日本財団 図書館


人材育成と一般医療への統合
 ハンセン病サービスを将来にわたり継続的に提供していくため、1990年後半から、それまで特別部門として扱われていたハンセン病を一般医療に統合する動きが進みました。その結果、現在ほとんどの国でハンセン病の診断と治療は草の根レベルの全ての保健所で受けることができます。この環境を維持していくため、全ての保健職員に対し、確実にハンセン病の診断・治療法を行うための技術トレーニングが現在も定期的に実施されています。
 こうしたトレーニングを支援するための優れた教材がWHOと各団体により制作され、今日でも有効に活用されています。特に笹川記念保健協力財団が草の根レベルの保健職員・ボランティアを対象として制作した「ハンセン病アトラス―患者発見・診断・治療のためのマニュアル」は、1981年に英語版の初版が発行されてから2007年現在までに9カ国語で約30万部が印刷され、関係機関・団体に無償で配布されています。
 
 診断・治療の手引書、ハンセン病アトラス。草の根レベルでの過酷な使用に耐えるようラミネート加工され、持ち運びやすいようにコンパクトに作られている。
 
啓発ポスター。左からミャンマー、アンゴラ、ネパール
 
診断・治療・フォローアップ
 ハンセン病は目で見たり、触れたりして調べる臨床症状だけで簡単に診断ができます。また、治療薬MDTは極めて安全な内服薬で、6カ月から12カ月間継続して服用することでハンセン病は完全に治癒します。このため、草の根レベルの保健所でも十分診断・治療することができ、これがハンセン病の制圧を可能とする大きな要因でした。
 ハンセン病の治療で重要なことは、治療薬を中断することなく確実に服用することです。このため、ハンセン病の診断を受けた患者は登録簿に登録され、確実な治療薬の確保とそれによる治療の貫徹が保健職員によってフォローアップされます。治療が完了すると、登録簿から名前が取り除かれます。
 ハンセン病は早期診断と治療により、現在では何の障害も残さず治癒するようになっています。しかし、ハンセン病は完全に治癒しても、治療中や治療後に神経が障害を受け、それが後日悪化する場合があります。このような状態はらい反応と呼ばれ死んだらい菌による一種の免疫反応と考えられていますが、放置すると重篤な障害に発展することがあり、速やかな治療が必要とされます。らい反応にもステロイド剤を中心とした効果的な治療薬があります。このため、登録簿による治療のフォローアップに加え、治癒後のフォローアップも重要となっています。
 
 ハンセン病と思われる徴候をまず目で見て確認し、その後羽根やペン先などで触れて知覚が無いことを確認して診断します。スーダンにおける診断活動の様子
 
ハンセン病歴史年表
(拡大画面:344KB)
 
(拡大画面:110KB)


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION