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平成17年那審第43号
件名

遊漁船第五のりみつ丸漁船海政丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成18年2月21日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(平野研一)

副理事官
入船のぞみ

受審人
A 職名:第五のりみつ丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士
B 職名:海政丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
第五のりみつ丸・・・プロペラ軸及びプロペラ翼に曲損,船首部両舷のペイントが剥離
海政丸・・・両舷のブルワークを圧壊,大破して全損 船長が右大腿部及び右肩に打撲傷

原因
第五のりみつ丸・・・見張り不十分,船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
海政丸・・・動静監視不十分,船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は,第五のりみつ丸が,見張り不十分で,錨泊中の海政丸を避けなかったことによって発生したが,海政丸が,動静監視不十分で,衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年7月14日18時20分
 沖縄県沖縄島金武岬北東方沖合
 (北緯26度27.4分 東経128度00.1分)

2 船舶の要目
船種船名 遊漁船第五のりみつ丸 漁船海政丸
総トン数 4.9トン 1.1トン
全長 14.50メートル 7.36メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 279キロワット 60キロワット

3 事実の経過
 第五のりみつ丸(以下「のりみつ丸」という。)は,船体中央部やや船尾寄りに操舵室を設けたFRP製遊漁船で,平成5年9月に一級小型船舶操縦士の免許を取得したA受審人が1人で乗り組み,釣客3人を乗せ,遊漁の目的で,船首0.3メートル船尾1.3メートルの喫水をもって,平成17年7月14日06時40分沖縄県金武湾港天願地区を発し,08時40分同県安田漁港東方沖合の釣り場に至って遊漁したのち,16時30分同釣り場を発し,帰途に就いた。
 A受審人は,釣客2人を操舵室下部の客室の座席に,残りの釣客1人を船尾甲板にそれぞれ座らせ,17時50分伊計島灯台から042度(真方位,以下同じ。)12.3海里の地点で,針路を234度に定め,機関を全速力前進にかけ,20.0ノットの速力(対地速力,以下同じ。)で,手動操舵により進行した。
 その後,A受審人は右舷船首方の西日の海面反射がまぶしいのでサングラスを掛けて続航し,18時18分半伊計島灯台から011度3.6海里の地点に達したとき,正船首方に左舷側を見せて錨泊するタンカーを認め,同船の船尾側を航過するため針路を右に転じて239度として進行し,正船首900メートルのところに左舷側を見せる海政丸を視認でき,同船が錨泊中を示す黒色球形形象物を掲げていなかったが,折からの東南東風に船首を立てて停止している様子から,錨泊していることを認め得る状況となったものの,タンカー以外に錨泊船はいないものと思い,船首方の見張りを十分に行わなかったので,海政丸を見落とし,同船に向首して衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かなかった。
 18時19分半A受審人は,引き続き右舷船首方の西日の海面反射を受けて見づらいので,速力を18.0ノットに減じたが,依然船首方の見張りが不十分で,海政丸に気付かないまま続航中,18時20分のりみつ丸は,伊計島灯台から004度3.3海里の地点において,原針路のまま,その船首部が海政丸の左舷船首部に前方から53度の角度で衝突した。
 当時,天候は晴で風力2の東南東風が吹き,潮侯は上げ潮の初期で,視界は良好であった。
 また,海政丸は,船尾寄りに無蓋の操舵スタンドを設け,有効な音響による信号を行うことのできる設備を持たないFRP製漁船で,昭和63年10月に一級小型船舶操縦士の免許(平成17年9月一級小型船舶操縦士・特殊小型船舶操縦士免許に更新)を取得したB受審人が1人で乗り組み,一本釣り漁の目的で,船首尾0.2メートルの等喫水をもって,平成17年7月14日12時30分沖縄県国頭郡宜野座村松田の係留地を発し,同県伊計島北東方沖合2海里のメングイ礁の漁場で漁ろうしたのち次の漁場に向かうため,13時20分同礁を発進した。
 13時35分B受審人は,前示衝突地点付近に至って機関を停止し,船首部から重さ8キログラムのステンレス製五爪錨を水深30メートルの海中に投じ,直径12ミリメートルの合成繊維製錨索を長さ60メートルまで延出してクリートに係止し,錨泊中の船舶が示す黒色球形形象物を表示しないで錨泊して漁ろうを再開した。
 その後,B受審人は,操舵スタンド後方の船尾右舷側で同舷側を向いて物入れに腰掛け,釣果が良かったので漁ろうを続けていたところ,18時18分半船首を112度に向けていたとき,左方にふと振り向くと左舷船首53度900メートルのところに,自船に向首して来航するのりみつ丸を初めて認めたものの,相手船が錨泊中の自船を避けてくれるものと思い,引き続き同船に対する動静監視を十分に行うことなく,のりみつ丸が衝突のおそれがある態勢で接近することに気付かなかった。
 18時19分少し過ぎB受審人は,のりみつ丸が自船を避けずに430メートルに接近したが,依然,動静監視を十分に行わないまま,機関を使用して移動するなど,衝突を避けるための措置をとらないで錨泊を続け,18時20分少し前機関音とともに至近に迫ったのりみつ丸を認めて衝突の危険を感じ,物入れの上に上がって大声で叫び,機関を急ぎ始動したものの発進する間もなく,海政丸は112度を向いたまま,前示のとおり衝突した。
 衝突の結果,のりみつ丸はプロペラ軸及びプロペラ翼に曲損を生じ,船首部両舷のペイントが剥離し,海政丸は両舷のブルワークを圧壊し,大破して全損となり,B受審人は右大腿部及び右肩に打撲傷を負った。

(海難の原因)
 本件衝突は,沖縄県沖縄島金武岬北東方沖合において,帰港するため西行中ののりみつ丸が,見張り不十分で,錨泊中の海政丸を避けなかったことによって発生したが,海政丸が,動静監視不十分で,衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,沖縄県沖縄島金武岬北東方沖合において,帰港するため西行する場合,錨泊中の海政丸を見落とすことのないよう,船首方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。ところが,同人は,タンカー以外に錨泊船はいないものと思い,船首方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により,錨泊中の海政丸に気付かず,同船を避けないまま進行して衝突を招き,のりみつ丸のプロペラ軸及びプロペラ翼に曲損を,船首部両舷のペイント剥離をそれぞれ生じさせ,海政丸の両舷のブルワークを圧壊させて大破,のち全損とさせ,B受審人の右大腿部及び右肩に打撲傷を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人は,沖縄県沖縄島金武岬北東方沖合において,錨泊して漁ろう中,自船に向首して接近するのりみつ丸を認めた場合,衝突のおそれの有無を判断できるよう,動静監視を十分に行うべき注意義務があった。ところが,同人は相手船が錨泊中の自船を避けてくれるものと思い,動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により,のりみつ丸が衝突のおそれがある態勢で接近することに気付かず,機関を使用して移動するなど,衝突を避けるための措置をとることなく錨泊を続けて衝突を招き,前示の事態を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


参考図
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