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医薬品・医療用具等安全性情報
Pharmaceuticals and Medical Devices
Safety Information No.174
 
目次
 
1. 重要な副作用等に関する情報
1 アカルボース
2 ザフィルルカスト
3 ペントスタチン
4 硫酸ビンクリスチン
2. 使用上の注意の改訂について(その133)
チロキサポール他(21件)
 
 この医薬品・医療用具等安全性情報は、厚生労働省において収集された副作用情報をもとに、医薬品・医療用具等のより安全な使用に役立てていただくために、医療関係者に対して情報提供されるものです。
平成14年(2002年)2月
厚生労働省医薬局

2 使用上の注意の改訂について(その133)
 前号(医薬品・医療用具等安全性情報 No.173)以降に改訂を指導した医薬品の使用上の注意(本号の「1 重要な副作用等に関する情報」で紹介したものを除く。)について、改訂内容、主な該当販売名、参考文献等をお知らせいたします。
 
2 エチゾラム〈精神安定剤〉
[販売名] デパス細粒、同錠0.5mg、同錠1mg(三菱ウェルファーマ)他
[副作用(重大な副作用)]
依存性:薬物依存を生じることがあるので、観察を十分に行い、慎重に投与すること。また、投与量の急激な減少ないし投与の中止により、痙攣発作、せん妄、振戦、不眠、不安、幻覚、妄想等の離脱症状があらわれることがあるので、投与を中止する場合には、徐々に減量するなど慎重に行うこと。
〈参考〉 企業報告
 
辻脇 私見
 2002年2月、厚生労働省医薬局は「医薬品・医療用具等安全性情報174号」において、精神安定剤エチゾラム(商品名「デパス」など)の薬物依存について、これまでの「大量連用によりまれに薬物依存を生じることがある」から「大量連用によりまれに」の文言を削除した。すなわち、エチゾラムは常用量によっても薬剤依存が生じ、投与量の急激な減少や投与の中止により離脱症状が現れることがあるとやっと報告した。しかし、これらは患者にどの程度伝わっているだろうか。また、医療者はどの程度その危険性を認識しているであろうか。
 
引用文献
DSM-IV-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル 新訂版
訳者:高橋三郎・大野裕・染矢俊幸
医学書院 2004 p700〜702. 758〜773.
 
投薬誘発性運動障害 Medication-Induced Movement Disorders
 次にあげる投薬誘発性運動障害は、以下の点で重要になることが多いために取り入れられた:
1)精神疾患又は一般身体疾患の薬物療法による管理;および2)I軸障害との鑑別診断(例:不安障害対神経遮断薬誘発性アカシジア;緊張病対神経遮断薬悪性症候群)。これらの障害は、“投薬誘発性”と名づけられているが、薬物投与と運動障害の発現との間の因果関係を確定するのは困難な場合が多い。特に薬物投与なしでもこうした運動障害のいくつかが起こるからである。神経遮断薬という用語は、このマニュアルでは、ドパミン拮抗性の性質をもつ薬物を意味するものとして広く用いられている。神経遮断薬というこの用語は、抗精神病薬治療が異常運動を引き起こす傾向があることを強調したために時代遅れになろうとはしているが、いまなお適切なものである。より新しい抗精神病薬治療は投薬誘発性運動障害を引き起こす可能性は少なくなってきているが、それでもこれらの症候群は生じる。神経遮断薬治療は、いわゆる“伝統的”または“定型”抗精神病薬(例:クロルプロマジン、ハロペリドール、フルフェナジン)、より新しい“非定型”抗精神病薬(例:クロザピン、リスペリドン、オレンザピン、クエチアピン)、嘔気および胃不全麻痺のような症状の治療に使われるある種のドパミン受容体遮断薬(例:プロクロルペラジン、プロメタジン、トリメトベンザミド、チエチルペラジン、およびメトクロプラミド)、および抗うつ薬として販売されているアモキサピンが含まれる。投薬誘発性運動障害は、I軸にコード番号をつけて記録すべきである。
 
332.1 神経遮断薬誘発性パーキンソニズム Neuroleptic-Induced Parkinsonism
 神経遮断薬の投与開始後、または増量後(または、錐体外路症状の治療のために用いていた薬物を減量後)2〜3週間以内に発現する。パーキンソン振戦、筋強剛、またはアキネジア。
 
333.92 神経遮断薬悪性症候群 Neuroleptic Malignant Syndrome
 神経遮断薬の使用に関連して発現する、重症の筋強剛、体温上昇および他の関連所見(例:発汗、嚥下困難、失禁、錯乱から昏睡にわたる意識水準の変化、無言症、血圧の上昇または不安定化、クレアチニンホスキナーゼ(CPK)の上昇)。
 
333.7 神経遮断薬誘発性急性ジストニア Neuroleptic-Indnced Acute Dystonia
 神経遮断薬の投与開始後、または増量後(または、錐体外路症状の治療のために用いていた薬物を減量後)2〜3日以内に発現する、頭部、頚部、四肢または体幹の異常な姿勢または筋攣縮。
 
333.99 神経遮断薬誘発性急性アカシジア Neuroleptic-Induced Acute Akathisia
 神経遮断薬の投与開始後、または増量後(または、錐体外路症状の治療のために用いていた薬物を減量後)2〜3週間以内に発現する、観察できる動き(例:そわそわとした足の動き、片足ずつ交代して体を揺らす、足踏み、またはじっと座っていたり立っていたりすることができない)を伴う落ち着きのなさの自覚的訴え。
 
333.82 神経遮断薬誘発性遅発性ジスキネジア Neuroleptic-Induced Tardive Dyskinesia
 少なくとも2〜3ヶ月の(高齢者の場合は期間がより短いこともある)神経遮断薬の使用と関連して発現する、舌、顎、または四肢の(少なくとも2〜3週間持続する)舞踏病様の、アテトーゼ様の、またはリズミカルな不随意運動。
 
333.1 投薬誘発性姿勢振戦 Medication-Induced Postural Tremor
 薬物(例:リチウム、抗うつ薬、バルプロ酸)の使用に関連して発現する、姿勢を維持しようとしているときに起こる細かな振戦。
 
333.90 特定不能の投薬誘発性運動障害 Medication-Induced Movement Disorder Not Otherwise Specified
 このカテゴリーは、上にあげた特定の障害のいずれにも分類されない投薬誘発性運動障害のためのものである。その例としては、1)神経遮断薬以外の投薬に関連したパーキンソニズム、急性アカシジア、急性ジストニア、ジスキネジア様の運動;2)神経遮断薬以外の投薬に関連した神経遮断薬悪性症候群に類似した症状;または3)遅発性ジストニア、があげられる。
 
研究用基準案 332.1 神経遮断薬誘発性パーキンソニズム
A. 神経遮断薬の使用に伴って以下の徴候または症状の1つ(またはそれ以上)が現れる。
(1)パーキンソン振戦(すなわち、四肢、頭部、口、または舌をおかす1秒に3ないし6サイクルの周期の粗大な、律動性の、静止時の振戦)
(2)パーキンソン筋強剛(すなわち、歯車様筋強剛または持続性の“鉛管”様筋強剛)
(3)アキネジア(すなわち、自発的な表情、身ぶり、会話、身体の動きの減少)
B. 基準Aの症状は、神経遮断薬の投与を開始して、または増量して2、3週間以内に、または急性の錐体外路症状を治療(または予防)するために用いていた薬剤(例:抗コリン薬)を減量して2、3週間以内に現れる。
C. 基準Aの症状は精神疾患(例:統合性失調症の緊張病症状またほ陰性症状、大うつ病エピソードの精神運動制止)ではうまく説明されない。症状が精神疾患でうまく説明される証拠としては以下のものが含まれるであろう:神経遮断薬が投与される前に症状が現れること、またはその症状が薬理学的介入の様式に対応していないこと(例:神経遮断薬を減量しても、または抗コリン薬を投与しても改善が認められない)、である。
D. 基準Aの症状は、神経遮断薬でない物質によるものではないか、または神経疾患または他の一般身体疾患(例:パーキンソン病、ウィルソン病)によるものではない。症状が一般身体疾患によるという証拠には以下のものが含まれるであろう:神経遮断薬が投与される前に症状が現れること、説明不能の局在性神経学的徴候があること、または処方内容が一定しているにもかかわらず症状が進行すること、である。
 
研究用基準案 333.92 神経遮断薬悪性症侯群
A. 神経遮断薬の使用に伴う重篤な筋強剛と体温の上昇の発現
B. 以下の2つ(またはそれ以上):
(1)発汗
(2)嚥下困難
(3)振戦
(4)尿失禁
(5)昏迷から昏睡までの範囲の意識水準の変化
(6)無言症
(7)頻脈
(8)血圧の上昇または不安定化
(9)白血球増多
(10)筋損傷の臨床検査所見(例:CPKの上昇)
C. 基準AおよびBの症状は、他の物質(例:フェンシクジリン)または神経疾患または他の一般身体疾患(例:ウイルス性脳炎)によるものではない。
D. 基準AおよびBの症状は、精神疾患(例:気分障害、緊張病性の特徴を伴うもの)ではうまく説明されない
 
研究用基準案 333.7 神経遮断薬誘発性急性ジストニア
A. 以下の特徴または症状の1つ(またはそれ以上)が神経遮断薬の使用に伴って現れる。
(1)全身に対して頭部および頸部の異常な姿勢(例:頸部後屈、斜頸)
(2)顎筋の攣縮(牙関緊急、開口、しかめ顔)
(3)嚥下の障害(嚥下困難)、会話の障害、または呼吸の障害(喉頭と咽頭の攣縮、失声)
(4)舌の筋緊張亢進または肥大による濁った不明瞭な会話(構音障害、巨舌)
(5)舌突出または舌の機能障害
(6)上方、下方、または側方への目の偏位(眼球回転発作)
(7)遠位四肢または体幹の異常な姿勢
B. 基準Aの症状は、神経遮断薬の投与を開始して、または急速に増量して、または急性の錐体外路症状を治療(または予防)するために用いていた薬剤(例:抗コリン薬)を減量して7日以内に現れる。
C. 基準Aの症状は精神疾患(例:統合失調症の緊張病症状)ではうまく説明されない・症状が精神疾患によってうまく説明されるという証拠には、以下のものが含まれるであろう:神経遮断薬が投与される前に症状が現れること、または症状が薬理学的介入の様式に対応していないこと(例:神経遮断薬を減量しても、または抗コリン薬を投与しても改善が認められない)
D. 基準Aの症状が、神経遮断薬でない薬物によるものではない、または神経疾患または他の一般身体疾患によるものではない。症状が一般身体疾患によるという証拠には以下のものが含まれるであろう:神経遮断薬が投与される前に症状が現れること、説明不能の局在性神経学的徴候が存在すること、または処方内容を変更していないにもかかわらず症状が進行すること、である。
 
研究用基準案 333.99 神経遮断薬誘発性急性アカシジア
A. 落ち着きのなさの主観的訴えが神経遮断薬の使用後現れる。
B. 以下のうち少なくとも1つが観察される。
(1)足のそわそわとした、または揺らす動き
(2)立っているときに、片足ずつ交互にして身体を揺らす
(3)落ち着きのなさを和らげるために歩き回る
(4)少なくとも数分間、じっと座っていることまたは立っていることができない。
C. 基準AおよびBの症状は、神経遮断薬の投与を開始してまたは増量して、または急性の錐体外路症状を治療(または予防数)するために用いていた薬剤(例:抗コリン薬)を減量して4週間以内に現れる
D. 基準Aの症状は精神疾患(例:統合性失調症、物質離脱、大うつ病エピソードまたは躁病エピソードの焦燥、注意欠陥/多動性障害の過活動)ではうまく説明されない。症状が精神疾患でうまく説明される証拠には、以下のものが含まれるであろう:神経遮断薬が投与される前に症状が現れること、神経遮断薬を増量しても落ち着きのなさが憎悪しないこと、薬物によっても軽快しないこと(例:神経遮断薬を減量しても、またはアカシジアを治療するための薬剤で治療しても改善が認められない)
E. 基準Aの症状は、神経遮断薬以外の薬物によるものでもなく、また神経疾患または他の一般身体疾患によるものでもない。症状が一般身体疾患によるという証拠には以下のものが含まれるであろう:神経遮断薬が投与される前に症状が現れること、または処方内容を変更していないにもかかわらず症状が進行すること、である。
 
研究用基準案 333.82 神経遮断薬誘発性遅発性ジスキネジア
A. 舌、顎、体幹、または四肢の不随意運動が神経遮断薬の使用に関連して現れている。
B. 不随意運動は少なくとも4週間の期間ずっと存在し、以下のいずれかの形で起こる。
(1)舞踏病様運動(すなわち、急速な、ぴくぴく動く、非反復性の)
(2)アテトーゼ様運動(すなわち、ゆっくりとした、波のような、持続的な)
(3)律動的な運動(すなわち、常同運動)
C. 基準AおよびBの徴候または症状は、神経遮断薬服用中に、または神経遮断薬の経口的な服用を中止して4週間以内に(または、デポ剤を中止して8週間以内に)現れる。
D. 少なくとも3ヶ月間(60歳またはそれ以上の場合には1ヶ月間)、神経遮断薬への暴露が続いている。
E. その症状は、神経疾患または他の一般身体疾患(例:ハンチントン病、シデナム舞踏病、特発性ジスキネジア、甲状腺機能充進症、ウィルソン病)、義歯不適合、または可逆性の急性ジスキネジアを起こす他の薬物(例:レボドパ、ブロモクリプチン)の服用によるものではない。症状が一般身体疾患によるという証拠には以下のものが含まれるであろう:神経遮断薬が投与される前に症状が現れること、または、説明不能の局在性神経学的徴候が存在していること
 症状が、神経遮断薬誘発性急性運動障害(例:神経遮断薬誘発性急性ジストニア、神経遮断薬誘発性急性アカシジア)ではうまく説明されない。
 
研究用基準案 333.1 投薬誘発性姿勢振戦
A. 細かな姿勢振戦が薬物(例:リチウム、抗うつ薬、バルプロ酸)の使用に関連している。
B. 振戦(すなわち、四肢、頭部、口、または舌の規則的で律動的な振戦)の振戦数は、8〜12サイクル/秒である。
C. その症状は、すでに存在している非投薬誘発性の振戦によるものではない。症状がすでに存在している振戦によるという証拠には以下のものが含まれるであろう:服薬中に振戦が存在していること、振戦が薬物の血中濃度と相関していないこと、および服薬中止後も振戦が持続すること、である。
D. 症状は神経遮断薬誘発性パーキンソニズムではうまく説明されない。


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