定し,マグネットコンパスにより針路を193度に定め,折から北東に流れる1.1ノットの潮流により10度左方に圧流されながら,3.1ノットの対地速力(以下「速力」という。)で進行した。
 23時15分A受審人は,田倉埼灯台から359度1,650メートルの地点に達したとき,左方に偏位して田倉埼沖の暗礁に向かって著しく接近する状況となったが,いずれ左舷船首方に見えてくるであろう紀伊日ノ御埼灯台の灯光が見えてから船位を確認すればよいと思い,GPSの位置を海図に転記するなどして船位を確認することなく,この状況に気付かず続航した。
 23時28分A受審人は,田倉埼灯台から342度400メートルの地点に達したとき,同灯台の照射灯が照射する水域に180メートルまで接近したが,依然,船位の確認を行わなかったので,これに気付かないまま田倉埼灯台北北西方の暗礁に向かって進行中,照射灯を浴びるとともに船底に衝撃を感じ,テディVは,原針路,原速力で23時30分田倉埼灯台から338度250メートルの地点の暗礁に乗り揚げた。
 当時,天候は晴で風力4の南南東風が吹き,潮候は下げ潮の中央期で,付近には波高約0.5メートルで,北東へ流れる潮流があった。
 乗揚の結果,センターボードが折損して脱落するとともに船底を擦過した。

(海難の原因)
 本件乗揚は,夜間,帆及び機関により友ケ島水道加太瀬戸を南下する際,船位の確認が不十分で,田倉埼沖の暗礁に向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人が,夜間,友ケ島水道加太瀬戸を通過して南下する場合,田倉埼沖の暗礁に著しく接近しないよう,適時GPSの位置を海図に転記するなどして船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,いずれ左舷船首方に見えてくるであろう紀伊日ノ御埼灯台の灯光が見えてから船位を確認すればよいと思い,船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,田倉埼沖の暗礁に向かって進行していることに気付かず,これに乗り揚げ,センターボードを折損して脱落させるとともに船底に擦過傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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