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 アメリカの大統領だったアイゼンハワーです。1890年に生まれ1969年に79歳で亡くなりました。1949年59歳の時クローン病で手術をして1953年アメリカの大統領になっています。
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 クローン病で一番古い人はルイ14世です。潰瘍性大腸炎はもっと古くてトルコのエフェソスという遺跡のある所に今思えば潰瘍性大腸炎の記載があります。
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 クローン病2万3千人くらいでアメリカと日本で比べると日本の有病率の20倍位です。アメリカで50万人いると言われています。
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 クローン病がなぜ起きますか?というメカニズム、バクテリアが関係しているという事が判ってきた。特定のバクテリアでないだろう、特定の細菌でないだろう、それが腸管の粘膜に入ってきて上皮を破って色んな免疫反応を起こすのがほぼ間違いないです。途中で何が関係しているかNOD2という遺伝子が見つかった、バクテリアを認識する遺伝子で16番目の染色体の上にあるわけです。遺伝しますが遺伝病にはならないX、Yの性染色体上にはないからです。日本人にはないんですね。
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 クローンは唇から肛門までどこにでも出来るんです。一番初めに小腸と大腸の境に好発したので小腸型、大腸型、ないしは小腸大腸型に病気分類を作っています。胃、食道、十二指腸にも出来ます。特に十二指腸に出来ると積極果敢に治療しないと十二指腸が狭窄を起こしてしまいます。十二指腸の狭窄は小腸や大腸の狭窄よりはるかに手術が難しいです。とっても難しいですので、出来ればこの中で上部消化管の症状はなくても胃とか十二指腸の検査を受けてなかった人はぜひ受けて欲しい。クローン病が有るか無いか、ないしは疑わしき病変があるかないかを必ず頭に置いといて欲しいです。クローン病の場合は時に造影も必要と思っといてください。
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 左側に下行結腸から直腸にいたるところに病変があるような場合、難治性の肛門病変がすごくよく出るので、そこのコントロールが大切です。痔ろうがあって膿瘍が合ったりする場合の人は必ず左側の検査を受けといて、左側の結腸の状態が悪いままだといつまでもお尻の方の病変は長く続きます。お尻の病変は放置したままにしておくと痔ろう癌という問題が出てきますので決して侮らない方が良いです。肛門科という科を標榜していても肛門科の専門医がいるとは限らないので、肛門病の専門医は極めて少ないです。外科医より少ないです。たった400人しかいません。特に大学にいる先生たちで肛門病を診られる先生は少ないです。クローン病の肛門病はもっと少ないです。大学で痔ろうで上手いのは横浜市民病院のグループ、東北大学のグループか阪大のグループですね。話は飛びますが、IVHは神戸の川崎病院の井上善文先生は阪大の第2外科出身の先生でIVHの専門家です。中心静脈栄養だって一つの栄養療法の手段としてはとても高い価値があります。
 
 
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 肛門病変です、肛門病は専門医でないとわからないです。
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 スキンタグはすぐにこれは見ただけでクローンとわかります。
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 微量元素でセレンってご存知ですか?セレンの欠乏は経管栄養やっていても起きる可能性がある、セレンの欠乏が長く続くと心臓に障害が出てきますので注意なんです。熊本はいいんですよ、熊本の食べ物にはセレンが沢山含まれているんです。関東ローム層とこっちでは野菜に含まれるセレンの量が全然ちがうんです。こちらの野菜がおいしいんです。微量元素が沢山含まれているからです。
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 一般的な話ですがクローン病のとき胆石が出来やすくなるということがある。腎臓にも石が出来る事があります。腎臓の石となるとシュウ酸、ココアを飲みましょう〜増えます。ほうれん草を食べるとシュウ酸が増えます。
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 これ結節性紅斑です。足の皮膚が腫れて少し盛りあがります。大腸に病変がある場合に潰瘍性大腸炎でもクローン病でもこういうのが出ます。
 壊疽性膿症です。化膿しているんじゃありません。こういうのがあるとすぐに治療しないとだめです。
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 現在のクローン病の診療、確かにクローン病ですね。潰瘍性大腸炎は確かに潰瘍性大腸炎ですねというのは疑わしいんですよ。潰瘍性大腸炎の人は毎年特定疾患の人は内視鏡を出して欲しいですね。クローン病は頻回にやる必要はないですね。症状がだいたい固定してしまいますので潰瘍性大腸炎は良くなると本当に良くなって前のが判らなくなるときがある。炎症はどうですか?CRPが正常でもお腹の症状が、潰瘍性大腸炎の時は血便があったりお腹が痛くなったりしてもCRPが正常で血沈も正常な人がいるんです。そういう人が数字だけで軽症扱いなのも問題ですよね。クローン病の場合血便が出て大量出血してヘモグロビンが半分になるほどでもCRPが全然動かない人もいるんですね。大量出血型というのがあるんですね。炎症の程度は△になる訳です。良い生活が出来るか?・・・かなり色々あると思うんですが。将来どうなりますか?・・・判んないですよね。はっきりしているのは、痔ろうが先に発症して後からお腹の症状が出てきてクローン病になった人と、後から痔ろうの症状が出てきた人と比べると先に痔ろうが出た方が入院回数とか手術の回数とか人工肛門になるリスクというのは少ないといわれて、というのがはっきりしています。
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 繰り返して行くうちに病気の程度が悪くなって、アフタから敷石状になって穿孔、狭窄を起こすとそういう病気体になっていくといこと。
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 活動性の疲弊の変化、年月が経てば経つほどクローン病については病気の勢いは落ちていく、若くしてなって10年20年経つと入院回数も減るし、ひどさも良くなっていくということははっきりしています。潰瘍性大腸炎、クローン病、両方に言えることです。時間と共に最期は燃え尽きてしまう事が多いんですね。
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 これは累積手術率、ウチのですけど手術を繰り返していくと。例えば十年経てば半分くらいの人が手術になっている。穿孔膿瘍タイプの方が手術率は高いという事になっています。
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 痔ろうの変化ですね、先行型痔ろうの方が予後が良い。先に痔ろうのタイプがどうも予後が良いらしいということですね。
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 小児との関連なんですが、潰瘍性大腸炎の20%は20歳未満で起きる、10%が15歳未満だと、クローンもほぼ同じだと。東京では今問題になっているのは乳幼児の潰瘍性大腸炎、クローン病をどうするか乳幼児で発症の潰瘍性大腸炎は重症になる事が多いんです。ただ乳幼児の炎症性腸疾患で死亡例はほとんど無いんです。どういうふうに対処しているか、いろんな治療をしても効かない場合ストマをすぐつけるとスパット良くなる。そういうことで便をどこかにそらせるという事がとても大切だといわれています。
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 現在、潰瘍性大腸炎は2003年の推定ですが3413人、クローン病が761人いるという事ははっきりしてきました。
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 小児のクローン病の特徴は身長増加不良と。十代の15〜16時にちゃんとしてあげないと身長が伸びなくなってずっと小さいままでいる。
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 栄養療法は大人よりはるかに子供の方が効くということがはっきり出ています。ステロイドは使うと子供の場合は成長が押さえます。
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 在宅で成分栄養剤をやっていた人と薬の治療だけだった人でこれデータが古いんですがまだペンタサが常使される前のデータなんですが、明らかに薬だけよりは栄養剤を使った方が良い状態を維持できるという事ははっきりしています。
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 これはクローン病の治療指針ということで、ここにイムランとさっきのアザチオプリンという免疫抑制剤の薬がありますし、シプロキサンという抗生物質があって、ここにレミケイドというサイトカインを抑える薬が出来ている。レミケイドというのは炎症を起こしている粘膜から出てくる炎症を悪くするようなたんぱく性の物質のことなんですね。それを抗体を作って中和することによって良くしようということで出てきてるもの。
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 レミケイドって薬、クローン病の人で使うと2日でCRPは陰性化します。潰瘍性大腸炎も使って1週間以内に下痢の下血の回数が激減するほど効きます。
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 今後出てくるTNF-αを押さえる薬で、今治験中であります。
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 喫煙をしていると再手術率が高くなるという事です。
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 内視鏡的拡張術、本当に良いのかどうか、外科系の先生はあまりよろしくないということです。内視鏡を使ってバルーンを使って拡張するんですが、裂けるんですね。内視鏡的拡張術の位置づけはもうしばらくしたら消えるだろうと・・・。
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 最終的にはクローン病はいろんな治療法をやるんですが、根本療法ではないという事があるので矢が弓から離れるところを切らなければダメだという事になります。
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 クローン病の治療の変遷というのは、最初患者を励まし見取ることで対処した。何も出来なかった時代があった。輸血ぐらいで潰瘍性大腸炎もそうです。サラゾピリンも使えることが判った。ステロイドも免疫抑制剤が出現してきた。それで出来た薬の副作用も判った。栄養療法も使えるようになった。ペンタサが出て来た。抗体製剤がでてきた。レミケイドが出て来た。最終的に白血球除去療法が出現した。その次は何か、いわゆる自然免疫をコントロールする薬が一つ考えられる。もう一つは移植であります。造血幹細胞、自家骨髄移植で極めて効果があります。とても危険な治療です。普通の患者さんには使えません。
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 治療の変遷で一番大切なのは心のケアが第一番、適用免疫に作用する薬剤、自然免疫に関与する。それからまた再び心のケアに重心が移ってきた。クローン病は他の慢性疾患に比べると精神的苦悩の頻度が高くてQOLが低いということです。
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 ただ精神的苦悩は、長くいろんな辛い思いがあるそれに対する反応だから病気がよくなれば元に戻る。実際そうなんですね。うつ病と思われる長引く苦悩は再発の更なる危険因子であるという事がいえます。
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 ドクターや看護師の方に知っといて欲しいんですが、クローン、潰瘍性大腸炎の患者さんは調子が悪い時、自分の状態に関する情報の整理があまり上手くいってない。情報の整理が出来ると自分でうまく解決できるということになる。そういう情報を整理してあげるという事を医療者や看護師さんはそれをやらなきゃいけない、いかにコミュニケーションを取るかという事です。
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 一番大きな問題だと思っているのは就職です。まずやったことは企業の人にお話をする、次にビジネスマナーのやり方。会社に入れば後から来る仲間の為に一生懸命死ぬほど頑張るつもりで就職しなくちゃだめだということ。もう一つ保険です、大手の生命保険会社がこっちに顔を向け始めましたのでそれは期待されていいと思います。それでは終わりにします。
 
 高添先生大変ありがとうございました。
 
質問
Q:生物学的製剤の投与で他の病気を持っている人、副作用の問題なんですけど、間質性肺炎にどれくらいなるとか、注意しなければいけないものですか?
A:他の疾患を知りませんが、クローン病ではあまり問題が起きてないようです。ただ結核が一番怖かったといえます。もう一つは長く使っていくと、キメラ抗体といって他の動物のタンパクも入っていますからどんどん使っていくと抗体が出てくる。それを弱めようと免疫抑制剤等を使うとさらに免疫状態が落ちますので、大きな感染症にかかりやすくなるという事は起こりうると思う。もう一つは小さい時にネズミとかハムスターとかに噛まれた人がたまたまそういう人がクローン病になって抗体製剤を使ったらショック死するのもなきにしもあらずです。
 
 今日話してなかったですが妊娠・出産については、免疫抑制剤とかいろいろ使うんですが、病気のコントロールが主ですコントロールが出来ていれば問題ない。気をつけて欲しいのはまだわかってない薬、レミケイドはまだ判ってないのでいいとも悪いとも言えません。もう一つは治験中のタクロリムスについても判っていません。ですがそれ以外のもの免疫抑制剤でも問題ないと思います。状態の良いときに妊娠して欲しい、であれば問題ないです。とても大切な事、ご主人になる人がしっかりしなければいけない。
 
Q:クローン病で平成6年発症で体調も良くて去年の三月に兵庫医大で手術を受けまして、狭窄が6年くらい続いていましたので状態が良いうちにということで手術をしてもらいだいぶ調子が良くなりました。狭窄病変が良くなったのでそれまで経管栄養していたのですが、去年の11月にそれを止めて様子を見ていてだいぶ良かったのですが今年の6月激務で5キロ位体重が落ちたので経管栄養を再開したのですが、経管栄養してないのと、ただエレンタール2包だけ飲むのとでは予後が違ってくるのかお聞きしたいです。
A:ウチでは術後の人にエレンタールはやらない。とても大切なのは腸管を切除して吻合した部分の血流が一番問題なので、大建中湯(ダイゲンチュウトウ)という漢方薬を15g6包をお湯に溶かして飲んでもらうことにしています。腸管を支えている膜を腸間膜といいます。そこには血管があります、そこの血管から腸を養う血管が出ます、リンパ管も出ます。そういう所の血管が手術をしたり、クローン病片があると悪いので大建中湯で血流が良くなります。食前食後どちらでもいいですが熱湯15gに6包を溶かして飲むことをすすめます。
 
 先生、長時間に渡り大変ありがとうございました。それでは先生に今一度拍手をお願いします。


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