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競艇沿革史

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


福岡市
大荒れ初開催
 九月は台風のシーズンである。下旬になっても秋台風とか称し、時々大きなやつが来る。
 その昔、国難を吹き飛ばしたといわれて以来、割合、無遠慮である。
 それなのに福岡競艇は、その真只中に始めたので毎年周年記念のころになると、枕を高くしたり低くしたりとても気がもめる。昭和二十八年開設の時も、しょっぱなから大荒れに荒れた。九月二十六日、流れたピットをつなぎ合わせ、それこそ白波蹴立てて?記念すべき第一レースを行なうという正に破天荒のスタートを切ったのである。しかもこれには本当の初開催予定日は二十五日であったが、台風のため式典だけにして、一日順延したというオマケまでついている。
位置
 位置は都心天神町から約八百米、不動産屋の広告ではないが、歩いて七、八分、誠に便利がよろしい。
季節感
 ただ、玄界灘とトイメンの北向きにあるため、冬ともなれれば寒風吹きすさび、雨や雪も横から降る。夏には夏で台風が襲えば、貯木に悩まされ、更に川口のすぐ横にあるため一雨降れば小枝や草はいうに及ばず塵芥、蛇蛙のたぐいにまで脅かされる。
 しかし、やはり都心間近の好立地条件は、開設間もなくして売上日本一の実績を誇り、いまなお、全国屈指の業績を持続し得る最大要因の一つであろうと思う。創設者の着目に改めて敬意を表したい
 
福岡競艇誕生までの経緯
戦災・窮乏
 当時(昭和二十七年)福岡市は県市共催で競輪を開催していた。だが、競輪にはようやく頭打ちの兆候が見え始め県内四競輪場の乱立から先の見通しも決して明るくはなかった。しかしながら戦災復興は遅々としてはかどらず、昭和二十年六月十九日、B29の大編隊により都心主要部百六拾万坪を焦土と化し、焼失家屋一万二千七百余戸、罹災者六万人、死傷者二千二百人(当時)という戦災を被った福岡市としては、やるべき事は余りにも多く、財政は余りにも乏しかった。昭和二十七年に至っては、国からの普通交付金を前年の四倍も受け、二割の人員整理を行ない、職員の給料を削減しても、なお、手も足も出ぬ状態であった。
 一方、緊急を要する事業だけでも、
 
学校建設 二八校・一六九教室不足
住宅建築 二万二千戸不足
都市復興 一六〇万坪の三分の二未着手
失対事業 登録者三千八百名で増加の一途
漁港整備 中央卸売市場を含め、二年計画未着手
 
を数え、その経費だけでも、大要次の通り、莫大な金額を必要としていたのである。
 
事業名 事業費 市費 国庫補助

学校建設
千円
248,699
千円
248,699
千円
-
住宅建築 370,832 137,969 196,862
都市復興 1,859,502 1,700,434 159,068
失業対策 348,435 166,980 181,455
漁港整備 398,200 268,000 130,200
土木工事 183,256 137,363 45,893
合計 3,408,924 2,695,445 713,479
 
ピンチヒッター発見
 折しも、前年にモーターボート競走法が施行され、大村市をはじめとして、津・常滑・琶琶湖・狭山池・尼崎・芦屋・若松等々、続々競艇場が誕生していた。昭和二十六年十月付の県の連絡「競艇事業の申請について」を参考に、早速調査してみた。『非常に良い』『だいいち、明朗である』事業課長の報告書には、更に続けて、『従来のギャンブルに対する概念から見ると、レースそのものが知的であり、新たな層にアピール出来そうだ。又、海事思想の普及というか、港湾観光施設としても利用出来るし、何よりも収益が期待出来そうである。是非やりたい』と記された。その結果、昭和二十七年十一月二十七日『競艇場設置並びに競艇実施についての所見書』として、直ちに市長に建議された。
 曰く。
(一)競艇事業の目的が単にギャンブルに惰することなく、海事思想の普及並びに観光にあり、競艇の施行によって市民の関心を博多港に向け、港湾の開発、観光客の誘致等裨益する所が大である。
(二)建設費は、オーナー経費を含め、二千八百万円程度で可能である。
(三)採算ラインは、売上一日四百万円であり、福岡の場合一日四千万円が期待出来る。従って、月間九日開催として、初年度において、建設費を償却してなお、二千万円の純益が予想される。
(四)競輪開催の上に、更に競艇を行なう事は風教上の非難は避けられまいが、モーターボート競走は他に比して、ギャンブル臭が少なく、他市においても格別の批判は受けていない。一般青少年、学生にボートレース、水上スキー等を奨励し、又、湾内交通観光の開発、娯楽性の充実等を計り、その短所を補う事が出来る。
(五)本競走事業は、永続して施行すべきものではなく、市の財政に余裕を生じた時は取止めるべきものである。
等々、早急に施行市の指定を受け、競走場の設置を申請すべきものと思料する。
 確かに、市民感情や風教上の問題はあったが、最高幹部によって研究され、市長も賛成。十二月二十二日、市議会全員協議会にはかって全員賛成で承認を得た。これで競艇施行に対する市の態度は決定。
事前申請
 年明けて昭和二十八年一月九日、全モ連会長あて、正式に事前申請書を提出した。
難問!打開
 ところが事が外部に出ると、次々難問題が起って来たのである。
 先ず
(一)一県に二以上のレース場を設置する事について
 自治省(当時庁)に打診に赴いてくれた福岡県地方課長から「六大府県二レースまでの覚書あり、見込みないものと思え」と連絡が入った。舶工第五四号(28年4月8日)の事である。結局、最後までこれが難点として残り、手を尽して、許可の断を待つ事になるのである。
 次に
(二)既設レース場の反対
 昼間人口六十万をようし、中心的存在の福岡市が始めるとなれば、これをあてにしている所からは当然異論が出る。県からは、競輪の日程と競合せぬようにと注文がつき、芦屋、若松からも反対の声が出たが、競走会の仲介の労もあって、結局、快諾を得る事が出来た。
(三)港湾施設の一部使用について
 当時、現在地は水中貯木場でありながら、戦後の荒廃の中で木材はなく、陸地は、戦事中、軍物資の集積所や高射砲陣地があったため、一部を除いては、ほとんど利用されていなかったが用途指定地区の転用は、そう簡単にはいかなかった。同じ運輸省の博多港工事事務所が首を横に振ったのであるが、結局、昭和二十八年三月十八日「可及的速やかに本来の機能に復帰させる事」「収益金は港湾施設の整備に充てる事」という条件で、縦に振ってくれた。更に五月十一日、本省港湾局長に対し
(1)収益金は施設の改良に使う。
(2)貯木場の利用は三〜五年に限る。貯木に支障を来たす時は移転又は廃止する。
(3)貯木場は南半分だけ使用する。
(4)陸地は木材関係工場や集積所に支障を来たさぬように使用する。
事等の条件を附して、正式な許可を得る事が出来た。
 ただ、現在は全く逆に、手狭になった貯木場は、木材団地の構想により、移転する事になってしまった。
(四)整地
 予定地の中には戦争の落し子、バラックが散在し、約二十戸。製氷会社の砕氷塔と船積場があった。バラックの方は、競艇の従事員に採用する条件で立退いてもらい、製氷会社の方は砕氷塔を邪魔にならぬ所に移設、先ず三百万円支払い、以後毎年、営業損失補償金を支払う事で落着した。しかし、これから十年以上、レースのあい間に大きな漁船が、氷積みに出入し、本部脇に横付けするという、おおらかな風景が続くことになったのである。
 最後に
(五)漁業補償
 貯木場を利用したので、この分に対する漁業権は心配なかったが、ターンマークが、少しばかり川口にはみ出したため、十六年間、補償金を払う羽目になった。しかも、これには、開催外には競走水面で魚を取っても仕方なかろうという黙約の如きものがついていたので、シーズンともなれば、ところどころに鰻柴が浮かび、見るたびに何だか鰻の生活まで脅かしているような気がしたものである。


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