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平成17年横審第116号
件名

旅客船ニューすがしま乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成18年3月28日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(黒岩 貢)

理事官
河野 守

受審人
A 職名:ニューすがしま船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
右舷側中央部船底に破口

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は,船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年3月7日20時33分
 (北緯34度29.7分 東経136度52.7分)

2 船舶の要目
船種船名 旅客船ニューすがしま
総トン数 19トン
全長 15.90メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 426キロワット

3 事実の経過
 ニューすがしま(以下「すがしま」という。)は,旅客不定期航路事業に従事する,最大搭載人員71人のレーダーを備えたFRP製旅客船で,A受審人が1人で乗り組み,旅客7人を乗せ,船首0.6メートル船尾1.4メートルの喫水をもって,平成17年3月7日20時24分三重県鳥羽港内の東防波堤西側船だまりを発し,菅島北岸沖合経由で同県菅島漁港に向かった。
 ところで,菅島北岸沖合の,菅島港北防波堤灯台(以下「北防波堤灯台」という。)から295度(真方位,以下同じ。)420メートル,317度630メートル,267度2,000メートル及び259度2,000メートルの各地点を順次結んだ区画には,毎年9月から翌年4月までの間,のり養殖施設が敷設されていた。
 A受審人は,鳥羽港から菅島漁港に向かう際,前示のり養殖施設と菅島との間の水路を通航していたが,同施設がレーダーに映らず,またその周囲の所々に設置された標識灯も陸上の灯火に紛れて見にくかったため,夜間には,北防波堤灯台から074度400メートルのところにある探照灯で照射された自ら経営する5階建ての旅館と,北防波堤灯台の灯光との見通し線を利用し,同線に沿って航行することにしていた。
 発航後A受審人は,いつものように坂手島北方を通過後,南東進し,20時31分半北防波堤灯台から254度2,350メートルの地点に達し,前示見通し線に乗ったところで針路をこれに沿う074度に定め,機関を全速力前進にかけ,14.5ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
 定針直後A受審人は,携帯電話に着信があって通話を始めたところ,20時32分北防波堤灯台から254度2,150メートルの地点に至ったとき,舵輪がわずかに右に回って右舵がとられた状態となり,少しずつ右転を始めたが,通話に気をとられ,見通し線を確かめるなどして船位の確認を行っていなかったので,このことに気付かなかった。
 こうして,すがしまは,徐々に菅島北岸に向首する針路となって続航中,20時33分,北防波堤灯台から251.5度1,740メートルの菅島北岸に,原速力のまま090度を向首して乗り揚げた。
 当時,天候は晴で風はほとんどなく,潮候は下げ潮の末期であった。
 乗揚の結果,すがしまは,右舷側中央部船底に破口を生じ,船底全域に浸水したが,排水を続けながら来援した漁船により鳥羽港に引きつけられ,その後修理された。

(海難の原因)
 本件乗揚は,夜間,三重県鳥羽港東方の,菅島とその北方に敷設されたのり養殖施設との間の水路を航行する際,船位の確認が不十分で,菅島北岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,三重県鳥羽港東方の,菅島とその北方に敷設されたのり養殖施設との間の水路を航行する場合,のり養殖施設に乗り入れたり,菅島に乗り揚げることのないよう,見通し線を確かめるなどして船位を十分に確認すべき注意義務があった。しかるに,同人は,携帯電話による通話に気をとられ,船位を十分に確認しなかった職務上の過失により,菅島北岸への乗揚を招き,右舷側中央部船底に破口を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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