日本財団 図書館


5. 電波法による無線局の検査
(1)概要
 船舶に装備されるGMDSS機器は、電波を利用した無線設備であるので、電波法の規定に基づき設置、運用される。
 したがって、無線局として総務大臣の免許を受けなければ、無線局の運用はできない。また、無線設備の操作及び保守を含め無線局を運用する者は、無線従事者の資格を有する者でなければならない。
 船舶における無線局は、船舶局、船舶地球局、遭難自動通報局又は無線航行移動局がある。これらの申請業務は、無線機器メーカーなどが船舶の所有者又は運行者の代行をしているのが通例である。
 無線設備の装備が完了した後に、総合通信局による無線局の検査を受検しなければならない。
(2)無線局の申請から免許までの概要
 免許を受けないで無線局を開設し、又は運用した者は、電波法違反として罰則規定の対象となる。(電波法第110条)
 船舶局、遭難自動通報局又は無線航行移動局の申請は、その船舶を運航する者とされている。また、無線局の免許に関する事項は、総務大臣から総合通信局長に権限が委任されているため、申請書類等は当該船舶の主たる停泊港の所在地を管轄する総合通信局長あてに提出する。
 免許の申請から開設までの概要は、以下に示すとおりである。
a)免許申請
 無線局免許手続規則(以下「免則」と称する。)の規定に従って、免許申請書に無線局事項書、工事設計書、図面、資料等を添付して申請する。(免則第3条、第4条)
 船舶局等の場合で、申請者と船舶の所有者が異なるときは、申請者が当該船舶を運用する者である事実を証する書面を添付しなければならない。(免則第5条)。
 申請書類の様式は、無線局の区分によって相違する。(免則第3条、第4条)
b)予備免許の付与
 無線局免許申請書が受理されると、申請の内容について審査され、電波法第7条に適合していると認められれば、工事落成の期限、電波の形式及び周波数、呼出符号又は呼出し名称、空中線電力、運用許容時間を指定して、予備免許が与えられる。(電波法第8条)
c)工事落成の届け及び落成後の検査
 予備免許を受けた者は、工事落成の期限内に無線設備の装備工事を完了させ、その旨を総務大臣に届け出て、検査を受けなければならない。(電波法第10条)
 この落成後の検査は新設検査といわれており、その無線設備、無線従事者の資格及び員数、並びに時計及び業務書類について、総合通信局により検査が行われる。
d)無線局の検査
 船舶に装備された無線局の新設検査は、申請内容の事実の確認、当該無線設備の型式、構成、製造番号等の確認及び総合試験を行う。総合試験は、当該無線局の目的が達成されるかどうかを総合的に判断するために、その通信の状況等を確認する。
e)無線局の開設
 総合通信局の検査に合格したとき、無線検査簿にその旨記載され、無線局免許状が交付される。すなわち、無線局が開設され運用可能となる。
 
◎無線局申請から免許までの手順
 
 
注)変更の場合は、上図において免許申請→変更申請、予備免許→変更許可、工事落成→変更工事、完了と読み替える。
 
(3)無線局登録点検事業者制度
 無線局登録点検事業者制度は、無線局の検査において民間の能力を一層の活用をするため、平成10年4月1日に導入された認定点検事業者制度を平成16年1月26日に登録制度に改正されたものである。総務大臣の登録を受けた者により無線設備等について点検を行った結果が、免許人より提出された場合には、無線局の検査の一部を省略できるものである。
 一般に、検査官立会いの検査を「国の検査」と呼び、無線局登録点検事業者制度を利用した検査を「書面検査」と呼んでいる。
a)対象となる検査
 新設検査(電波法第10条第2項)、変更検査(電波法第18条第2項)、及び定期検査(電波法第3条第2項)
b)対象となる無線局
 登録点検事業者等が無線設備等の点検を行なうことができる無線局は、国が開設するもの以外のものとする。(登録事業者等規則(以下登録点検規則と称す)第9条第3項)
c)点検員の要件
 次に掲げる条件のいずれかに適合する知識経験を有するもの。
 1〜3級総合無線通信士、1、2、4級海上無線通信士、1、2級陸上無線技術士、1級陸上特殊無線技士、1級アマチュア無線技士及び同等の資格を有する者(電波法第24条の2第4項1号)
 ただし、1級陸上特殊無線技士、1級アマチュア無線技士は海岸局、航空局、船舶局及び航空機局以外の無線設備等の点検に限る。(登録点検規則第2条第3項)
d)登録点検事業者制度の利用手順
(拡大画面:59KB)
 
(4)船舶局等の免許の有効期間
a)義務船舶局の免許の有効期間は、無期限とする。(電波法第13条)
b)非義務船舶局の免許の有効期間は、免許の日から起算して5年間とする。(施規則第7条)
 免許の有効期間の満了後においても引き続き運用したい無線局は、その旨を申請することにより再免許を受けることができる。この場合、再免許申請書の提出は、免許の有効期間満了前3ケ月以上6ケ月を超えない期間において行わなければならない。(免則第17条)
c)無線航行移動局等の免許の有効期間は、すべてが同時に有効期間が満了するように一定の時期が定められており、その満了の日は免許の期日に関係なく一斉に再免許される。平成4年11月30日から実施されている。
 再免許手続きについてはb)の場合と同じである。ただし、免許の有効期間が1年以内である無線局については、免許を受けた後、直に再免許の申請を行わなければならない。
(5)免許後の変更と変更検査
a)免許人は、通信の相手方、通信事項若しくは無線設備の設置場所を変更し、又は無線設備の変更の工事をしようとするときは、あらかじめ総務大臣の許可を受けなければならない。(電波法第17条)
b)総務省令で定める軽微な事項について工事設計を変更したときは、遅滞なくその旨を総務大臣に届け出なければならない。(電波法第17条第2項)
c)変更工事の許可を受けた免許人は、総務大臣の変更検査を受け、当該変更又は工事の結果が許可の内容に適していると認められた後でなければ、許可に係わる無線設備を運用してはならない。(電波法第18条)
(6)定期検査
 総務大臣は、総務省令で定める時期ごとに、あらかじめ通知する期日にその職員を無線局に派遣し、その無線設備等の検査をさせる。(電波法第73条)
 定期検査の時期は、下記に示す無線局ごとに定められた期間を経過した日の前後3ヶ月を超えない時期とする。(施則第41条の4)
・義務船舶局等(旅客船及び国際航海に従事する船舶) 1年
・義務船舶局(上記以外の船舶及び 遭難自動通報設備義務の船舶)  2年
・その他の船舶局(特定船舶局等) 3年
・無線航行移動局(遭難自動通報設備義務の船舶) 2年
・その他の無線航行移動局 5年
(7)臨時検査
 総務大臣は、下記の場合に、その職員を無線局に派遣して臨時検査をさせることができる。(電波法第73条)
a)総務大臣が、無線局の発射する電波の質が総務省令で定めるものに適していないと認め、電波の発射の停止を命じたとき。
b)上記の命令を受けた無線局から、その発射する電波の質が総務省令で定めるものに適合するようになった旨の申し出があったとき。
c)無線局のある船舶、若しくは航空機が外国へ出港しようとするとき。
d)その他、電波法の施工を確保するため特に必要があるとき。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION