日本財団 図書館




 海難審判庁採決録 >  2006年度(平成18年度) >  乗揚事件一覧 >  事件





平成17年神審第101号
件名

モーターボートナガオ乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成18年1月31日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(甲斐賢一郎)

副理事官
山本哲也

受審人
A 職名:ナガオ船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船外機のスクリュー脱落,船底全体に擦過傷

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は,水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年6月26日10時00分
 和歌山県田倉埼西方沖合
 (北緯34度15.9分 東経135度03.5分)

2 船舶の要目
船種船名 モーターボートナガオ
登録長 4.67メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 80キロワット

3 事実の経過
 ナガオ(以下「ナ号」という。)は,平成9年4月に第1回定期検査を受けた,船体中央やや前方の右舷側に操縦席を備えた無蓋のFRP製モーターボートで,平成12年5月に交付された四級小型船舶操縦士免状を受有するA受審人が1人で乗り組み,知人6人を同乗させ,遊走の目的で,船首0.4メートル船尾0.6メートルの喫水をもって,平成17年6月26日08時00分大阪府泉南市樽井船溜まりを発し,和歌山県田倉埼西方沖合に向かった。
 このとき,A受審人は,ナ号の最大搭載人員が6人であることを認識していたが,同乗者6人のうち1人は小児であったので,大丈夫と思い,法令違反であることを承知の上で発航したものであった。
 ところで,目的地の田倉埼付近では,同埼西方に干出浜や干出岩などを含む危険界が岸線から200メートル沖合まで拡延していた。
 A受審人は,何度か田倉埼の沖合を遊走した経験があったので,同埼に近づいて航行しても目視で確認しながら航行すればよいものと思い,予め海図やヨット・モーターボート用参考図に当たるなどして田倉埼西方沖合の危険界について水路調査を十分に行っていなかったので,前示危険界の存在を知らなかった。
 こうして,A受審人は,一旦地ノ島北方沖合で漂泊した後,加太瀬戸の最狭部を通過して,09時45分田倉埼灯台から004度(真方位,以下同じ。)1.8海里の地点に至って,針路を田倉埼に接航する188度に定め,7.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
 09時59分A受審人は,田倉埼灯台から325度380メートルの地点に達したとき,そのまま続航すれば,田倉埼西方の危険界に著しく接近する状況となったが,予め同埼西方の水路調査を十分に行っていなかったので,この状況に気付かなかった。
 A受審人は,危険界を避けることなく進行し,10時00分田倉埼灯台から286度280メートルの地点において,ナ号は,原針路,原速力のまま,危険界内の浅瀬に乗り揚げ,船底を擦過した。
 当時,天候は晴で風力2の南西風が吹き,潮候は下げ潮の初期で,視界は良好であった。
 乗揚の結果,船外機のスクリューが脱落し,船底全体に擦過傷を生じた。

(海難の原因)
 本件乗揚は,和歌山県田倉埼西方沖合において,同埼に接航して南下する際,水路調査が不十分で,同埼西方に拡延する危険界に著しく接近して進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,和歌山県田倉埼西方沖合において,同埼に接航して南下する場合,予め海図やヨット・モーターボート用参考図に当たって危険界の範囲などの水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら,同人は,何度か田倉埼西方沖合を遊走したことがあったので,目視で確認しながら航行すればよいものと思い,水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により,同埼西方の危険界に進入して乗揚を招き,船外機のスクリューを脱落させ,船底全体に擦過傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION