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表彰選考委員会 委員長挨拶
 
 社会貢献支援財団の中に設けられました表彰委員会の代表を仰せつかりまして、受賞者を選考するという身に余る、或いは分に過ぎた仕事を、委員一同とともに本年度もやらせて頂きました。
 
 毎年同じ感想ですけれども、この日本にはこんなに立派な人が、こんなに沢山いるのかと驚きます。それとともに、日本の将来に希望が湧いてきます。あるいは自分が恥ずかしくなって参ります。ですから、選ばれた皆様には、大変おめでとう、と申し上げますが、自分が選んだとは思っておりません。皆様が偉いから、偉いことをなさったから、美しいことをなさったから、自然にこうなったのであって、その後に続く日本人は沢山、沢山いるだろう、あるいは世界にも沢山いるだろうと思います。そういうことのお役に立てれば、光栄だと思っています。
 
 従いまして、この式次第では受賞者をわれわれが選んで表彰するなどと、何となくこちらが上に立ったような感じになっておりますけれども、私の気持は、こちらが教えて頂く、学ばせて頂く、明日からは、こちらも少しは心を入れ替えて暮らさなければいけないと、そういう気持でございます。また、多分、本日ご列席の皆様も、そういう気持でこの席に参列なさっているのだろうと思います。また、そうであってこそ、このイベントに大きな意義があるのではなかろうかと思っております。
 
 皆様おめでとうございました。これを以て、ご挨拶といたします。
 
2006年11月20日
日下 公人
こども読書推進賞 選考委員会委員長挨拶
 
 「こども読書推進賞」選考委員長といたしまして、ご挨拶と報告をさせていただき、あわせていささかの所感をのべさせていただきます。
 まずご報告ですが、平成18年度のこども読書推進賞は、応募総数217件の中から、3件を選ばせていただきました。また今回も前年と同様に、今回の選に漏れた候補のなかからとくに優れた活動を行っておられる2件の候補者に奨励賞をさしあげる決定をいたしました。
 まず大欠なかよしバス図書館ですが、市立図書館から遠い地域のこどもたちに読書の喜びを与えるべく、廃バスを利用して図書館とし、親子で催した「仲良し祭り」の収益や住民からの寄付で図書購入費をまかない、運営は子どもが主体になって行っておられます。途中存続の危ぶまれた時期もあったにもかかわらず、30年目の今日も読書の楽しさを子どもたちが味わっているユニークな図書館です。
 本部町立伊豆味小中学校は、まだ歴史は浅いとは申せ、様々な読書推進活動を工夫し、小中併設の小規模校の特性を生かして、高学年児から低学年児へ、中学生から小学生へと生徒みずからが読み聞かせを行い、さらに生徒会を中心に地域の人々の協力を得て、アルミ缶の回収などを行って図書の購入費にあてるなど、子どもと大人との緊密な協力関係がみられること、また本の購入を大人まかせにせず、子どもの投票によって決めるなど、子どもの自主性を重んじている点も評価されました。
 下呂市立中切小学校は読者である児童を中心に、保護者、地域住民、公立図書館担当者、読み聞かせサークルメンバーなど、関係者が広く選書に参画していることが評価されました。児童の読書記録をもとに、図書館開館時には図書主任が常駐して読書相談に応じ、個別にきめこまかい指導を実践しておられます。その結果児童の読書量は飛躍的に増加したとのことです。
 これらの受賞者に共通しているのは、いずれも子どもと大人とが協力して図書の選定、購入などを実施していることでありまして、子どもが受け身でない、大人が積極的に関与している、という点でありましょう。これは現実にはなかなか実現困難なことであり、今回の受賞者の実践が大いに評価された所以であります。
 十月末の読書週間の新聞報道によれば、絵本の読み聞かせ、朝の十分間読書、などがすでに広く普及し、それなりの効果を上げているようでありますが、その実施状況を詳細に検証する時期が来ている、と私はかねてから感じており、昨年もそのようにお話いたしました。と申しますのは、まず子どもたちが自分で読みたい本を選択することが容易でない場合がかなり多く見受けられる事実に注目しなくてはならないのではないか、と思われるからです。読書の本当の楽しさや、読書によってどのように自分が変われるのか、というようなことが子どもたちによく理解されていないため、つまりは読書の意義がつかめていないことが根本にあるのではないでしょうか。そして親ごさんたちをはじめ、先生や図書館司書などの専門家にですらも、子どもの本についての十分な知識が不足しており、子どもに読ませたい優れた本を薦めることができないために、折角の貴重な時間が無駄に費やされているという現実もしばしば見られるからであります。
 では読書の意義をどのような方法で子どもたちに認識してもらえるでしょうか。それはきわめて難しい問題です。また、もう言い古されていることですが、子どもたちが学校での読書活動以外に、日常生活の中で本を手にする時間がきわめて少ない、ということも依然問題であります。塾通い、テレビやゲーム、最近では、携帯電話の子どもへの急速な普及もが読書の時間を奪っているのです。そしてなによりも、大人が本を読んでいる姿を子どもたちが見ていない、ことも子どもの読書に悪影響を与えている、という悲しい現実があります。
 このような子どもの読書にまつわる様々な問題の一つ一つをどのように分析し、解決の道を探るかが今後の読書推進運動の課題であるように思われてなりません。道は遠いかもしれませんが、子どもたちの明日を考える時、私たち大人が努力を惜しんではならないと思われます。
 そのためにも今回の受賞者の功績が広く世に知られることには大きな意味があると思われ、より効果的な読書推進に役立つことを願ってやみません。これをもちまして、ご挨拶と報告とさせていただきます。
 
2006年11月20日
猪熊 葉子
記念写真
(拡大画面:243KB)


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