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「交流ネットワーク構築の現状と将来」
国際企画委員会国際学術協力部会
 (社)日本船舶海洋工学会・国際企画委員会国際学術協力部会では,日本財団助成事業「国際学術協力に関わる海外派遣」報告会の第2部としてパネルディスカッションを企画した。これは,派遣者が海外派遣により受けた印象や体験についての生の声から,これまでの船舶海洋工学分野や学会への貢献の度合いや研究者の交流ネットワーク構築の現状を把握し,今後の交流ネットワーク構築の進め方がいかにあるべきかを討議するために,パネルディスカッションのテーマとして「海外研究動向調査と研究インスピレーション」を取り上げた。報告会では,フロア,パネラーと討議を盛り上げるため,事前に派遣者にアンケート調査を行い,アンケート集計したパワーポイントを適宜フロアに提示して討論を行った。
 
開催概要
1. 開催日時:平成18年5月18日(木) 14:30〜16:20
2. 開催場所:東京海洋大学 越中島会館 SCS講義室(第1会場)
第1部 派遣者報告会 14:30〜15:30
第2部 パネルディスカッション(15:35〜16:20)
司会:篠田 岳思(委員)
副司会:南 佳成(海上技術安全研究所)
議題「海外研究動向調査と研究インスピレーション」
パネラー(敬称略)
・派遣者全員
廣田 一博(三菱重工業(株))
塚本 泰史(三菱重工業(株))
飯島 一博(大阪大学)
犬飼 泰彦((株)アイ・エイチ・アイ・マリンユナイテッド)
久米 健一(海上技術安全研究所)
浅沼 貴之(海上技術安全研究所)
山中 亮一(横浜国立大学)
 
テーマの背景
 若手研究者・技術者の活性化および学会・造船海事関連産業界の活性化を目的とする海外派遣事業
平成14年5月,海外派遣報告会
第1回派遣(平成13年度)メンバー中心に若手応援団結成
「海外派遣」=「若手応援団」
平成16年5月,海外派遣報告会
「造船・海洋技術の国際交流と社会貢献」
平成17年11月,秋季学会
オーガナイズド・セッション
「発想が萌芽するとき―国際的萌芽研究の創成を目指して―」
平成18年5月,海外派遣報告会
「海外研究動向調査と研究インスピレーション」
 
テーマの趣旨
 これからの日本がグローバルな国際競争社会の中で生き残って行くためには,発想を育み,活かし,豊かな社会を作っていくことが,重要な課題の一つだと考える。
 海外派遣報告会を好機ととらえ,若手の派遣者と共に,日本と海外の優位性の比較,発想力に重要な研究インスピレーションについて討論を行う。
 
「海外研究動向調査と研究インスピレーション」についてのアンケート項目
[1]パーソナルデータ
・氏名
・所属
・調査テーマ
[2]アンケート項目
1. 今回の派遣の際に,調査テーマとして選らんだ理由をお聞かせ下さい。
2. 海事関連研究に関する海外での研究姿勢への印象
・派遣を受けた内容から,あるいは海事全般から記入をお願いします。
 例えば,以下の点について意見を下さい。
a)海外での海事研究の活性度(仕組み,体制等)についての印象
b)取り組んでいる研究者(人)への印象
c)海外の優位性とは何か?
d)これらの日本との違い,日本の優位性は何か?
・また,日本においてできない理由は何か?
3. 研究インスピレーション
・今回の派遣を受けて,どのような研究インスピレーションを得たのかをお聞きしたく思います。例えば,以下の点について意見を下さい。
a)日頃から研究インスピレーションを高めるために,注意を払っていることは,何かありますか?
b)派遣を受け,どのような点にビックリしたか?どのような点に刺激を受けたか?
c)派遣によってどんな研究シーズを感じたか?
4. 日本へのアドバイス,日本の研究者へのアドバイス
・今回の派遣経験から,日本,日本人,日本の研究者へのアドバイスがありましたらお願いします。
5. その他,ご意見ありましたら,お書き願います。
 
話題1 今回の派遣の際に,調査テーマとして選んだ理由
・自分の現在の仕事・研究に活かす
・自分のテーマや成果への意見を聞く(横浜国大・山中)
・留学経験を発展させたい(海技研・浅沼)
・人脈作り(三菱・廣田)
 
話題2 海事関連研究に関する海外での研究姿勢への印象
(a)海外での海事研究の活性度
(仕組み,体制等)の印象
・研究が分断でなく系統性,戦略性がある(海技研・南)
・研究資源(人,金)の集中化(海技研・久米)
・大学での若いスタッフ多い,大学が活性化(阪大・飯島)
総評:活気がある
(b)取り組んでいる研究者(人)への印象
・マネージメント能力が高い(海技研・南)
・若い人が多い,活気がある(海技研・久米)
・明るい人が多い(三菱・塚本)
・仕事への情熱(海技研・浅沼)
・好奇心旺盛(横浜国大・山中)
 
話題3 海外と日本の比較
(c)海外の優位性とは何か?
・共通語(英語)の有利性
・情報収集力,最新情報の共有,情報発信能力(海技研・南,久米)
・組織性・力(横浜国大・山中)
・大きなフィールド(海技研・浅沼)規制改正の流れ(三菱・廣田)
(d)日本の優位性は何か?
・技術ポテンシャル高い,技術の維持,継承性高い(海技研・南)
・建造量大,経験とノウハウの蓄積大,研究者数大(海技研・久米)
(e)海外でできて,日本でできない理由は何か?
・海外との連携促進,コストが負担なら分担(海技研・南,IHIMU・犬飼)
・世界時流の読みのまずさ,テーマの継続性(三菱・廣田)
・対応の遅さ,組織の未熟さ(海技研・浅沼)
・成果評価を求めすぎ,博士号取得者の不安定(横浜国大・山中)
 
話題4 研究インスピレーション
(a)日頃から研究インスピレーションの向上の心がけ?
・海事関連ジャーナル,独自の情報収集
・専門に偏らず広く情報収集(海技研・南)
・情報に接すること情報を無視すること(阪大・飯島)
・工学的な見地から社会貢献,市民との交流(横浜国大・山中)
(b)派遣から,どんな点にビックリしたか? どんな刺激を受けたか?
・小さいながらも存在価値が高い(海技研・久米)
・同じ若手の国際性の高さ(海技研・浅沼)
・研究に対する動機の高さと好奇心,研究体制・環境の良さ(横浜国大・山中)
(c)派遣からどんな研究シーズを感じたか?
・海外派遣が契機,色々なことを思いついた。(例えば,阪大・飯島,海技研・浅沼)
 
話題5 今回の派遣経験から日本,日本人,日本の研究者へのアドバイス
・欧州戦略,付加価値向上(海技研・南)
・変化を感じ,変化を受け入れる(海技研・久米)
・日本の技術の広報活動(海技研・浅沼,三菱・廣田)
・アジアの躍進による相対的な研究者数の低下
これを巻き返すサポート体制の拡大化が必要(横浜国大・山中)
 
総括
 開催日当日は会場では満員の盛況であり,フロアの質問にも派遣者は積極的に回答し,司会者および会場一同,派遣者のしっかりとした意見と討議に感動した。今後もこのような若い人達が着実に成長し造船と学問の発展のために貢献していってくれるであろうという,頼もしい期待感を憶えたのと同時に,パネルディスカッションを通して若手の海外派遣の成果が確かなものであることを確信した。
記 篠田 岳思(九州大学)
 
パネラー・国際企画委員会委員長・加藤直三(大阪大),幹事・加藤俊司(海技研),篠田岳思(九州大学)


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