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精神障害者の地域生活と自立に向けての支援
2006年6月17日(土)
訪問看護ステーション ゆうあい
所長  長山 亜紀子
特定非営利活動法人 友愛会
自立に向けての支援とは?
 我々専門家は、障害のある方や高齢者の日常生活が円滑に営めるようにしていくことが役割です。決して生活を規制することではないということを、まず知っておかなければなりません。もちろん、生命に関することであれば少なからず制限は必要となります。しかし、必要最小限度にとどめた方が良いです。あくまで主体は生活者としての本人(利用者)または家族だということを常に認識しておかなければなりません。
 
精神障害者の支援体制
施設編
 
地域生活支援センター
 精神障害者の日常生活について、相談や援助あるいは連絡を行う。政府は2008年までに全国に470ヵ所のセンターを作るとしているが、現在のところ300ヵ所に満たない。
 
生活訓練施設...
 援護寮とも呼ばれる。自立生活を送るための技術や対人関係などを共同生活の中で身につける場所。ここで暮らしながら病院のデイケアや作業所に通う。利用期間は原則2年。病院と地域生活の中間にある施設と言える。
 
グループホーム...
 援助者のケアを受けながら、自立生活での課題である住居確保を共同住居という形で解決する。定員5、6名のところが多く、最近は個室を確保するなどプライバシーの保護にも配慮している。全国で900ヵ所ほど設置されている。
 
精神障害者生活訓練施設
 精神障害のため家庭において日常生活を営むのに支障がある精神障害者に対して日常生活に適応することができるように、一定期間(原則として2年間)、低額な料金で居室その他の施設を利用し、必要な訓練及び指導を行うことにより、精神障害者の社会復帰の促進をはかることを目標とした施設をいいます。
 
ショートステイ施設
 家族が疾病、冠婚葬祭、事故等のため、在宅生活を送っている精神障害者が一時的に在宅生活が困難となった場合、7日以内の期間で利用できる施設を言います。援護寮に併設している場合が多いです。
 
精神障害者福祉ホーム
 日常生活を自分で出来る程度に回復した精神障害者で、住居の確保が困難な人が生活の場を得るとともに社会復帰と自立のために必要な指導などを受ける施設です。利用期間は原則2年以内ですが、利用期間の延長が必要と認められる場合には、利用期間の延長が可能です。延長期限は特に定められていません。
利用できる精神障害者は:
 住宅の確保が困難で、次の条件を満たす人です。
(1)日常生活に介助を要しない程度に生活習慣が確立されている人。
(2)継続して就労できる見込みのある人。
 
精神障害者地域生活支援センター
 地域で生活している精神障害者の日常生活の援助、日常的な相談への対応、地域交流活動などを行い、精神障害者の社会復帰と自立、社会参加の促進を図ることを目的とした施設です。
 生活上の悩みの相談に乗ったり、一緒に外来受診に付き添ったり、役所への手続きに同伴したりなどいろいろな支援を行っています。具体的な支援内容については、それぞれの地域生活支援センターにお問い合わせ下さい。
利用できる精神障害者:地域で生活している精神障害者の人です。
 
精神障害者小規模作業所
1)法定外の施設であり、社会福祉関連の法律や障害関連の法律に定められていない任意の社会福祉施設。
2)小規模の施設である。社会福祉事業法において、通所型の社会福祉施設制度の最低定員を20名と規定しているが、それよりも少ないもの。一般的には5人から19人の規模が多いが、20人を超えているところもある。
3)利用者の障害の程度、種類とも多様である。身体障害者通所授産施設や知的障害者通所授産施設の利用者層と比較して相対的に障害の程度は重く、重複障害のある者が多い。
4)地域性に富んでいる。大半が一般建築物(ビル、一戸建て家屋、マンション、プレハブなど)の賃貸というかたちをとっており、住宅街や市街地に設置されている場合が多い。
5)簡易作業が活動の中心となっている。利用者の障害実態が多様で、活動の内容も種々である。全体的な傾向としては、通所型授産施設の小規模版の様相を呈し、簡易作業を活動のベースとしているところが多い。利用者の一人あたりの平均月額報酬は7000円である。また、障害が重いために作業への参加が難しく、生活リズムの確立や健康維持を目的に社会教育的な活動に重点を置いているところもある。
6)非医療機関である。類似した社会資源として医療機関や保健所でのデイケアがあるが、活動の目的やスタッフ体制においてこれらとは性格は異なる。職業リハビリテーションや社会教育の分野を含めた、広い意味での社会福祉施設として運営されている。
 
精神障害者授産施設
 相当程度の作業能力を有する精神障害者に対して、自活できるように必要な訓練及び指導を行い、社会復帰の促進をはかるための施設で、通所による施設と入所による施設とがあります。定員は、通所型20人以上、入所型20人以上30人以下となっています。
利用できる精神障害者は
 雇用されることは困難であるが、相当程度の作業能力を有しており、将来就労を希望する人が対象となります。入所型の施設では、加えて住宅を確保することが困難であり、多少の介護があれば日常生活を営むことが出来る方を対象としています。
 
精神科デイケア・・・
 精神科デイケアが診療報酬で点数化されたのは1981年7月です。その点数が1988年の改定で330点に引き上げられるまでは不採算で、ほとんど普及しませんでした。
 昼間の一定時間、医師の指示・指導のもとに、作業療法や集団療法などによる治療プログラムを受ける。入院と外来の中間プログラムとも言え、自宅や援護寮、グループホームなどから通うことになる。SSTとよばれる社会生活機能訓練を受けることもある。
 
ホームヘルパー・・・
 老人介護でなじみの言葉だが、精神障害による能力障害のための、日常生活で不得手な部分の支援を行う。具体的には、調理、掃除、買い物など。2002年から始まった事業で、実施主体は市町村。地元の社会福祉協議会や事業所に委託していることも多い。地域的偏りも多く、介護保険のサービスに比べると広がりも質も落差も大きい。
 
精神障害者家族会
 精神障害者をかかえた家族が孤立せず、お互いに支え合い、病気について理解を深め、よりよい関わりが出来るように援助するための組織。
 精神障害者をかかえた家族の方は、各地域に設置されている精神障害者援護会に相談してみてください。
 
病棟・病院との連携
◆施設入居者・ドヤ保護の人が受診している病院と連携する。可能なら24時間連絡を取れる、又は受け入れてくれる病院との連携が望ましい。
◆病院との連携と共に福祉事務所との連携をする。
◆ケアマネージャー不在のステーションはステーションの理念・活動をある程度理解してくれて、柔軟に対応して頂けるケアマネージャーと連携する。
◆地域医療に関心・理解・判断力がある医師を見つけて関係を作る。
◆入退院時のサマリー・入退院時の連絡はステーションからが基本!
◆病棟ナース等のコメディカルとの関係作りもしっかり。
◆ヘルパーさんとの細かい連携が肝心!!
 
人のつながりが連携を生んでいく。
一朝一夕には難しい。
しかし、できてしまえば崩れない。
 
事例1 拒否のある事例
E氏 78歳
尿道損傷による尿閉にて膀胱ろう造設
老人性痴呆
路上で倒れて、入院する。10年ほど路上生活を送っていた。
・膀胱瘻があり処置が必要だが、必要性を話しても理解が難しい。
・強いものには巻かれ、弱いものには威圧的な態度をとる。
・突然怒ったり、立場が悪くなると突然機嫌取りをしだすことがある。
・自己中心的な言動が多い。
・人間関係は金銭等のトラブルが耐えなかったとの理由で人間ではなくぬいぐるみに愛情を注ぐ。人に対し不信感が強く、訪問当初は暴言があった。
・家出をして帰って来る時は何故か、ステーションに来る・・・。
支援方法
◆拒否・暴言があっても事業所で協力し合いながら、諦めずとにかく訪問を続ける。
◆友愛会の簡易宿泊所担当の生活指導員が関わり生活のサポートをした。食事も友愛会宿泊施設で提供。
◆社会的に逸脱していることは、間違っているかどうかということではなく、その事実が本人に及ぼす不利益を伝える。
◆彼が、現している葛藤の裏にある不安を探る。
 
事例2 他職種との連携を必要としたケース
X氏 62歳
躁うつ病 既往歴:アルコール精神病・非定型
 
 怠薬により躁状態となり、昨年モデルガンをもってコンビニエンスストアに押し入り、強盗未遂をする。
 5月に措置入院から任意入院になり簡易宿泊所に退院する。
 退院時、病院は保健所等地域の機関へつなげることは一切していなかった。
 以前は生活保護だったが、年金が発見されたため生活保護にはなれなかった。
支援方法
・触法行為について話し合う。話し合うことで援助関係は確立する。
・退院時地域のサポートは何も無い状態だった為、友愛会簡易宿泊所担当生活指導員が関わり生活のサポートをした。食事も友愛会宿泊施設で提供。退院後1月は食事の時に内服確認をした。
・訪問看護は保健師や主治医への情報提供・服薬指導と管理・ドヤでの生活上の問題の相談・療養生活上の留意点を中心に訪問する。
◆生活を整えた上で、看護的な関わりをしていく。看護師が生活を整えるのはヘルパーとは異なる視点で行なっている。現象は同じでも、根拠が違う。
◆服薬だけに集中しない!
◆ニーズを捉えながら関わらなければ、信頼関係も生まれない。
◆専門家は他の専門職と有機的な連携をとりながらサービスを提供していくのが下手な集団といえます。今まで関係機関や職種の連携がいかに重要であるか述べられてきたにもかかわらず、依然として十分になされていない状況をみても明らかです。しかしながら、今後は関係機関や職種が有機的な連携を図り、互いに理解しつつ一体となった地域ぐるみのサービス提供が重要であり、このことが自立支援にも結びついていきます。地域全体が一人一人を大切にして、皆で支えていくのです。
 


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