(5)高校生の加算(表4参照)
「高校生」では加算のない自治体が1。どの年齢層についても加算のない20自治体を加えると21自治体が「高校生」への加算がない状況。「高校生」については加算をする自治体が多いといえます。
(表4)
自治体 |
高校生に支払われる助成費 |
青森県 |
特別育成費(公立・私立)5000・見学旅行費/16000 |
岩手県 |
社会参加促進費/月1530・特別育成費/月2500 |
山形県 |
生活指導訓練費/月1000 |
茨城県 |
高等学校学校納付金助成/上限500,000(特別育成費・見学旅行費を控除した額)
通学費助成(通学交通費)1000を超える実費 上限7000・自転車購入15000
・自動車運転免許助成上限50,000・入学支度金助成/県産業技術学院や水戸高等養護学校に入学時 上限50000 |
栃木県 |
私立高校に入学時/納付金の実費 私立高校180000その他150000
高校等1学年進学児童24000高校等2.3学年進学児童18000
通学定期代/1ヶ月6000円を差し引いた額上限20000・見学旅行費10000 |
群馬県 |
高校入学加算(公立)50000(私立)200000・就職支度費加算20000 |
埼玉県 |
処遇高度化推進費/月4700・修学旅行助成費30000・入学奨励費100000 |
千葉県 |
生活指導訓練費/月1780・入進学助成金(高校入学)62100(養護学校)44150・特別育成費(公立・私立)/月3000・就職支度費25000
冬期暖房費(11〜3月)月930・新年特別給食費(1月)1920 |
東京都 |
生活費加算/月7650・生活指導訓練費/月5400(1月のみ)6000・
暖房費(11〜3月)2380特別育成費(公立1年)年51830(公立2.3年)8940
(私立1年)68770・入学金・授業料・施設費は、実費支給・就職支度金(一般)
127070(特別基準)135440(住宅費用)実費/上限93000・大学受験料
(1校のみ)実費・大学入学支度金595800
各種学校等入学支度金 実費・職業訓練校12000 |
神奈川県 |
生活費加算/月2250特別育成費加算(公立)一般経費/月2500(通学交通費)
3000を越える実費(入学時加算)30000/(私立)一般経費/月9500(通学交通費)実費
(入学時加算)納付金実費・障害児加算/月15000期末一時金250
採暖費/700・就職支度費加算28000・住宅費加算120000・夜食代/月1500 |
富山県 |
入進学支度金/年35000・就職支度費加算14000 |
石川県 |
クラブ費用補助/月2000・自動車運転免許取得補助金200000 |
長野県 |
地域サークル活動参加費/月500・部活動費月/2000・自動車免許証の取得費(上銀)100000 |
山梨県 |
生活指導訓練費/月3060・見学旅行費(高3)(学校徴収金−108200)+17000
夏季行事費/年600・入進学支度費/年46100・就職支度費10400・特別育成費 |
岐阜県 |
高校入学金(実費)120000以内・自動車免許取得費用(就職予定)160000 |
愛知県 |
私立(通学助成金)国の助成の超過分/月上限10000・入学助成金上限223000 |
滋賀県 |
指導育成費/年13500・職業訓練校(入学支度金)/年32530・(見学旅行費)/年49900 |
京都府 |
お年玉6000 |
和歌山県 |
各種資格取得等扶助費(自動車免許取得)上限150000
(上記意外の資格取得又は研修受講に要する経費)上限50000
教育強化費(補助学習費又は部活動参加に要する経費)/年24000 |
鳥取県 |
学力保障経費(塾費用)実費の1/2で上限/月10000・普通自動車運転免許証取得費用 実費上限300000・就職時身元保証(損害を被った場合)
実費上限300000・入居時の連帯保証(損害を被った場合)実費上限200000 |
岡山県 |
児童生活訓練費等/年7000・高校等入学支度金30000・職業訓練校通学経費40000
自動車免許取得経費100000 |
広島県 |
私立高等学校入学時納付金(県予算)1914000 |
山口県 |
高等学校教育費・入学支度金14500・私立学校教育費/月4000 |
香川県 |
期末一時金(図書券)3000 |
長崎県 |
高等学校就学促進費(入学時)私立100000職業訓練校53000・私立学校特別
育成費/月16000・高額交通費(公・私立)月8000・就職促進費40000 |
宮崎県 |
見学旅行費5000・私立高校入学助成費100000・職業能力開発校(入学助成)100000(修学助成)26000 |
札幌市 |
お年玉補助3000・特別育成費加算/交通費(8000円を超える分)実費
入学支度金(国の加算額を超える分)実費(公立)上限50000
(私立)上限270000・職業補導費補助 入学時 上限42400 |
仙台市 |
里子育成費(高校入学)1年30000(高校在学)/月8000 |
さいたま市 |
教育費等加算/月4700・修学旅行助成費30000・高校入学助成100000 |
千葉市 |
生活指導訓練費/月1780・入進学助成金(高校入学)62100
(養護学校)44150・特別育成費/月3000・就職支度費25000
冬期暖房費(11〜3月)月930・新年特別給食費(1月)1920・飲食物費加算/月2710 |
川崎市 |
生活費加算/月3000・期末一時金加算250・採暖費加算(11〜3月)月700
特別育成費(公立)月5000(私立)25000・入学時加算分(公立)
5000(私立)20000・見学旅行費 差額分・就職支度金50000・住宅費加算
120000・大学進学等自立生活支援費(大学)416000(専門)100000 |
横須賀市 |
特別育成費加算(公立)一般経費/月2500(通学交通費)3000を超える実費
(入学時加算)30000/(私立)一般経費/月9000(通学交通費)実費
(入学時加算)納付金実費・障害児加算/月15000・期末一時金250・採暖費700・就職支度費加算28000・住宅費加算120000・夜食代/月1500 |
横浜市 |
特別育成費加算(公立)月8400(私立)授業料・入学金等は児童福祉施設就学援助要綱による。就職支度費加算29400(特別加算)住宅費加算上限120000
資格取得奨励費実費上限300000 |
静岡市 |
地域活動参加費/年1500以内 |
名古屋市 |
児童福祉奨学金(私立・専門)/月10000・高等学校等進学支度金
(私立・専門)入学時223000・就職支度費加算補給金46400・大学等進学支度金
(保護者の援助等の額を差し引いた額)599900 |
京都市 |
学習指導奨励金/月2500・高校進学支度金10000・私立高校入学一時金補助 予算内で定める |
大阪市 |
児童等処遇向上事業/月10600・文化体育活動等奨励事業/月1500・社会的自立促進事業160000 |
神戸市 |
生活指導訓練費(小遣い)/月2500・入学支度費7000・修学旅行費(3年)
5000・修学旅行費加算(国費との差額分)上限10000 |
福岡市 |
入学支度金(公立)50000(私立)150000・奨励金(私立のみ)/月10000
就職支度金(申請中)45000 |
北九州市 |
高校時入学祝金5000・入学支度金(公立)25000(私立)100000
私立高校修学金/月10000・卒業(就職支度金)25000(就職祝金)10000・年末年始祝金/年1000 |
|
ユニークな加算名目では通学費助成、自転車購入助成、自動車運転免許助成、職業訓練校助成、就職支度費加算、住宅費加算、就職時身元保証や入居時の連帯保証で損害を被った場合の費用の助成、大学進学など自立生活支援費助成、などがあります。金額も「小学生」や「中学生」に比べて格段に大きくなっています。とはいえ、高校生の出費は大きいし、措置解除後の自立や就職に関する出費を考えるとこれで充分ということではないでしょう。自治体による差が大きいのも気になるところです。
高校卒業後、大学などに進学する子どもも多く(データによれば一般家庭の進学率とほぼ同じ)、里親の負担はさらに大きいと考えられます。近年、児童福祉において里親への期待が高まっていますが、里親の経済的な負担が大きければ、里親になるのに二の足を踏むことにもなります。
コラム
里子の進学希望者は47%
JOMO奨学助成(P.18を 参照)を申請するにあたって、高校生の里子が何人くらい進学するのかを調べたところ、全国で高校3年生の里子は136人。そのうち大学などへの進学希望者は64人で、進学希望率は47%となりました。
この数字は進学希望率で進学率ではありませんが、非常に高い数字だと思います。児童養護施設の進学率は10%くらいだと聞いたことがあります。進学だけが人生ではありませんが、学ぶチャンスの多さ、ということであれば施設より里親。ちなみにこの47%という数字は一般の家庭の進学率とほぼ同じです。文部科学省の学校基本調査によると平成18年度の大学などへの進学率は49.3%(現役のみ)となっています。
4. 小学5年生が昨年10月に支給された助成金
見てきたようにさまざまな名目で加算や助成が行われていて、逆に実際のところが見えにくいといえます。そこで、小学5年生に対して昨年10月に国の支給以外に幾ら支給されたのかを聞きました(表5)。
(表5)小学生5年生が10月に支給された助成金
岩手県 |
社会参加促進費 |
1,530/月 |
山形県 |
生活指導訓練費 |
700/月 |
埼玉県 |
処置高度化推進費 |
1,800/月 |
千葉県 |
生活指導訓練費
教育費 |
920/月
1,000/月 |
東京都 |
生活費加算
生活指導訓練費(4〜6年)
地域クラブ
学校教育費 |
7,650/月
1,500/月
700/月
1,350/月 |
神奈川県 |
教育費等加算(一般)
生活費加算 |
416/月
2,550/月 |
長野県 |
地域サークル活動参加費 |
500/月 |
山梨県 |
生活指導訓練費
学校教育費 |
970/月
2,430/月 |
滋賀県 |
指導育成費 |
1,125/月 |
鳥取県 |
学力保障経費・塾費用
実費の1/2で上限 |
5,000/月 |
岡山県 |
児童生活訓練費等 |
580/月 |
さいたま市 |
教育費等加算 |
1,800/月 |
千葉市 |
生活指導訓練費
教育費 |
920/月
1,000/月 |
川崎市 |
生活費加算
教育費 |
3,000/月
500/月 |
横須賀市 |
教育費等加算(一般)
生活費加算 |
416/月
2,550/月 |
京都市 |
学習指導奨励金 |
2,500/月 |
大阪市 |
児童等処遇向上事業
文化体育活動等奨励事業 |
10,600/月
1,500/月 |
神戸市 |
生活指導訓練費(小遣い) |
1,000/月 |
|
支給があったと回答した自治体は18。支給額の最も多かったのは大阪市で12,100円。次いで東京都の11,200円。この2自治体が群を抜いて高く、1万円の大台に乗っていますが、3番目は千葉市で4,620円と5,000円を割っています。3,000円台が川崎市、山梨県となっています。
自治体が独自に加算しているのは、どちらかといえば県よりも市に多く見られます。
市の方が先進的な取り組みをしているのかも知れません。
5. 里親手当など里親への助成(表6参照)
61地方自治体中26の自治体が里親への助成費をだしています。またファミリーグループホームについては国の制度にはなっていませんが、10の自治体で助成を行っています。
その他では感染症予防対策費の助成、研修費の助成、里親大会実施への助成などがあります。
里親手当の加算について1万円以上のところは、川崎市が月35,000円、東京都が月22,000円、神奈川県と横須賀市が月15,000円、大阪府と堺市、神戸市が月10,000円(大阪府と堺市は養子縁組しないことが条件)。さいたま市のように2人目から加算する自治体もあります。
こうした手当て加算のある自治体ほど新規委託時の支度金なども充実しています。しかし、新規委託児の手当は里親への手当てでしょうか。里親にとっては、受託児に洋服や靴などを揃えなければならず、場合によっては下着なども用意します。乳児の場合はさらに用意しなければならないものが多いはずです。これは手当というより必要経費的なものでしょう。また、里親保険の助成をする自治体も増えてきているようです。
ファミリーグループホームについての助成では、住まいに対する支援が多く、開設準備や家賃への補助がみられます。
(表6)
(拡大画面:210KB) |
|
|
|
6. まとめ
今回のアンケートは、里親会の事務局にお願いし、児童相談所や県の担当部署にご協力を得て回答いただいたものですが、必ずしも正確かどうか確認をとっていません。
アンケートを実施して感じたことは、里親制度の拡充に積極的な自治体(少数)とそうでない自治体の格差がかなりはっきりしていること。このままでは一層格差が開いてしまう可能性があります。
里親制度はボランティア精神のもとに成り立っていると言えますが、児童養護の一翼を担う、期待される制度だとすれば、制度整備に向けた努力がまだまだ必要な段階と言えるでしょう。養子縁組を希望して里親になる人が多く、養育里親として子どもの社会的養護に自覚的な里親が少ないのも、こうした現状からみればやむを得ないことなのかも知れません。
養育の現場からいえば、以前のような経済的貧困から養育できない子どもたちが里親のもとに来るのではなく、虐待などにあって心に傷をもった子どもたちが多く、養育技術も高度なものが要求されます。研修のための援助や保険の充実が必要でしょう。
乳児の養育については24時間体制で見なければならず、養育リスクも高いのですが、乳児養育については国も地方自治体も特別には考えてくれていません。乳児院の人件費が高額にならざるを得ないことを考えると、里親の乳児養育にも配慮の必要があると思います。
また、自立の難しい時代です。社会に巣立っていく子どもたちの将来を里親の善意に任せる、というのでなく、行政の責任として支援の体制を作っていく必要があるでしょう。
養育費や里親手当の支払い方については、今回は聞きませんでしたが、数か月分をまとめて振り込んだり、明細がないまま振り込まれるケースが多く、里親としてはいつのものでどんな科目のものをもらっているのか分からない場合が多いものです。
里親制度が期待されているなか、各種の助成も一層の充実が望まれます。今回取りまとめたこれらの情報が、充実していくために役立てば幸いです。
|